朝起きて、すぐに集合令が下りた。
今日が泣いても笑っても僕たちの最後の戦い。
幕舎を皆で片づけ、最後の戦いのために用意をする。
作戦は割と単純、まずは敵に兵力を集中されると厄介なので部隊を三方に分ける、ロイドとルビーによる偵察の情報では最も手薄なのは南門、ここに王女とリィレさん率いる部隊を構える、このほかドラウ・プリオン両男爵の率いる軍勢を最も守りの硬い南東門に、クルツと彼らによって組織化された農民を中心とする部隊が南西門を攻め、市民階層及び兵士階層を制圧ののち、貴族階層を制圧にかかる、その間にごく少数の精鋭が王宮に入り、敵たちのまとめ役となっている貴族議会、特にその議長であるランバルドを制圧する。
僕と天満はクルツ軍部隊、吹雪はドラウ・プリオンの男爵軍部隊、そしていつも通りと言えばいつも通りだけど如月は王女部隊に配備している。
「ソラ、これ持っとけ。」
ランスが僕に手渡したのは木の棒の先端に鉄の頭の付いた道具だった、斧に見えるけどどうやら刃引きしてあって切れないようになってるらしい。
「何これ? 白兵戦用の武器?」
「いや、投擲具だよ、たぶん使うことになるだろうから渡しておく。」
投擲具、これを投げて攻撃するってことだろうか、けれど僕からしたら魔法を使って攻撃した方がよっぽど効率的なんだけど。何より僕コントロール終わってるし。
「後お前用、元素使いとはいえ効率よく戦うにはこんなのも必要だろ。」
「わざわざ作ってくれたのかい? 悪いことをさせたね。」
そう言ってランスが渡してきたのは六本の投げナイフだった、鍔の部分が折り畳み傘のようになっているのは魔法を使って小さな労力で飛ばすためだろうか。
ランスは気にするなと言ってくれたけれど、こんなものを六本も短時間で用意するのは簡単ではなかっただろう、あとでお礼をしておこう、何を喜ぶだろうか。
「ハロルド兄さんの演説ももうすぐだろうし、気合入れていくぞ。」
「そうだね、当面戦いとは無縁の生活を送りたいよ。」
「ジジくさ………」
後ろで天満が何か言ったのを気にせずランスと雑談していると、同じように雑談しながらゆるく整列している全員の前にハロルドさんが立った。
その瞬間誰もがお喋りを止め、彼に注目する。
「ええと、どうも今日はクルツ自治領人間の領主代行ハロルドです」
最初に簡単なあいさつを入れたのはハロルドさんなりのジョークだろうか。
「ここに集まった皆さんは、夢をお持ちだろうか。大切な人と過ごす未来、たくさんの財を得て英雄として褒め称えられる人生、苦しい生活からの逃避。そんなものを夢見てこの戦いに参加したものだろうと思う。」
良くわからないことを言い始めたと最初は思った、けれどすぐ何を言いたいのか理解した。
「僕の祖父は、かつて皆が笑って過ごせる平和な未来を夢見た。」
クルツ創立の立役者、勇者クロードの話だ。
「叶うはずのない愚かな夢と笑うかもしれない、理想を語るなど詐欺師のすることだと思うかもしれない。けれど今、僕はきっと祖父の夢見た世界に向けて歩いていると信じている。」
ハロルドさんが大きく息を吸う、ランスがお立ち台の隣で巻物に文章を書き込んでいる。
「どうか、祖父の夢のためにあと少しだけ力を貸してほしい。」
静まり返った広場の中で、誰かが拍手をした。
拍手の輪が広がり、やがて騒音を奏でる。
「なんか、演説得意じゃないんだねハロルドさん。」
「まぁ見るからに語るより行動で示す口だしね。」
そう言いながら、僕たちも拍手を送っていた。
進軍準備が始まると、一気に人は激しく動き出す。
あたしたちは最前列の重装兵を支援する役割と、魔法を用いた攻撃および攻撃用の兵器を運用すること、同じようなところにはランスや猫姉妹・ネリスもいる、ハロルドさんはもうちょっと前で指揮を執ってる。
攻城用の武器としては木製の櫓二台と即席の破城鎚。とはいっても、破城鎚も櫓も階段を越えて移動する時間がないから、この城壁を越えるまでしか出番がない。
「進軍開始! 前だけじゃなく横にも気を配るように!」
ハロルドさんの声とともに進軍が始まった、木造の小さな家の立ち並ぶ貧民階層をゆっくり進んでいく。
城壁の上に備えられた大砲のうちの一つがあたしたちの方を向く、そして光ったと思ったら、ドカンとものすごい音を立てていきなり暴発した、周囲の兵士数人が爆発に巻き込まれ怪我したり火傷したりしたのもしっかり見えた。
「暴発? 暴発したの?」
「いや…だとしても全部同時はさすがにありえないよ、アッシュさんだっけ、王都に待機してる人、その人が何かしたんだって考えた方が良いよ。」
あたしの言葉に即座に昊が返事をする、あたしたちは櫓の上で待機中だった。
「あ、来るよ、弓でこっちを狙ってる。」
その昊の言葉通り、弓兵があたしたちや、下にいる
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