―――そこは、果ての無い砂漠にポツリとあった
廃墟のようにただそこにあるだけで、整備されてはいない遺跡
砂嵐を凌ぐのに丁度良さそうなそこを見つけた僕は、もう殆ど力の入らない身体にムチ打ってそこへ行く
「ハァ…ハァ…」
視界が霞む
あそこに着いたら、恐らくそのまま倒れるだろう
「―――ッ!?」
が、どうやら…身体の方が先に限界が来たようだ
目の前に迫る砂―――僕はそのまま倒れていく
最後に、何か、きこ…え…
・・・
『さぁ!この異教徒たちを殺すのです!』
そんな事したくない…
『異教徒は生き物ではありません!滅すべき悪なのです!』
嫌だ…
『さぁ、貴方も誇りある責務を果たすのです!』
辞めてくれ…
『さぁ、さぁ!―――よ!』
もう…
『殺 す の で す !』
「やめてくれえぇぇぇぇぇぇ!」
「きゃあっ!」
また、あの悪夢だ
息を荒くしながら、身体を起こした僕は体の震えを抑える
―――もう、あんな夢見たくない
もう…僕は―――
「どうしたの姉さん!」
その言葉と共に、バタバタと何人かが入ってくる
「お姉ちゃん!」
「「おねーちゃん!」」
そこには―――
「みんな!うぅん…ちょっと驚いただけだから大丈夫よ」
金色の外皮を付けた―――
「あ、起きたんだ!」
「「ニンゲンさん起きた―!」」
魔物が、そこにいた
・・・
「助けて頂き、ありがとうございます」
ベットから半身だけ起こして、彼女たちに礼を言う
「いえ…困っていたらお互い様ですよ」
僕の近くにいたらしい―――5人の中では多分一番年上―――の彼女が言う
「そうそう!困ったら助けたり助けられたりだよ!」
そう言いながら、彼女たちはベットの近くに集まる
「いえ…生き倒れになりそうな所を助けて頂いたのですから、きちんとお礼を…」
「「だったらニンゲンさん!」」
僕がしゃべっている最中に、一番年下の二人がしゃべる
容姿も鏡合わせのようで、息もぴったりだから、恐らく双子なのだろう
「「あたし達のおーさまになってよ!」」
「え?」
彼女たちは無邪気に言う
「!?貴方達!何を頼んでるの!?」
「「だってニンゲンさんがお礼って言うんだよー!」」
ねー!と、二人で一緒に言う彼女達
「ボクも賛成かな〜?」
と下の二人よりは年齢が上の彼女―――三女だろうか?―――も言う
「でも、彼の意見も聞かないと…」
「お姉ちゃんのいう事も分かるけど、ボクはこの人にお願いしたいな〜」
そう言いながら、僕に近づく彼女
「おにーさんにも、悪くない話だと思うしぃ〜」
「まちなさい、全く」
と、恐らく次女の彼女が三女の彼女の首根っこを掴む
「むぅ〜なにするのさ!」
「貴方の気持ちもよぉ〜くわかるけど、姉さんの言ってることも考えなさい」
それに、と彼女は続ける
「彼だって、困惑してるでしょ?」
「「「あっ…」」」
双子と三女はバツが悪そうな顔をする
「ごめんなさいね…私たちケプリにとって、王が来てくれるのは最上の至福だから」
どう反応して良いのか困惑していると、次女の彼女が言ってくれる
「王?」
「…ここはかつて、ファラオがいた遺跡でした」
長女の彼女が、ポツリと語り始める
「ファラオがなぜ去ったのか、私たちにはわかりません…。けど、私たちケプリ以外誰もいない、この遺跡で暮らしています」
「…それはなぜ?」
僕は疑問に思い、彼女たちに聞く
「王の…国の再来の為」
そう言う彼女の、いや、彼女『達』の目は真剣だった
「今は廃墟でも、また復活させたい」
「だからボク達はここで王と成り得る人をまってるんだ」
「「そうやって、ずっとまってたの!」」
他の姉妹たちも喋り始める
「そうして待って、待って…貴方が来られました」
長女の人が、僕の手を握りながら言う
「旅の方、貴方がもしここに居て下さるのなら…私たちを導く王になってはいただけないでしょうか?」
彼女達の真剣さにおされてしまう
「…ごめん」
彼女達は、残念そうに…いや、絶望したような表情を浮かべる
「僕なんかが…なっちゃ…いけないから…」
彼女達をガッカリさせたのは苦しい
けど、僕にそんな資格はない
僕が、誰かと居てはいけない
ましてや、彼女達と―――穢れた僕は居てはならない
「直ぐに出てくよ、ありがとう」
そう言って、立ち上がろうとした時だった
―――ズキン!
体が痛む
体中が痛み、その場にうずくまる
「っ!」
声を押し殺して、痛みに耐える
「だ、大丈夫ですか!?」
「ち、ちょっと!?」
「わわっ!」
「「た、たいへんだー!」」
彼女達は心配そうにしながら、近付いてくる
「だ、大丈夫
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