『姫!助けに参りました!』
『そなたは…勇者様!ありがとう!』
TVの画面を見ながらなぜか虚しさが込み上げてくる
これは作り物だし、ハッピーエンドになって当たり前だ
「…俺には関係ない、よなぁ」
つけていたゲーム機とTVの画面を消して、現実に戻る
―――このなんとも言えない倦怠感と失望感
現実に戻ったのだと、嫌でも認識できる
「…なんで、面白かったんだろ?」
ゲームの始めは面白かった筈なのに、後半のラスボスを倒してからは虚しい感じだけだった
「まぁ、こんなもんか」
自分がどんなに憧れても、なれないもの―――主人公
人生は自分が主人公だなんて簡単に言ってる奴等もいるけど、生憎そんな事はなかった
今までも、これからも…
・・・
「お前やる気あるのか!?」
また上司にどやされる
「お前の代わりなんかいくらでもいるんだぞ!」
「…申し訳ありませんでした」
また、この繰り返しだ
他の奴のミスまで自分のせいにされて、なんで俺が怒鳴られなきゃいけないんだ
「いいから早く仕事に戻れ!」
理不尽極まりないが、自分の仕事に戻る
「あ、これやっといて」
「は?」
自席に戻ると、他の同僚が仕事を押し付けてきた
「今日どうしても外せない用事があって…」
「…また合コンとかでしょ?」
「良いじゃん、どうせ暇でしょ?」
言い合いをしても埒が明かない
ため息交じりでその仕事も引き受ける事になる
これもいつもの事
・・・
もう退社時間を過ぎるが、まだ仕事が終わらないから残業をする
「おい!タイムカードきっとけ!」
うるさい上司はサービス残業を強要する
断ればクビをちらつかせるのだから、たまったものではない
「…わかりました」
威張り散らしながら帰っていく上司に、後に続く同僚等
ガランとした職場で一人、黙々と仕事を片付けていく中、ふと思う
―――なんで生きてるんだろう
最近増えてきた、その想い
生きていても辛いだけだし、自分の人生とやらもなんの輝きもなければ自分が主人公になる事は出来ない
それなのに、懸命に生きるフリをしてただただ誰かに搾取されるのに意味があるのか?
いや、それが意味なのだとしたら、そのために生きたいのか?
「…くっだらねぇ」
そう言いながら職場を後にし、屋上の方に向かう
衝動的自殺、とか新聞には書かれるんだろう
死んだ後は両親とかに迷惑がかかるらしいけど、どうでも良い
「俺に…意味なんてないんだろ?だったら…生きてても死んでもかわんねーじゃん」
そう言いながら、屋上の扉を開ける
―――夕日が落ちそうなのが見え、とても綺麗だ
「最後に位は華を飾ってくれる、ってか?」
そう自虐的に笑いながら、俺はフェンスに近づく
そのフェンスを越えた先には、人生の終着点がある
そう思うと、なぜか高揚し始めた
「そうさ、どうせ意味がないんだ…とっとと死んじまおう」
そう思いながら上ろうとした、その時だった
「死んじゃう位なら、最後の時間を私に下さらない?」
後ろからの声に驚き、振り返る
そこには―――絶世の美女がいた
白く伸びたその髪は絹のようで
出るところは出てて
引き締まってるところは引き締まってて
顔立ちも可愛らしいながらも美しい
服装はタートルネックだかの白のセーターと白のスカート、とは言っても正確な言い方までは知らない
だが、奇妙なのはその眼だ
カラーコンタクトでも入れてるのか、紅い
そんな彼女がクスクスと笑いながら俺に近づく
「こんばんは、そして…貴方の時間を私に下さるのかしら?」
そう言いながら笑っている彼女を見ていて、俺は寒気がした
―――そして気付く
先ほどまで自分しかいない筈だった屋上、しかも扉は閉まっている
そして屋上には誰かが隠れるスペースはない
「あんた…一体…?」
つまり彼女はどこから来たのだ?
「…40点」
「…は?」
いきなり点数を言う彼女に、俺は素に戻る
「もう〜折角雰囲気作ってみたのに〜!もうちょっと言う事あるじゃないですか!?」
「…は?」
いきなり子供っぽく俺に言い始める彼女
―――同一人物とは思えない
「がんばってホラーチックとか目指してみたのに、なんでもっと驚いたりしてくれないんですか!?」
「いや、思考追い付かないんだけど…」
「もっとこう驚いてくれたり怖がったりとかあるじゃないですか!?なんていうか表情の変化あんまりないとへこみますよ!」
「表情が変わらないのは元からなんだ…って」
理不尽に怒る彼女から、羽とか尻尾とか角が少しずつ見え始めてきた
「もう!…って、どうしたんですか?」
キョトンとする彼女を見ながら、俺は意識を手放した
・・・
「ハッ!?」
眼を開けると、彼女の顔が
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