王様との会談から三日が経った日のことだった。
「キサラギさん、起きてください! キサラギさん!」
姫様の必死な声が聞こえる。
と思ったら、私の顔にやわらかくていい香りのする何かが飛んできて私の鼻をしたたかに打ち付けた。何かと思って飛び起きると、
「起きんか! この馬鹿もぉ――――!?」
マウントをとって拳を固めていたリィレさんの顔面に私の頭突きが綺麗に入った。
訳が分からない、枕元に落ちているのいつも姫様が使っている枕が、多分さっき飛んできた柔らかいものの正体だってことくらいしか今の私にはわからない。
「いったいどうされたんです二人とも?」
「反乱だ! 貴族階層で貴族どもが兵を動かし王城を包囲している!」
そのリィレさんの簡単すぎる説明に、一気に私の頭が覚醒する。
「父様やほかの近衛騎士の皆さんは移動を開始しています、私たちも早く動きますよ。」
言われてすぐにベッドから飛び出し、服を着替える。
姫様に貸してもらった寝巻(体格がほぼ同じだから私も着れた)から、結局この世界に来てからずっと普段着にしている制服に着替えて、リィレさんに貸してもらった兵装を整える。
聞いた話では私たちがこの世界に来るときに使った魔法には通った人間の能力を高める魔法が施されていたらしい、リィレさんと練習しているうちに教えてもらった。
「行けます!」
「善し! こっちだ。」
リィレさんが先陣を切り、その後ろを姫様、殿を務める形で私が続く。
当初から予定されていた、足の遅い姫様を守るための必要な態勢。
今まで出会ったことのない人が数人、廊下をふさぐようにこちらに向かって立っている。
「予想より手が早い……」
忌々しげにリィレさんがつぶやくと、すぐに彼女は剣を抜く。
男たちはこちらに気づくと武器を構えるけれど、
「遅い!!」
リィレさんの剣はその武器の合間をすり抜けるように男たちの腕や腹を切り裂いていた。
倒れる男たちを無視してリィレさんは駆け抜け、私たちも後に続く。
「殺したんですか?」
「さぁな、少なくとも殺す気で斬った。」
リィレさんはあっさり答える、返り血の臭いが鼻を衝いて、私に今までとこれからが違うことを再認識させた。
そうだ、これからは、私たちは殺し合いをしなくてはいけない。
たくさんの人の血で体を濡らすことにもなるだろうし、そうしなければ自分が死んでしまっているんだろう。
そう思うと手が震えるのを感じたけれど、もう後戻りはできない。
それに心のどこかで私は興奮していた。
今自分はすごいことに関わっている。向こうの世界では決して経験できなかったようなとんでもないことの片棒を担ごうとしている。
それに私の興奮が煽られていた。
さらに廊下を南東門に向かって突き進みながら、待ち伏せていた三人の男をリィレさんが切り伏せる。
この分だと私の出番はないかもしれない。
そう思った矢先だった。
通りがかっていた十字路や中庭から、数人の男たちが顔を出すのは。
「囲まれたか。」
前に三人、後ろに二人、左右に一人ずつ。
「姫以外は好きにしていいとのお達しだ! 捕えろ!!」
指揮官らしき男がそう言うのと同時に、男たちが襲いかかってくる。
向かってくる中で動きが早いのはわずかに右。
見える、それに、どうすればいいのかもわかる。
無意識と意識の入り混じった動きで私は男の剣を左手でいなし、男の腕を切り落とす。そして男の頭に蹴りを入れてもう一人の男にぶつけて、隙ができた瞬間に男たちの心臓を二人分一気に突き刺す。
リィレさんもすでに向かってきた二人を切り伏せていた、やっぱり仕事が早い。
「この程度の技量で、誰を捕える気なのか教えてくれ。」
そういうとリィレさんは無造作に右から向かってきていた男の頭に剣を振り落した。
私が残る一人を仕留めて、残るは指揮官の男一人。
「さぁこい、剣を教えてやる。」
授業料はお前の命でいい、そう言いたげなリィレさんの言葉に、迷わず指揮官は逃げだした。
意外に速い、私たちが本気で走っても追いつけるかは微妙だ。
そう思った瞬間、
「ぐぎゃぁああああああ!!」
突然現れた男に指揮官はあっさり切り伏せられていた。
その男は、
「父上!?」
グラハムさんだった。
隻腕のうち、残っている左手に普通の、兵士も使っているような何の変哲もないただの剣を持って私たちの向かう先に立っていた。
「どうしてここに?」
「お前たちが遅いから迎えに行くように頼まれた、向こうはアルベルトとマーカスで十分。」
淡々とリィレさんの質問に答える。
確かに、南東門に向かう廊下には立っている人間は誰ひとりとしていない。
それどころか極端に敵の数が少ない。
「行くぞ。」
グラハムさんが先頭になって走り出す、そしてすぐに南東門にたどり着く。
敵が軒並み倒されている、どうやら王様とほかの近衛騎士団がう
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