「ん……朝か……」
昨日は危なかったなぁ……まさに修羅場、うまく収まったから良かったものの……。
「今日は朝メシどうするかな……」
いま家にある食材を思いだそうとしたところ、まずは仕事のために店の炉の調子を確認するのを忘れていた事を思い出した。
「ここ数日休業だったからなぁ……」
なんてことを呟きながら軽く着替えて寝室から出て、キッチンで料理をしているリーニを一瞥してから階段を下って店まで来た。
…………………
「!!!???」
いま、リーニ居なかったか!? なにスルーしてるんだよ! 僕!
「リーニィイイ!?」
猛スピードで階段を駆け上がりキッチンに乗り込む。リーニは見間違いや幻覚などではなくきょとんとした顔でこっちを見ていた。
「起きたの? 昨日はごめんね勝手にいなくなったりして、いま出来るから座っててね」
「いや、その前に聞きたいことが色々と……」
「座ってて?」
「でも……」
「座って」
「だから……」
「座れ」
「えーっと……」
「す・わ・れ」
「…………はい」
折れた……負けた……情けないな……僕。
〜促されるまま座って数分〜
「お待たせ〜」
「ああ……」
湯気を立てる器を二つトレイに乗せてリーニは上機嫌な顔をしていた。僕は未だに困惑していたが、空腹には勝てないのでありがたく相伴に預かることにした。
「美味しそう、トマトリゾットだ」
「朝だから軽目にね、ささ、どうぞ」
言われてまずは一口、口に運ぶ
「美味い……」
「ホント!?」
トマトの酸味、玉ねぎの甘味、チーズのまろやかさの絶妙なバランス……カンペキだ。
「良かった……隠し味効いたかな?」
「隠し味?」
「うん、ほんの少しね。 人によって合う合わないがあるからよかったよ」
「へぇ……そんなもの家にあったか?」
「自前だよ。 あまり量は採れないけどね」
「ふーん……ところで、昨日はどうしていきなりいなくなったりしたんだ?」 「ああ、あれは…………」
沈黙してるよ……
「うん、気にしないで! ねっ?」
「ええー?」
分からずしまいとはなんとも決まりの悪い結果だな……
「あ、食べたら掃除するからね」
「え? 家事全部やるつもりか?」
「? いけない?」
「いけないというか……知り合って日が浅い人にそこまでしてもらうのは……」
「ケルト、あたしの事を呼んでみて」
「リーニ」
「だよね、あたしもキミの事を下の名前で呼ぶよね?」
「それが?」
「下の名前で呼び合うのはかなり親しい証拠だって先生が言ってたよ? だからいいよね? あたし、ケルトともっと仲良くなりたいなぁ」
あの医者め……余計なことを……
「だけど……仲良くなるなら家事やるよりもいい方法が……」
「ダメ……なの? あたしがケルトの事知っちゃダメ? 助けたいって思っちゃ迷惑かな……?」ウルウル
「分かった! 分かったから泣かないで!」
よく分からないけど良心が痛い……
「いいんだね!? やった!!」
「うん、頑張って……僕は仕事するから……」
段々考えるのがめんどくさくなった僕は、鼻歌混じりで洗い物をはじめたリーニを尻目に店に向かうために階段を下っていった。
.
.
.
ガチャ……
「しばらく出番がなかったヴァリーだぜ! ケルト!」
「ああ、いらっしゃい(出番?)」
確かに……おかしいな、一週間前に会ったのにここ数ヶ月ぶりに会った気がする。
「中々更新できなくて……」
「? 今の声だれだ?」
「さあ?」
ヴァリーと二人で首を傾げつつも、早速仕事に入ることにする。
「ほい、注文票。 今日は少なめだな」
「少ない方がいいよ、集中出来るから……そういえば、今日はいつもより遅いけどどうした?」
数分ならまだしもいつもより2時間は遅い。
「ああ、それはその……町長に捕まって……」
「うわ……よく2時間で済んだな」
「見合いから結婚式まで全て受け持つから受けてみないか?って言われて断るまで1時間、断る為に酷使した体力を回復するに30分かかった……」
思い出してしまったのかヴァリーは額を手で押さえて渋い顔をしていた。
相も変わらずあのお節介の塊のような町長はとにかく他人に世話を焼きたがるんだな……悪気がないから尚更質が悪い。
「まあ、なんにせよ無事でよかった」
「それはそうと、おれからも質問いいか?」
「いいけど?」
「おまえの背中に張り付いてとんでもなくニコニコしてるその娘はだれだ?」「はい!?」
「はじめまして♪」ニコニコ
気が付かなかった、前に手を回されてるのに気が付かなかった。いわゆる「あててんのよ」状態なのに気が付かなかった。リーニ胸小さいし、
「ケルト……またか?」
「またってなんだよ。 友達作るくらいいいだろ?」
「おまえそれ本気で言ってんのか?」
「そうだ
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