―――そう、この出会いは奇跡だったんだ
何度思い返してみても、私はそう思うんだ
それこそ、魔王様や堕落神様が起こしてくれたと言われても、私は信じる
それ位、私にとって大切な出会いだったんだから
・・・
その日、私は日課であった散歩をしていた
散歩、というには御幣があるかもしれない
なぜなら私はハーピーで、空を飛んでいるのだ
散歩より、散空の方があってるかもしれない
そんな事を考えながら、ある川を通った時だった
「ん?」
川辺に、人が倒れている
寝ているだけかも知れないが、なんとなく私は気になって近づいてみる
―――やっぱり、人が倒れていた
しかも…
「この服、教団の…だよね?」
誰もいないのに聞くように一人事を言う
教団の胸当てと長いコートみたいな服
だがそれよりも特徴的なのは―――
左手に持つ、弓だった
彼の左手に直接付いているような固定のされ方をしているその弓は、普通の弓より大きい
遠くまで射れるようにしたのではないかと思えるその弓は、なぜか弦が見られない
なにより、彼は矢筒も持ってないのだ
「あの〜…もしも〜し、大丈夫、ですか〜?」
少し小さめの声で彼に呼びかけてみるも、返事はない
顔を近づけてみるが―――起きる気配もない
「…ぅ…」
うめき声にも似たその声を聞いて、私は―――
気が付いたら、彼を持ち上げて飛んでいた
・・・
「…で、正体も解らないのに連れて来てしまった、と」
「うん…その…」
倒れていた彼を連れて帰った私に待っていたのは、父を含む、里の大人たちからのお説教だった
―――そりゃそうだろう
教団に見つからないように山の奥のほうに暮らしていた私達
そこに教団の兵が倒れていたからって連れてくるのは危険である
「彼は確かに衰弱しているが…おとりに使われていたらどうするんだ?」
父は厳しく私に言う
「元々親魔物領の人間を使う事ぐらい教団は平気でしてくる。常に警戒しないといけないんだぞ?」
「で、でも…倒れてて苦しそうだったんだよ!?見捨ててなんて…」
私が言おうとしている事も、大人達はわかっている
わかっているからこそ、父も余計に厳しいのだろう
「…まぁ過ぎた事だし良いじゃないかカタギリさんよぉ」
と、大人の一人が父に言う
「しかしここは「カグヤちゃんは軽率だったかも知れねぇが、人を助けたんだ。そこはきちんと褒めてやらんと、な?」
そう言われると父は黙ってしまう
「それに」
近所のラミアのお姉さんが言う
「彼が教団の兵で私たちのことを悪く思っていても、誤解を解くチャンスにすれば良いしね。私と彼のラブラブっぷりを見せたらきっと誤解とわかるわ!」
そう言ったのを聞いて、回りは笑い始める
「カタギリさんだって、教団から追われてた身だけど、ここにはそんな経緯で来たんだし…」
「だからこそ、不安になるのですよ」
父は言う
「私もかつては教団に縁ある身…彼とは立場は違うかもしれませんが…」
それに、と言葉を続ける
「私の時のように、また皆様に迷惑をかけてしまうかと思うと不安が「あれはカタギリさんのせいじゃねぇよ」
と、別の人が言葉を遮る
「あれはカタギリさんをダシにして俺らを攻めたかっただけなんだから…そんなに自分を責めなさんな」
その言葉の後、重い空気が流れる
「ま、なんにしても―――」
今まで喋らなかった長老が言う
「カグヤちゃん、今後は誰かを見つけたら、まずは大人に知らせる事。良いね?」
「はい…」
「後は…彼が眼を覚ますのを待つとしよう。…ワシとしては、彼がそのままこの里に居ついてくれたらとは思うんじゃがね」
そう言って、その場は解散となった
「カグヤ」
父が私を呼ぶ
「あの場では厳しく言ったが…私もお前が何より人助けを優先した事を誇りに思っているよ」
そう言いながら頭を撫でてくれた
「…うん!ありがとうお父さん!」
「さて、帰ろうか」
その言葉と一緒に、私は父と家に帰った
・・・
家について最初に心配したのは、彼の事だった
―――もし彼が悪い人で、お母さんに危害を加えてたら
―――もし思い切り嫌われてたら
そんな不安の中、家に帰ってきた
「あら〜、お帰りなさい二人とも」
そう言いながら、母は直ぐに父に抱きつく
「今帰ったよウィルダ」
「お帰りなさいあなたぁ」
そう言いながらイチャイチャしているその姿は、父の先ほどまでの厳格さをなくしているようにも感じる
「あ、カグヤ。あの子まだ起きないわ…少し心配だわ」
「そっか…ごめんねお母さん」
「良いのよ〜。私も昔は同じことをセイジにしたわね〜。あの時は傷だらけだったこの人に付きっ切りで…」
「ウィルダその話をするのかい?」
そんな
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