私、マリー=リヴァイエールは不満がある
「お兄ちゃん」
「んあ?どーした、マリー」
「一緒にお風呂入ろっ♪」
「一人で入れんだろ」
兄のアクアスについてだ
はっきり言って―――
「お兄ちゃんに成長を見てもらいたいなぁ〜」
「女の子がそんな簡単に男に肌を見せるんじゃありません」
ニブチンにも、程がある
・・・
「はぁ〜…」
私は溜息をつきながら、食堂の掃除をする
―――アクアスと暮らし始めてから、私は食堂の手伝いをしながら勉学を学んでいる
最初は食堂の手伝いだけで良かったのだが、アクアスが将来に必要だからと、学校にも通わせてくれている
学校自体も、常に通う義務的なものより、自分の興味ある分野を学んでいく事の出来る方法だから、食堂の手伝いと両立も出来ている
「はぁ〜…」
本日二度目の溜息を吐く
溜息の理由は、アクアスだ
彼にいくらアプローチをしても、自分を妹としか見てくれない
嬉しくもあるが、同時に悔しい
―――彼を振り向かせて、自分のものにしたい
魔物としての本能が、私にそう告げるのだ
「一体どうしたんだ、マリー」
と、声を掛けてくれたのは、アマゾネスのマリアさんだった
彼女はアクアスと同じ元勇者で、今は素敵な旦那さんと結婚している
けど、教団の攻撃もまだ続いている為、彼女は戦場で戦っているのだ
―――全ては、自分の夫のため
そう言いながら、昼夜問わず戦うことの出来る彼女は、同性の私から見てもカッコいい
「いえ、ちょっと…」
「…アクアスだな」
昨日は夜勤だったらしく、家に帰らず朝食をここで済ませようとしたマリアさんに、私の心境を見抜かれてしまう
「…どうしてわかったんですか?」
「なんとなく、としか言いようがない。…フィジルのようにうまく言葉に出来ないな…」
そう言いながら、頼んだコーヒーを飲み干すマリアさん
「まぁ、お兄ちゃんのこと、なんですよね…」
「…あいつも色々抱えてるからな」
そう言って、コーヒーのおかわりをしながら、私に話してくれる
「あいつ自体、なんだかんだ言って頑固で責任感も強い…らしい」
「らしいって…」
「フィジルが前にアクアスにあった時にそう感じたんだそうだ」
二杯目のコーヒーと、一緒に頼んだパンを食べながら、マリアさんは続ける
「まぁ…マリーの事を心配し過ぎてる所は、同僚の私から見てもあるな」
「そう、なんですか?」
「何回か、君に言い寄ってる男の身辺調査をしようとしてホープに止められていたからな」
その事を聞いて、嬉しい二割、恥ずかしい八割な、ものすっごくなんとも言いがたい感情を感じた
「は、ハハハ…」
苦笑いしかでないとはこの事だろう
「まぁ、君の事を大切に思っているのは間違いないな。…どういう感情かはしらんが」
そう言いながら、代金を私に渡して立ち上がる
「そろそろフィジルも詩を書き終わってるだろうから、帰らせてもらうよ。…フィジル、待っていろよ…」
「ありがとうございました!」
少し不穏な笑い方をしながら帰るマリアさんを見送りながら、私は店内の掃除を続けた
・・・
「アクアス、最近はどうですか?」
「んあ?」
報告書をまとめながら、ホープが俺に話しかけてくる
「どうもこうもねーよ…教団の連中の動きも相変わらずだし、マリーに近づく連中も相変わらずだし」
そう言いながら、俺は報告書に目を戻す
「なんていうか…相変わらずだね」
そう言いながら苦笑するこの男からは、不思議と疲れを感じない
誰よりも戦場に出て、誰よりも人を助ける
ホープが選んだ、みんなが共存する為の仕事
だが、それがどれだけしんどいか、どれだけ体に負担がかかってるか―――
わかりきってる事だ
「お前こそ、相変わらず仕事ばっかじゃねーかよ、ちったぁ休めよ」
「休んでなんかいれないよ、リリスだって頑張ってるんだし」
そう言いながら、こいつは笑う
―――こいつは、自分を救ってくれた黒勇者に褒めてもらいたい
その一心で、がむしゃらに頑張りすぎている
「そのリリス様から、お前が働きすぎだから休めって指示書がきてんだよ」
「え!?ウソだろ!?」
もちろんウソだが、リートさんに口裏合わせてもらい、指示書を偽装してもらった
こうでもしないと休まない我等が領主様と、その旦那様の為なら、多少の偽装は許してもらいたい
「これが指示書な…報告書とかは俺が作っとくから、ホープは休めよ」
「なんか…ごめん」
「そう思うなら、ちっとは休むか他の奴にやらせる事を覚えろ」
そう言って、俺はホープを返したところで、伝書鳩を飛ばす
リートさんに、口裏合わせをしてもらう為だ
「さってと…書類作るのが一段落したら、マリーのところいって昼にすっ
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