―――パァン!
―――キィン!
火薬が爆ぜる音、金属が弾く音
それらが奏でられている
まるで円舞曲(ワルツ)が奏でられるように
時に激しく、時に静かに―――
「…引き分け、だな」
「よく言う…弾切れなのはわかっているのだぞ?」
首に向けられた剣
額に向けている拳銃
「そっちも刃がボロボロだろーが」
「フッ…生意気を言うようになったじゃないか」
お互いが同時に得物を下げる
「悔しいが…今回はこれで引き下がる!次はないと思えヴァンパイア!」
「その台詞を次も言わなければ良いが、な…っと!」
ヴァンパイアの言葉を遮り、閃光手榴弾が炸裂する
その隙にもう片方は逃げたようだ
「クックックッ…楽しみにしているぞ、ハンター」
月がヴァンパイア―――彼女を照らす
そこには恋人を待ち焦がれるような恍惚とした笑みを浮かべた、一人の美女が居た
〜〜〜
「クソッ!」
屋敷から逃げ出した俺は、外の空き缶を蹴り、多少の鬱憤を晴らす
「先祖代々のハンター業も…俺の無能さで潰えるのか…?」
俺はハンター
とは言っても、普通のハンターじゃない
悪霊とかモンスターとか専門の、言わば裏方的なハンターだ
曾々爺さん位から続いているらしいこの家業、しかし年々奴等も減ってきたし、なにより―――
「…でも、胸とか顔とか最高なんだよなぁ…ってバカ!俺のバカ!」
どいつもこいつも美女揃いになってきている
親父の代の時にはそんな事無かったのに、近年になって突然だ
「やっぱ…日本でなんかあったんだろうな…」
何年か前、日本で異常なまでの魔力だか電磁波だかが検地された
それ以来、少しずつ奴等の美女が増え始めているのだ
「ま…そうは言っても、な…」
だが、奴等はモンスター
人間を餌にしているのには違いない
近頃は人間社会に進出しているのも増えているみたいだが…恐らく餌を確保し易くする為だろう
だからか、それと平行した行方不明事件が後を絶たないのだ
―――最も、行方不明になっているのは…殆どが俺と同じハンターだ
ハンターはアウトローな生活なのが殆どで、社会的に見たら社会不適合者の集まりだ
つまり、社会的にはなにも起きていない扱いになっている
それでも、俺達ハンターは、人を護ると言う使命を忘れてはならない
中にはモンスターを見世物にするクズも居るが、そうなったらハンターとしては終わりだ
「けど…次の襲撃で何とかしねーと…」
…とは言っても、弾薬代にも金が掛かるし、飯代もある
さらにハンターは殆どが車での生活なので―――
「…またガス代あがってるし」
万年金欠なのだ
・・・
なけなしの金を使って、今夜の飯と弾、あと車のガソリンをなんとか購入した
「はぁ…」
明日であいつを倒せないと、これ以上の滞在も厳しい
ただでさえ近所の住民から噂され始めてるし、警官に車の中を調べられたらテロリスト扱い間違い無しだ
「まぁ…親父のライフルとか売れば良いんだけどさ…」
親父やお袋、じいちゃんが使っていた武器で俺が絶対に使わない武器が何種類かある
それらを売れば、多少は―――
「いや、売れる場所ねーか…」
と、思ったが、殆どが違法所持なのを思い出す
売れる場所はあるだろうが、安く買い叩かれる
高く売れる場所に行くには時間もかかり、結局滞在費を稼げないのだ
「…ホント、どうすっかね…」
「なら私に嫁げば良いではないか?前から誘っているだろうが」
一人で車中でハンバーガーを食べていた所、突然助手席から声がした
「消えろヴァンパイア、今は停戦時間中だぞ」
その声にとっさに反応し、手に隠していたナイフをヴァンパイアの首にむける
―――せっかくのハンバーガーを落とす事になるのは悔しいが、仕方ない
「食べ物を粗末にするなばか者が!」
と、魔術を使い、ハンバーガーを浮かせてくれている
「停戦中でも会ってはいけないとは決めていない…契約書を確認するか?」
「…ハンバーガーの件は礼は言わねーぞ」
そういってナイフを保ちながらハンバーガーを手に取る
「ふむ…なけなしの金で買ったのがチーズバーガー1個とは…」
「ならいい加減負けて滅んでくれねーか?そうしたらまともな職に就くと思うから」
「いや、無理だな…最終学歴がジュニアハイスクール卒で無職歴が長すぎるんだからほぼ絶望的じゃないか?」
その言葉を無視しながら、実はもう一個買ってあるチーズバーガーに手をつける
「…む、まだ後二つあったか」
「匂いで当てるのやめてくんねーか!?」
「が、サラダがないな、きちんと食べるんだ」
「たけーんだよ…ってなんでお前買ってきてんだよ!?」
「お前が肉しか食わないのなんてお見通しだ…どうせ最後のハンバーガーはLLサイズの大きい
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