あら、今度はわたくしたちですの?
てっきり人気を博していらっしゃるルビーさんあたりが選ばれるものだと思っておりましたわ、ですので何一つとしてお話しするような面白いことが用意できてございませんの。
面白くなくてもいいからわたくしたちの過去を聞きたい?
……よろしいですけど…あまり語りたくはありませんわね、ああほら、皆さんお静かにお願いしますね? 間違っても襲い掛かってはいけませんわよ?
すみません、わたくしたちにとってあのことは余り触れられて嬉しいことではございませんの。ですので途中でわたくしたちが暴れだしてしまったらすぐにお逃げくださいね、殺してしまうかもしれませんので。
これはわたくしたちにまだ恋人がいたころのお話。
ずっと昔、もう二十六年は前になるのでしょうか。
わたくしたちが「百人組」であった最後の日のこと。
幸せに過ごす「わたくしたち」を襲った、理不尽極まりない悲劇の話です。
その方のお名前はリセルと言いました。
綺麗な空色の髪に、エメラルド色に輝く瞳が特徴的な、外見年齢でいえばハロルドさんくらいの年の方でした。インキュバスになられてもう十数年というくらいですので、本当の年齢はプラス十歳といったところですわ。
とても魅力的でとても素晴らしい方でしたわ、わたくしもうメロメロでしたもの。
百と七人のわたくしたちのうち、彼に奉仕できるのは本体であるわたくしを含めて八人が限度でした。
それ故にわたくしを除くすべての分体の皆さんはローテーションでわたくしたちの住居であった洞窟の見張りをしたりリセルさんが必要となさる料理の食材を集めてきたり料理なさったりといつもお忙しかったのです。
「んくっ ン……ぷはぁっ」
わたくしとのキスをやめたリセルさんは
「今日もきれいだよ、マリア」
とわたくしの顔を見ながら笑顔でおっしゃいました。
けれども、わたくしたちは当然と言えば当然ながら皆が「マリア」ですので、ちょっと困ることがあるのです。
だって、誰が褒められたのか解らないではないですか。
彼のペニスを膣で受け入れ、彼とキスをするわたくしなのか、彼の左手によって胸を揉まれているわたくしなのか、彼の右手をおまんこに受け入れ気持ちよさそうな顔でだらしなく喘いでいるわたくしなのか、腕に寄り添っているわたくしなのか首筋を舐めているわたくしなのか。
「さっぱりわからないですわ、その一言だけでは。」
甘えるようにリセルさんの体にすり寄りながら、皆で訊ねます、
「どなたに言ったのですか?」
リセルさんは一瞬だけ困った顔をしましたが、すぐに笑ってくださいます。
いつも言うことに変わり映えがございませんけど、彼の言葉がわたくしたちは大好きでした。
「皆だよ、一人残らず綺麗だ。」
「うふふ、優柔不断な発言ですわね。」
そう言いながら、わたくしがもう一度キスしようとしたところでした。
外の見張りをしていたわたくしが、不穏な集団を視認した情報が流れてきたのは。
「……リセルさん、こちらへ。」
リセルさんを抱きしめて、わたくしたちの奥まで連れて行きます。
ほかの皆さんにも戻ってきて戦闘配備に移るように指示しました、洞窟付近を洞窟の中あちこちに作った小さな穴から外に出て監視していた皆さんが、すぐに戻ってきます。
すでに情報伝達を受けていたため、皆さんの配備は早いものでした。
「汚らわしい魔物に裁きを! 王国魔術師団、進め!!」
どうやら、わたくしたちを討伐するためにわざわざお家にこもっておかしな研究ばかりなさっている魔術師団を駆り出したようでした。当たり前と言えば当たり前なのですけどね、わたくしたちに物理攻撃なんかまったく効きませんし。
痛くないわけじゃないのですよ? けがをしないから痛みを無視してかまわないだけで。
洞窟の、わたくしたちのいる大広間に向けた曲がり角をお一人が抜けてきた瞬間でした。
近くにいた皆さんに一斉にパンチを繰り出させて、気絶してもらいます。
こぶしを固めて威力を増す「結晶化」も施しておいたせいなのか、男の方はあちこち骨を砕かれて絶命してしまいます。
「くっ、怯むな! 必ず仕留めろ!」
お仲間だった肉の塊を乗り越えて、魔術師団が姿を現します。
およそ三十名、あとから聞いた話では王国魔術師団の全員がこの戦いに参加していたそうです。
もう一度パンチを繰り出しますが、今度は来ることが分かっていたのでしょう、風の刃によって伸ばした拳が切り落とされます。
魔術師のお一人が炎の弾丸を数発発射します。
本体であるわたくしを狙ってきていましたが、分体のお一人が盾になります。
別段わたくしが指示したわけではありませんよ、本体を失えばクイーンスライムは終わりといえ、体の一部を失うことは気が進みませんので。
皆さんに指示を送り、腕を刃状に変化・その形で結晶化させます。
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