フレッドが語る クロードと仲間 (暴力表現)

で、次がワシか。
クルツが出来上がるずっと前、それこそクロードが勇者じゃった頃から一緒に行動しとった連中の中では、ワシが唯一の生き残りじゃからのぅ……
まぁ妥当な判断じゃろうて。
ん? いやクロのことじゃないわい、ワシは二代目クロードのことは「クロ」としか呼ぶ気がないからの、ワシがクロードと言ったら初代じゃ。
そうじゃの、まあワシらの若かりし頃。
旅の中であった出来事でも語らせてもらうとしようか。


ある日のことじゃ。
その日ワシらは野山を進んでおった。ワシらは王国のあちこちを警備目的で放浪しておったときに、山賊討伐を依頼されたんじゃ。
ワシらのパーティは四人じゃった。
それこそ最近クルツに移住した元勇者ロイドの編成とよく似ておるな、勇者、魔術師、神官、狙撃手。
勇者が言わずと知れたクロード、勇者としては珍しい棒術使いじゃ。
魔術師がクロードの恋人、のちの妻シェルシェ、土の魔術を得意としておった。
狙撃手がマーロ、教会との戦いのさなか命を落とした。
最後の神官がワシじゃ、あ、一応言っておくがワシは主神の神官ではなく生まれた村で祭られていた土地神の神官じゃ、間違えるなよ?
「本当にこっちであってるのか? マーロ。」
「村人の話を聞く限りでは、間違いない。」
先頭を進んでいたクロードが、振り返ってマーロに話しかけ、マーロが返事をする。
山賊団は必ずこの方角に逃げておった。
教会の騎士たちも何度も足取りを追っていたが、毎回必ず見失っておったそうじゃ。罠が仕掛けてあったり物陰から襲撃されておったそうじゃが全くそんな気配はないのう。
「……クロード。」
シェルシェがか細い声を出した。
もともとシェルシェはクロードとは幼馴染で、小さなころからお互いにずっと一緒にいようと約束しておった仲らしい、ワシらから見てもお似合いの仲良しカップルじゃった。
当時性交渉はなかったがの。
シェルシェはクロード以外とほぼ口は聞かんし、ワシら相手も必要最低限のことしか言わんかった。たぶんクロの無口な性分はシェルシェの遺伝じゃろうな。
「何だ? シェル」
「あれ……」
シェルシェがハエが止まりそうなほどゆっくりと腕を動かして、小さな手の細い指先である方向を指さす。
ワシら男衆三人、同時にその方向を見た、見事な団結力じゃ。
その先に、家があった。
木造二階建て、小さいわけではない割と普通の家じゃ。
ただし、こんな山中にあるのは明らかにおかしいものじゃった。
最寄りの町まで徒歩一時間弱、いくらなんでも立地条件が不便すぎるじゃろう。
「あっから様に怪しいなオイ……」
「山賊のアジトで間違いないか?」
呟くクロードに、ワシは答えを急ぐ。
「まあ……そうですよそうろうのオーラだよな、無能騎士ども、罠なんて一個もねーじゃねーか。」
そうじゃ、ここまで来るのに一度も罠には引っかからんかった。
もしかすると運よく罠のないルートを進んできただけという風にも判断できるが、それよりはもともと罠がないことを想定した方が自然じゃろう。
ワシらは家に接近していく。近づいて中を調べようとしたが、窓は閉め切られてカーテンもかかっており、様子はうかがえない。
少し考えてから、玄関に向かう。
ドアを礼儀正しくノックするが、返事はない。
ドアノブをひねって開けようとするが、鍵がかかっておるらしく開かない。
「……シェル、中に人がいるかわかるか?」
シェルシェは小さくうなずくと、
「六人。人間五人、それ以外一人。」
淡々と中にいると予想される人数を答える。
魔力感知の一種じゃろう、最初からそれを使っておればここももっと早く見つけられておったのに。
「それ以外?」
「分らない。」
首を横に振る。
「……ま、細かいこと考えててもしょうがないか…入ろう。」
クロードが愛用の棒をひゅんひゅんと振りまわす。
ドアを粉砕する気じゃと簡単にわかるわ。
「起動、土巨人の左手」
クロードがドアを破壊するよりも速く、シェルシェが土でできた、人を握り潰せそうなほど巨大な手を魔法で作り出した。
「……壊して。」
ぶぉん
合図と共にうなりを上げた巨人の手は拳を握ってドアを殴りつける。
ドガッバギャ
ドアは吹っ飛び、玄関口まで大きく破砕されて穴が開く。
ワシら三人は大きく口を開けて立ちつくすしかなかった。
シェルシェは無口な割に豪快なところがあったんじゃ。
「開いた。」
ちょっと褒めてほしそうに目を輝かせながらシェルシェは言う。
「いや、まぁ、確かに開いたけどよ……」
クロードが言葉に困っておる。
本人も悪気があってやったことではないしクロードも似たようなことを考えておったんじゃから怒るにも怒れんわな。
顔を見合わせ、ちょっと考えて、
「入るか。」
「だな。」
何も言わずに進入する。
破壊音を聞きつけて山賊どもが姿を現す。

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