第二話 吹雪と火の山と火蜥蜴

俺が目を覚ましたのは、熱い地面の上だった。
「あっちっちっち、何なんだここ。」
辺りを見回してみる。
周囲に広がっているのは岩だらけの山肌。
そして、俺の今いる場所からだいぶ登って行った先には、
「煙……なのか?」
天に向かってもうもうと立ち上る、一筋の大きな大きな煙の柱。
「ってことはここ火山かよ……ついてねぇ……」
しかもおそらく活火山だ、早く逃げないと今噴火しようものなら確実に俺は溶岩に焼かれるか火砕流に飲まれるかして焼死した後降り注いでくる火山堆積物に埋められてサヨウナラだ。
「下……下……」
とりあえず山を下る方向に向かって歩き出す。
愛用の木刀を一応持っておいてよかったと思う、こんな場所で野生動物が出てきたとしても、こいつを持ってればどうにか切り抜ける自信がある。
そう言えば、なんだか身が軽くなった気がする。
「あのときの魔法陣の効果だよな、俺がこんなところにいるのは。」
連れ三人と一緒に面白半分でやってみた魔法の儀式。
もしかしたらあのつまんねぇ日常から抜け出せるかもしれないと思っていた。
けどまさか本当にもしかするとは思わなかった。
不謹慎にも、偶然の作用で訪れてしまったファンタジーなワールドに俺はワクワクしていた。ちょっち熱いのが気がかりとはいえ、今までの日常からなら考えられなかった体験だ。
とはいえ今は安全第一、ゲーム開始すぐの死亡エンドなんてどっかの絶体絶命な災害勉強ゲームだけで十分だ。
ひたすら山肌を下って行く。
スタート地点から五百メートルは進んできただろうか、十メートルしか降りてない気がするけど。まだ安全とは思えない、もっともっと下に降りよう、それこそ火山から離れなくちゃまずい。
「そういや、他の三人は無事かねぇ……」
山肌を慎重にしかし時として大胆に下りながら、一緒にこの世界に来ていた三人の連れのことを考えてみる。
昊は……まぁ無事だろうな、要領いいし頭も切れるしあれで意外に喧嘩強い。
平崎も、おそらく無事だ、あいつは頭が良いし、神に愛されてる。
一番不安なのは天満か、体力ないし勉強もそこそこだし、要領悪い。
一番年上の女が一番不安がられてるってのも妙な話だが、不安になるとしたらあいつだ。
「おっと、崖じゃねーの。」
目の前に崖出現。
とりあえず熱い地面に我慢しながら這いつくばると、
「うん無理だな。」
高さ八メートルほどの崖で、降りられないことを確認する。
三メートルくらいなら飛び降りる自信はあるけど、五メートル超えるとさすがに無理だ、あとのことを考えると無茶はできない。
降りられそうな場所を探してみる。
「ようよう其処行くお兄さん。」
いきなり後ろから声をかけられた。
振り向いてみると、そこには俺の好みがほぼストライクの良い女がいた。
まず身長が俺と同じくらいある、これで通らなかった女は多い。
次に髪、少し手入れの悪さがうかがえるが、後ろで纏められたあまり長くない髪はちょうど俺の好みの長さ、赤いのは気になるがこの際目をつぶる。
次にスタイル、程よく出るところが出て、しかし無駄な肉はあまり感じさせない見事な曲線美を描く褐色の体を、水着に見えるような面積の小さな布と鎧のようなもので守っている。
で、最後に顔。
気の強くて快活そうな顔立ちが、こっちを見ている。
ただ何と言うか、人間ではなさそうだ。
だって、尻尾生えてるし。
その上その尻尾燃えてるし。
ファンタジーだなぁ。
しみじみ思う俺に向かって、その女は
「暇そうじゃん、私と勝負してくれよ。」
いきなり決闘を申し込んできた。
「どう言う理屈で暇なら勝負に繋がるんだ?」
「私の中では十分理屈が通ってる!!」
「俺の中でも通らないなら意味ねぇから。」
何と言うか、どうにもどうやらバカっぽい。
「それに暇でもないんだよ、あんたも見えるだろ?」
俺は迷わず火山の頂上で起ち上る黒い煙の柱を指差す。
「もし噴火しようもんなら俺は死ぬ、冗談抜きでそれは勘弁してほしいんだよ。」
「大丈夫だよ、この山いつもこんな感じだから。」
いつも大丈夫であっても今も大丈夫だとは限らないと思うが。
「それより、私と勝負。」
尻尾女はどこからか大きな鉈のような刀を取り出す。
見るからに、真剣だ、二つの意味で。
「いざ、参る!!」
「ちょっと、待てやぁっ!!」
丁寧に精密な動きで俺の首を狙ってきた一太刀を、反射的にかがんで避ける。
避けんかったら胴体から首が分離していただろう。
死にたくないなら、殺るしかないか。
恨まないでほしい、正当防衛だ。
左手だけで木刀を一気に薙ぎ、女の腹にたたきつける。
むき出しの女の腹を木刀でぶん殴るとか、気が引けるんだけどなぁ……
女は一瞬だけ動きを止めたが、すぐ俺に向かい剣を振り下ろす。
それを横に飛び避ける。
「痛い痛い、やるなー兄さん」
痛いで済
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