がたがたとぶっ壊れやしないか心配になるほど見事に揺れる馬車が止まり、
「兄ちゃん、ついたぜ。」
御者兼隊商のおやっさんがそう俺に言ってくる。ここはローディアナ王国の都市レクターン。かつては魔物狩りも頻繁に行われていたという、ローディアナ王国でも悪い意味で有名な都市だ。
俺は馬車を下りると、イグノー王国との国境からここまで乗せてきてくれた隊商のおやっさん方に運賃を払って、感謝の辞をひとしきり述べた。
「兄ちゃん、本当にここまででいいのかい?」
「ああ、いろいろ見て回りたかったから、あんまり馬車に乗って移動するのもどうかと思ってたんだよ。」
「そうかい、けど気をつけろよ、ここは………」
「『旧王国軍の残党が潜んでるって噂がある』だろ?」
実際そんな話は有名だ、今の女王が即位する前はローディアナと言えば貴族やその庇護を受けた軍人や奴隷商人が幅を利かせていて、かなり住みづらい国だったらしい。
特に差別を受け排斥されていた魔物は容姿の美しさ、権利を認められない「動物以下」の扱いから、奴隷商人や軍人にとっては非常に都合が良かったそうだ。
それを変えたのが、女王アリアンロッド一世。
即位までに大規模な内戦があったことはさておき、ローディアナ初の女王となったアリアンロッド一世は特権階級であった貴族の権力の大半を取り上げ、彼らが奴隷として所有していた人員をすべて解放した。
これに加え旧王国軍の大幅な人員切り捨てや奴隷商人の掃討、そいつらの多くは「収容所」と呼ばれるところに送られたという話だが、「収容所」が魔界やそれにほど近い辺境の土地であるという話は公然の秘密だ。
この一般に「浄化」と言われた体制の切り替えは国民から莫大な支持を得た。
しかしその一方、今まで甘い汁をじゅるじゅる吸ってきた貴族やその手下にはこれを快く思わない連中も多かったらしい、位を追われた元貴族の中には公然と反女王を唱える者や、辛うじて浄化を逃れ貧民街などに逃げ込んだ旧王国軍の兵士を庇護するものもいる。
ここら辺の知識はローディアナに来る前でも簡単に手に入った。
そしてここレクターンにも、庇護を受けた反王女の連中が潜んでいると言われている。
「そうだよ、つい最近も俺の商売仲間が身ぐるみ剥がれた死体で見つかってな、お上も動いちゃいるが如何せん人手が足りねぇってのが現状だよ。」
「そればっかりはなかなかなぁ。」
浄化にも弊害はあった、それが慢性的な人手不足で、今まで軍事・治安を担っていた階級の人間がごっそりいなくなるか反女王勢力に着いたせいで、人手が足りないんだそうだ。
イグノー王国の傭兵ギルドにまで仕事を回す羽目になり、もしイグノーの王子とローディアナの女王が政略結婚しなければさらに面倒なことになっていただろう。
「路銀が足りなくなったら傭兵の仕事すれば稼げるぜ。なんてな。」
気のいい隊商のオヤジは冗談めかして言ったが、俺は割と本気でそうすることも考えてた。
それはともかく、いろいろ回ってみよう。そう俺は決めた。
最初に貧民街に向かうことにした、観光気分ではないけど、話に聞いて憧れた理想郷に近しい人物がどこにいるのかよくわからなかったからだ。
理想郷と言われる幻の地クルツ自治領。
高度な自治意識と、勤勉さを持った住民が暮らし、平穏で安らかに人と魔物が共存しているまさに理想郷と言われるにふさわしい土地であり、すべての食べ物を領内で自給自足してなおも余剰が出るほどの生産性も持っている。
そんな理想郷に行くために、俺は高い金を払ってこの国に来た。
イグノー王国では、クルツ自治領の情報があまりに少なすぎたからだ。
王国の復興に人員や資源を提供しているという話も聞くが、やけに情報が少ない。
「止めてっ! 放してよぉ!!」
物思いにふけっていた俺を現実に引き戻したのは、幼い感じのするそんな声だった。
迷わず走りだし、声のした方に向かう。曲がり角を右に曲がると、そこには三人の男に取り押さえられた幼い少女の姿があった。
「暴れんじゃねぇ!」「口抑えろ、声出されたら面倒だ!!」「胸揉むのは後にしろ!!」
言い争いながら男たちは少女を浚おうとしている、少女もかなり必死に抵抗するが数の差は明らかで、窮地に陥っていることが一目でわかる。
「おい!!」
男たちを怒鳴りつけ、剣を抜いて構えると男たちは俺の方を見る。
「何だぁガキ!」「俺たち王国軍に刃向うのかよ!」「身の程ってやつを思いしれやぁ!!」
飛びかかってくる三人、三対一では不利とはいえ、俺も真面目に戦うほど馬鹿じゃない。
女の子が逃げたことを確認して、俺も背を向けて走り出す。
狭い道を抜け、袋小路に入ると男たちは俺を追い詰めたと思ったらしくニヤニヤ笑いを浮かべて、『綺麗に列に並んで』接近してくる。
「鬼ごっこは終わりだぜ?」「久々に魔物を犯せると思
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