「う、うぅん…」
眼が覚めたら、知らない場所にいた
ここがどこであるとかより先に、僕はある人を探した
が、直ぐ横にいた
「すぅ…」
僕が寝かせられたベットの横で、綺麗で可愛い寝顔をしている彼女がそこにはいた
彼女を見て、僕はホッとしていた
ここは恐らく、彼女のいる場所なのだろう
それだけ解れば、僕には十分だった
「ん…おはよう…」
眼をこすりながら、彼女が挨拶をする
「おはようございます、黒勇者」
「…そんな他人行儀にしなくても」
「そうは言っても、僕は貴女の名前を覚えてませんでしたから」
恥ずかしい話、僕は彼女を黒勇者としてしか見ていなかった
「リリス」
少し不機嫌そうに彼女は言う
「リリス=ファストサルドよ」
「僕は…」
名乗ろうとするが、名前が出てこなかった
―――これが、代償なんだろう
「魔法に名前をつけると、その魔法の固有名詞になるから、たとえ元々自分の名前でも、必要ないときには言えなくなるのよ」
リリスが説明してくれた
「だから、君の名前は今は無いの…」
「リリスさんが悲しむことじゃありませんよ。僕にあの名前は、もう…」
気まずい沈黙が当たりを包む
「もし…」
リリスが、僕に提案をする
「もし良かったら、名前送ってもいいかな?」
「…どんな名前ですか?」
彼女は花のように笑い、その名前を言う
「ホープ。ホープ=レイ=ファストサルド」
「…僕は希望なんかじゃ…」
「少なくても、君は私の希望よ」
そのまぶしい笑顔で、彼女は僕を呼ぶ
「君はホープだよ。よろしくね」
「…こちらこそ、よろしくお願いしますね。リリス」
〜〜〜
こうして、白と黒が交わり、本当の意味で平穏が訪れようとしていた
しかし、二人は、まだやることが残っていると言い、様々な救済をしていく
二人をみて、一部の親魔物領の者達はこの異名を送ったそうだ
真実の導き手、<TruthVanguard(トゥルースヴァンガード)>と…
〜〜〜
それからの事を少しだけ
フォーエンバッハさんとエリスさんは、フォーエンバッハさんの弟さんと無事出会えたとの事だ
弟さんは、現在ジパングで魔物の奥さんと仲良く暮しているとか
アクアスはマリーちゃんを引き取り、嫁に行くまで育てるといっているが…
正直、彼の方が尻ににしかれている
ブラドさんやアッシュさんも相手が見つかり、今では平穏な暮らしを手にしているとか
No.11は相変わらず魔物には心を閉ざしているが、なぜかリートさんにだけはなついているとか
良く解らないが、魔物嫌いが回復すると良いが…
大司教についてはどうなったのかは聞いていない
噂では、自殺したと言われているが、実際のところはわからない
僕は、あれから少しだけ変わった
何が変わったのかといえば…
戦う理由が変わった
今までは、相手を護る「だけ」だったが、今では自分も護るようにしている
無事に帰ったら、リリスが笑顔で迎えてくれるのだから、僕には死活問題だ
けど、まだ教団は魔物を敵対視している
この誤解を解くのも含めて…
僕はリリスと共に歩んでいこうと思っている
彼女は…僕の希望だから
fin
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