第六話

門と同じように玄関のドアも今度は僕が斬って破壊し、二人で中に入る。
メイドらしき数人の女性が口をあんぐりあけて棒立ちしているのは無視、エントランスを突破して廊下に入る。
「キャァアアアアアアアアア!!!」
背後から、やっと事態を呑みこんだらしき女性たちの悲鳴。
それを聞きつけて、待機していた私兵らしき男たちがあちこちから出てくる。
あっという間に僕たちは取り囲まれる、相手の数は十人ちょっと。
「……こいつらとは戦っても?」
「いいよ、もう騒いでも問題ない。」
「背後は任せる。」
「うん。」
切りかかってきた一人の剣をギリギリのところでよけて、その相手の腕の腱を狙って斬りつける、男が落とした剣を床に落ちる前に拾って、
ガゴッ
その柄で男の顎を殴りつける。
男は後ろに倒れて、床に頭を思い切りぶつけた。
クロードさんとランスに鍛えてもらったおかげで相手の動きが良く見える。
ガスッ
背後ではルビーが男一人を一撃で気絶させ、
「はぁッ!」
気合一閃、男をボールのように投げて他の男にぶつける。
三歩下がってルビーの少し後ろに。
二人同時に突っ込んできたのを今度はさっきの男から奪った剣を片方に投げてけん制にし、ひるんでいない相手の左足を切る。
崩れていく男を蹴りで仲間にぶつけてやり、二人まとめて転倒させる。
そしてその二人の頭を連続で踏んで気絶させながら敵に突っ込み、相手の頭にアルマダの峰打ちをくれてやる。
硬質で重量のあるアルマダの峰打ちは、脳をかなり揺さぶる。
動きを止めた男に構わず剣を振り回し、周囲の相手も一気に薙ぎ払う。
多数相手での力任せと少数相手の技を使った戦いの融合形、実戦で使うのは初めてだけど、良い感じだ。
周りに起き上がっている敵の姿は見当たらない。
全員気を失っているようだ。
「思ったよりも呆気なかったな。」
「そうだね。」
はっきり言ってあっけないどころか弱かった。
とはいえ、質はともかく名門貴族の私兵たちがこの程度の数で終わりだとは思えない、長期戦になるのは避けたい。
それに、仮にもここには新勇者ライドンがいる。
僕の仲間三人はでてきても戦わなくて済みそうだからともかく、ライドンのパーティの連中が実力のない寄せ集めではなくそれなりの実力者だったら面倒だ。
と思っていると、共鳴探知の効果時間が切れた。
「あ……」
「どうした?」
「共鳴探知が切れた、しばらく使えないし……どうしよう。」
「……大まかな場所は覚えているだろう、それを手掛かりに探すしかあるまい。」
確かにそれはかなり確実な手段だとは思う。
けど、あんまり敵と出くわしたくはない。
姉さんの方から僕を探知してくれれば助かるけど、チマチマした構成を必要にする魔法が苦手な姉さんに探知系魔法は期待できない。
とりあえず階段を上って三階へ。
この階だけ、人気がない。
たぶんここに三人がいるんだろう。
部屋のドアを探して歩いていると、
「……ロイド?」
廊下を歩いていた男に会った。
高い身長、くすんだ灰色の髪、艶のない黒い瞳。
「ハルト……久しぶり……」
医術師のハルト・ワインダーその人だった。
「久しぶりというか……アイリが『ロイドが来る』などと騒ぎだすから弟を喪ってトチ狂ったと思ってたんだが……まさか生きてたとは……」
「うん、色々話したいことがあるんだ。」
さすがに冷静なハルト、驚いてはいるけど騒ぎはしない。
「こっちもお前に伝えたいことは色々ある、だがとりあえず俺たちの部屋に戻ろう。」
「分った。ルビーもこの人は安全だから安心して。」
殺気立っていたルビーがしぶしぶ僕に従う。
ハルトの案内で僕たちは三人が寝泊まりしている部屋に向かう。
ドアを開けると、
「ロイド!」「ロイドさん!?」
姉さんとフェムナが大きな声で出迎えてくれた。
「トイレに行く途中偶然会った。では俺はトイレに行ってくる。」
そう言ってハルトは部屋を出ていく。
色んな偶然が重なるなぁ……
「ロイド。」
「ああうん、とりあえずまず僕から報告、僕は皆も知る通りクルツ殲滅戦でこのルビーと戦い、完全な敗北を喫しました。その後僕はクルツ内の施療院で治療を受け、そして一つ事実を知りました。」
「……何?」
「魔物は、人を喰い殺さない。」
僕の代わりに口に出したのはルビーだった。
姉さんは驚いた表情を見せて、フェムナはあまり驚いていないような、むしろ何かに納得したような表情を見せる。
「それってどういう」
「貴族たちの中に、自らが略奪行為を行う責任逃れに魔物を利用しているものがいるということですね。」
さすがに、没落した家とはいえ貴族の娘、フェムナはそれなりにこの国の実情を理解しているようだ。
「知ってたんだね。」
「私の家の領地もそう言う貴族に滅ぼされたんです、いやでも覚えます。」
そういうことだったのか、貴
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