第四話 並ぶ

「いいん……ですか?」
僕に背中から抱きしめられたままの状態で、イリヤが言う。
「何が?」
「一生隣にいますよ? 私が先に死んだって化けて出ますよ? もういやだって言っても絶対聞きませんよ? ……本当にずっと隣に居座りますよ……こんな地味で暗い女の子が……」
「別に、そんなの大して気にしないよ。」
そんな覚悟もなく隣にいてくれと頼むような軽薄な男じゃない。
「君は本当に美人で、それにすごく一途な女の子だ、それを保証する。」
暗い洞窟の中でも光る様に目立っていたイリヤの透けるように白い顔にわずかな赤みが差す。
「そんなに自信がないなら、ちょっと自信つくように頑張ってみようか。」
ちょっとおもしろいことを考えついた。
そう言うわけで、僕はイリヤの手を引いて洞窟を出た。


「ど、どこに連れてく気ですか!?」
「町、なんかおかしいかな?」
僕の考えついた計画を実行するために町の中心部に向かっていると、その行き先に気づいたイリヤが突然抵抗を始めた。
火事場の馬鹿力ってやつなのか、小さな体からは考えられないような意外な力で僕に抵抗する、力は強くはないけど並程度にはあるのに、僕。
「町なんて嫌です! こんな恰好皆指さして笑うに決ってます!」
凄い言いよう、クルツの民はそんなに冷たい人多いわけじゃないのに。
まぁ、ブリジットに薬持って凌辱するような連中がかつて出たくらいだから皆が皆善良ってわけじゃないのは僕も痛いくらい理解してるけど。
「気にしなければいいじゃないか。」
「……無理です…私が笑われるのは平気でも、一緒にいるロナルドさんまで笑われるのは耐えられません。」
いやはや……本当ダメにもほどがある僕をよくこんなに一途に思ってくれるもんだよ。
とはいえ、抵抗されっぱなしじゃ良くないかな。
さっきから訓練場から戻ってきた人たちが僕たちを見てひそひそ話してる。
「仕方ない。」
イリヤの腕をつかんでいた手を放す。
イリヤが今まで振り絞っていた力に引っ張られてバランスを崩すと、その背中と膝の下に手を滑り込ませて持ち上げる。
所謂「お姫様抱っこ」の姿勢になると、
「じゃ、行こうか。」
顔を真っ赤にして抵抗をやめたイリヤを連れて、クルツ唯一の服屋に向かう。
地味な格好で、自信がないなら、ちょっと着飾って自信をつけれもらえばいい。
素材は絶対に良いんだから、少し服装を工夫すればイリヤは光る。
大通りをお姫様抱っこの状態のまま通り抜け、服屋に向かうために左に曲がると、ちょうど服屋の目の前にツィリアさんがいた。
ショーウィンドウに飾られている白い清楚なワンピースをじっと見つめている。
もしかして……興味あるのかな。
いつも着ている羽衣と似たようなデザインだ。
「ツィリアさん?」
近づいて行って後ろから声をかけてみる。
「はひぃっ!!!!?」
奇妙な声を出しながら、勢いよく背筋が異常なまでにピンとした直立姿勢をとる。
変な声を出したのが恥ずかしかったのかそれとも服を見ていたことを見られたのが恥ずかしかったのか、ツィリアさんは恐る恐る僕を見る。それも出来の悪い機械のようにぎこちなく僕の方を振り向く。
「あ……ああロナルド、その娘は誰だ?」
いきなり思いっきり視線をそらそうとするあたり、本気で恥ずかしいらしい。
「ああっと……ドッペルゲンガーのイリヤーナです。」
僕がどうこたえるのか決めあぐねていると、先にイリヤが答えてしまう。
「魔物住民票に載っていない名前だな……」
「……はい、クルツにこっそり忍び込んだので……」
「どうやらロナルドに憑いて、しかも本性を暴かれた後のようだな、私は全く話を聞いていないんだが。」
ツィリアさんは見られた気恥かしさも相まってか何だか機嫌悪そうに僕たちを問い詰める。
「……領主館に連行する、私に抵抗できると思うなよ?」
そう言ったツィリアさんは羽根を広げて低空飛行しながら領主館に向かって行く。
そのあとを僕たちの体がフルオートで追跡する、ツィリアさんの神通力(本当は念動の魔法の一種)によって体を動かされているんだ。
ツィリアさんよりはるかに弱い魔力しか持っていないと、簡単に操作される。
十分ほど経過して、領主館。
ルミネさんが訓練日の今の時間帯にデスクについてることなんてありえないと思っていたけど、確かにそこにはルミネさんがいた。
「あらま、ホントに可愛い子が来たわ、しかも変態坊やに抱えられて。」
イリヤが僕の腕の中でむすっとした顔を見せる。
「相変わらずネリスに付きまとってたことを怒ってるんですね。」
「あったり前よ、あんたがクロの息子じゃなければとっくに氷漬けにして魔界に捨ててるわ。」
あっさり恐ろしいことを言ってくれる。
実際氷漬けにはしなくとも魔界に捨てられていた可能性は少なからずあっただろう、そうなったら僕はどこかの魔
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