俺得物語セブンティーン

―――それは、夏の暑い日のことだった


「あっちぃ…」

そう言いながら、夏の暑い中を歩く

盆と言う事もあり、地元の田舎へ帰ってきていたが、田舎も昼間は暑い
むしろ、クーラー等無い分、余計に暑く感じるのだろうか

そんな俺を見かねて、実家の両親は川に行く事を提案してくれた

まぁ、家でゴロゴロしてるのに比べたらまだ随分健康的なのだが、やはり邪魔だったのだろう
久々の帰省だったが、なんとなく自分の家じゃない感覚も強かった
…それだけ実家から離れていたと言う事なのだろう

そんな事を思いながら、暑い道を歩む

・・・

そんな事を思いながら歩く事20分

近くの公園にきた

この公園の奥には川があり、涼む為のスペースがある

「ガキの頃良く来てたなぁ…」

小学生か中学生まで来ていた公園を見ながら、なんとなく懐かしく思う

「まだ川の方は入れるかねぇ…」

昔はよく川に入って涼んでいたのを思い出しながら進んでいく

昔からあったこの川は、上流に行くに連れてひんやりした空気のおかげでとっても涼しい
だが、そんな所なのに誰も近寄らない
なんでかわからないが、確かに俺も近寄らなくなったのを覚えている

「しっかし、変わらないなぁ」

だれも来ていないからなのか、昔と何も変わらない

小学生のときは何人か出来ていたが、なぜか俺しか来なくなっていた
その為、いつも一人で遊んでいた気がする

「ホント、変わらないなぁ…あいつ、元気にしてるかな…」

言葉に出して、止まる

―――アイツ?
あいつって誰だ?
いつも一人で遊んでいた筈だ

なのに、まるで誰かと遊んでいたような…

記憶にもやが掛かったみたいになりながら川の上流に向かう

・・・

川に近づくにつれて、涼しさと懐かしさ
そして記憶のもやが強くなっていく

「俺は…誰と会ってたんだ?」

そんな風に考えながらたどり着いたのは、懐かしい場所

そこは上流なのだが流れが緩やかな上に、窪みになっていて少し深いがゆっくり中にもぐったり出来る場所だった
上流につながる部分は、緩やかだがそれなりに角度の着いた場所で、泥が固まって天然のスライダーのようにもなっている

「そうそう、このスライダーでよく滑ってたんだよ!…お前と一緒に」

誰に言うわけでもないが、俺は続ける

「最初あった時には驚いたよなぁ…なんせ河童が川にいるなんて知らなかったんだから」

その言葉に反応するように、水面付近が揺れる

「でも、気が付いたらお前と会うのが楽しみでさ…毎日通ってたんだっけ」

記憶のもやがはっきりとし始め、見えてきた

「あの時から…俺はきっとお前の事が好きだったんだろうよ」

記憶のもやの向こうと同じ姿の少女が、川から出てきた

「…あの時と、変わってないんだな」

「…なんで来たの?」

その少女の頭には―――皿がついていた

・・・

ガキの頃の話だ

いつも通り川で遊んでいたら、上流からこの少女が来た
最初は驚いたが、気が付いたら一緒に遊んでいた

川の下流に、彼女は近づかなかった

いつも通り上流に向かおうとしたが、足を滑らせたのだろうか
その日はいく事が出来ず、気が付いたら下流でボォーっとしていた
それから、俺は上流に行っていない

「あの時、俺を助けてくれたのか?」

彼女はゆっくりと首を縦に振る

「それと一緒に、まじないをしたの」

彼女はそう言いながら手に持ったお札を見せる

「他の妖怪仲間からもらった、記憶改竄のお札」

彼女は寂しそうにしながら、続ける

「人間がこれ以上来ると、私達の住む場所がなくなるし…それに私達と人間は違う」

「…生き物としては確かに違うな」

「全く違う!そんなものといたら貴方も一人になるかもしれない…から…」

この河童の少女は、俺がいつも一人で来ていたのを心配してくれたのだろう
自分がいつも一人だから、だれかが一人でいるのが自分みたいに一人になるかもしれないから、怖かったのだろう

「なら…お前が一人なのはどうすればいい?」

そう言いながら彼女に近づく
服が濡れていくが、気にしない

「なんとなく思い出し始めたんだけどさ…この川にずっと住んでる河童って、お前だろ?」

顔を俯かせて、なにも答えない

―――この川には河童様が住んでんだぞ

ガキの頃、近くに住んでいた爺さんから聞いた話
川に何百年も住んでいる河童がいる、その河童は川の守り神だから、川を汚してはならない

そう教わっていた

「何百年も山の中で、一人でいたのか?」

彼女は答えない

「じゃあお前のが寂しいじゃんかよ」

彼女に触れ合える距離まで来た
もう腰まで浸かっている状態だ

「昔はお前のが大きかったのにな…」

顔を俯かせ、彼女は泣くのを堪えている様に見えた

「また、一緒
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