私の約束

―――古来より、私は恐れられていた

他の種族よりも優れた知能と力
圧倒的なまでの魔力、破壊

地上の王者と呼ばれた我々ドラゴン
その中でも、私は特に恐れられていた

恐れられ、崇められ、そして…退屈だった
対決できる人間もいなく、力だけを持て余らせていた


魔王交代の、あの日までは


魔王の交代により、私は脆弱な姿と、人間に対して力を振るえない『呪い』を受けてしまった

が、それでも―――

私は退屈で、孤独だった

・・・


「ば、バケモノめぇ!」

人間のオスが剣を振り上げ、私に切りかかってくる
あまりに遅く、あまりに弱いその剣は、私の手に受け止められ、少し力を入れただけで砕け散った

「こんな物なのか?」

溜息を交えながら、そのオスに言う

「大方、私の宝を奪いに来たんだろ?そのくせその程度の力なのか、人間?」

恐怖に支配され、もはや動けないでいるようだ
まぁ―――

「木偶を何人揃えても、全く意味がないぞ」

30人全員を同じように倒したのだから、仕方ないか

「一回しか言わん…失せろ」

その言葉に、オスどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった
―――あっけない

あまりに脆弱
あまりに腑抜け

そんな脆弱な生き物と共に生きようとする現魔王は何を考えているのだろうか

そんな事を考えながら、後ろから斬りかかろうとする殺気に応戦してやった

「ぐあっ!」

「失せろ、と言った筈だが?」

尻尾で一撃をくれてやり、振り返った先には―――

「…まだ子供の癖に、なにをしているんだ?」

まだオスになりきれていない人間が転がっていた

「う…うるさ…い…」

剣を杖代わりに、なんとか立ち上がる

「他の木偶どもは帰ったんだ。一人でなにも出来んだろ?」

「だ…まれ…ま…魔物が…」

その眼には、他の連中と違い、闘志が死んでいなかった

―――トクン

その眼をみて、私は一瞬止まる

憎しみと重圧、責任感や使命感
これらの感情が入り混じったその眼差しは、私の胸を高鳴らせるのには十分な物だった

―――久しぶりに、骨がある奴が来たようだ

このような強者の原石、現魔王になってから見ていなかった為、久々に心が躍りそうになっていた

「…その傷で、私に敵うとでも?」

「関係…ない!俺は…忘れ…て…ないぞ!」

無理して剣を構え、続ける

「俺の…故郷を…滅ぼした貴様を!!」

「…は?」

「もん…ど…う、むよう!」

そのまま剣を担ぐようにしながら突進をしてくるその姿は、久しぶりに感じる戦いの感覚を消し去るには十分な、しかししっかりとした戦闘の意思だけは見られる物だった

「…弱い」

そう言いながら、私は彼の剣を止める

「ぐ…うぅ…」

「さっきの連中の何人かを庇ったのは貴様だろ?そんな満身創痍で私に敵うと思うのか?」

先ほどの木偶どもの何人かの攻撃を、代わりに防御したり、変わりに受けていた者がいる事は気づいていた
一番強かったそれが誰なのかまで気にも留めなかったが…

「…せめてその傷を癒してから戦え。そうしてからなら、戦ってやる」

そう言って、彼を突き飛ばし気絶させる
彼は一撃で倒れてしまったが、それでも剣は放さないでいた

「ほぅ…」

その状況をみて、私は―――

「久しぶりに、楽しませてくれるかな?」

宝物庫にある治療薬を取りにいく事を考えていた

・・・

「う…うぅん…」

「眼が覚めたか?」

うっすらと眼を開け始めた彼に、私は声を掛ける
掛けた瞬間、警戒を強め剣を取ろうとしたが―――

「つっ!?」

怪我により、持てなかった

「その怪我ではまともに剣が振れんだろうよ。…これを飲め」

そういって、宝物庫で一番質がよかった治療薬を投げてやる

「…魔物の施しなんかいらない」

そう言って、私に突っ返してくる

「人間、恩は受けておいたほうが身のためだぞ」

私が軽く脅しても…

「お前なんかの施しなんか受けない」

逆に殺気を返してくる

―――何という気高さ
―――何という驕り

そんな感情が同時に沸き、久々に愉快になった

「…なにが可笑しいんだ、魔物」

「いや…貴様みたいな人間を見るのが久々でな」

クツクツと浮かび上がってくるこの感情は、中々止められず、私を支配する

「最近は貴様みたいな純粋な戦士を見てなくてな…財宝に眼がくらんだバカ共しか見てないから嬉しいんだよ」

そう言いながら、彼を寝かせているベットに座る

「一つ、聞いていいか?」

彼は無言のままだ

「お前の年齢は、何歳だ?」

「…聞いてどうする」

彼は私を睨み付けながら聞く

「私が村や街、都市を滅ぼしたのは…最後が300年前くらいだからな。貴様がそんな長寿に見えないんだよ」

私は正直に答える

―――最
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