第一話 僕の剣はツタを斬るためにある?

「それで、 地面から伸びてきたツタが花に絡んでしまうのを恐れて、 切ろうとしたけど切れなくて、 困っていたところに僕が声を掛けた……と」
「はい……わたしはここでお花を育ててるいのですが…………このままだとツタの重みで倒れてしまいます……」

 人間の女性だと思っていたが実はアルラウネだった事に驚いたが、何とか状況は飲み込めた。確かに地面からツタが花に向かって伸びている。このままだと花がダメになってしまうだろう……。

「わたしのハサミだと……切れ味が悪くてダメなんだす……」
「ハサミ!? 少し見せてもらっていいかな!?」
「ええっ!? 急にどうしたんですか!? 目を輝かせて……」
「はっ!? し、失礼……これは僕の癖で……刃物を見ると手に取らずにいられないんだ……」

 刃物を持っていれば魔物だろうと、人間だろうと声を掛けてしまうのが僕の悪い癖だな……。

「ふふっ……面白い癖ですね。 はい、これがそのハサミですよ」
「あ、ああ……これはどうも……」

 律儀に両手で差し出されたハサミをこちらも両手で受け取って眺める。どこにでもある切り花の為のハサミだけど……

「随分……刃がボロボロだな……研いではいないのか?」

 これではかなり作業に時間がかかってしまうだろうに……。そう疑問に思ってきいてみたのだが、アルラウネは申し訳なさそうに顔を伏せながら言った。

「わたし……刃物の手入れが出来ないんです……このハサミも一度街で買ってそれっきりで…………」
「ふむ……とりあえずこのハサミは置いておこう。 君はこのツタを切りたいのだったね?」
「は、はい」
「少し……下がってもらえるかな?」

 アルラウネを遠ざけてから腰の剣に手を掛ける。まさか……こんなところで使うなんて思いもしなかった。山賊相手ではなく植物相手に剣を抜くとは……

「………………ふっ!」

ジャキン!

 剣を抜き、ツタを斬り、すぐに戻す。『イアイ』……とか言ったかな? もちろん、周りの花には傷一つつけていない。

「わ、 わぁ〜……」

 アルラウネに視線を戻すと、輝いた目で僕の事を見ていた。 どうもこの『イアイ』という技は、人を魅せる効果があるようだ。

「あ、 ありがとうございます! すごいですね、 思わず見惚れちゃいました」
「ああ、 とりあえずは大丈夫だろう……だけど……」
「だけど……なんですか?」
「このツタ……手で簡単に根元から引き抜けるよ?」

 切り落とした後の地面から伸びていたツタの残りを引っ張ってみたら、なんの抵抗もなく抜けてしまった。堅いのはツタだけで、根本は緩いようだ。

「あ、 ははは……わたしったら……かなり混乱してたみたいですね……でも、 ありがとうございます。 よければ……お名前を……いいですか?」
「僕はケルト・アベラール。 見てのとおり人間だよ」
「わたしはタニアル、 お友達にはタニィって呼んでもらってます」

 アルラウネはタニアルと言うらしい。 見た目が華やか……と、いうか花そのものだ。仕方ないか、アルラウネだし。

「ではタニアル、 明日あたり、 僕の店に来ないか? そのハサミ、 僕なら手入れが出来そうだ」
「い、 いいんですか? そんなことまでしてもらって……」
「乗りかかった船、 という奴だよ、 気にしなくていい」
「わ、 分かりました! 明日必ずお伺いしますね」

 満面の笑顔で手を振ってくるタニアルに別れを告げ、ほぼ暗くなった空に焦りを感じながら僕は帰路についた。場所も教えたし、彼女が極度の方向音痴でなければ明日、店にやってくるだろう。

 新たな魔物娘との出会いに少し嬉しさを感じながら、大量の鉱石が入った袋を抱え直し、僕は一路家へと急いだ。




○月×日
 今日は、ツタが切れなくて困っていたところを人間の男性に助けていただきました。
 とても剣の扱いが上手で、惚れ惚れとしてしまいました。とっても優しくてカッコイイ人でした。
 明日、わたしのハサミの手入れをしてくれるそうです。どんなお店なのでしょうか……?
 楽しみで仕方がないです。



ガチャ……カランカラン

 翌日、大量の鉱石を倉庫にしまってからいつもと同じように開店準備を終え、店の中でハンマーを振るっていると、来客を告げる鈴の音が聞こえてきた。

「いらっしゃい、 ゆっくり見て行ってくれ」
「あ、あの……わたしです……」

 聞き覚えのある声に炉から顔をそちらに向けてみると、小さな籠を持ったタニアル……らしき女性が立っていた。らしき、というのは昨日と少しばかり見た目が変わっていたからである。

「…………頭の花はどうしたんだ? やけに小さくなってるんだが……」

 まずは特徴的な頭の花、今では髪飾りのような花が1輪乗っかっているだけである。頭の
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