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教団が攻められる少し前…
「なぁ…俺たちにも、なにか出来ないか?」
それは、カリムが発した言葉だった
「…ない」
リリスの右腕であるリートははっきり言い切る
「悪いが、貴様らに対して不信感しかない。…リリス様と違って、私は優しくないからな」
彼女が言うのは、尤もでもある
カリム率いる第七自由騎士団は、元は教団の兵なのだ
疑われて当然である
「それに…気持ちがわからんでもないが、リリス様への無礼を許すつもりはない」
また、彼女にとって主のリリスへの態度が許されないのも当然
幼少から仕え、親友とも家族とも言える己が主に無礼を働かれて
―――頭では許せても、気持ちで許せなかったのだ
「…アンタが心配するのと同じくらい、俺達も大将を心配してる」
が、カリムも引き下がれない
ここで下がれば、確かに危険はない
無いが、No.93を―――自分が助けたいと心から願う少年を助ける手助けをしないのは、彼の騎士道が許せないのだ
「アンタには無礼を承知で頼みたい。この通りだ」
「…貴様、騎士の誇りはないのか?」
リートが見た姿、それは座り込み、頭だけでなく体も地面につけて頼み込むカリムの姿だった
「んなもん、大将を助ける手助けが出来るならいくらでも捨ててやるさ。…元は一度捨てたようなもんだ」
それを聞き、リートは―――
「…わかったよ。私の負けだな」
ため息混じりに、少し笑いながら言った
「だが、貴様らが死んだり怪我をするとリリス様が悲しむ。だから後ろで―――」
「んなことその人が出来るわけねーだろリートさんよ」
その声を聞き、カリムはハッとした
その声は―――
「俺と、アッシュの旦那、後ブラドの旦那が出るってよ」
アクアス=リヴァイエール、かつてNo.17と呼ばれた白勇者の声だった
「アンタ、生きて・・・!!」
「まぁ…俺に生きる希望をくれた奴がいて、さ…」
照れくさそうにしながら、彼は言う
「アンタが会いたいと思ってる白勇者も、もう一人いるぜ?」
その声の後、アクアスの後ろから現れたのは―――
「アッシュ=ガルダード!」
No.30と言われ、本当の騎士とまで言われた、アッシュ=ガルダードと―――
「お初おめにかかる。我輩、ブラド=ストレイと言う。…元No.96といわれた吸血鬼もどきである」
No.96と言われた白勇者だった
「なんであんたら!?」
「俺とアッシュの旦那はキューのため。あいつが不幸で俺がそこそこ幸せとかおかしーだろ?」
アッシュは首を縦にふる
「我輩は黒勇者への恩返しの為だよ」
リート以外の全員が疑問がる
「我輩は教団の実験で、定期的に血を吸わないと体が枯れて死ぬ。そんな我輩に、愛する妻が出来た。…黒勇者のお陰でな」
そう言いながら、首にかけた指輪をみせ、改めて言う
「だが、我輩にお節介をかいた彼女にはまだ伴侶がいないではないか。よって、我輩も彼女にお節介を掛けに行く。」
ここでは言わないが、彼は心の中で思う
―――それに、あの小僧にこそ、幸せが似合うだろう
―――あの小僧は気付いていないが
―――あやつもまた、ここにいる者達の希望なのだ
「あんたら…俺もつれていってくれへんか!?」
と、ジパング訛りの男が声を出し、志願した
「あそこにいる双子の白勇者、俺の大切な人なんや!!」
「あんたは?」
カリムが聞くと、男は答えた
かつて双子の女白勇者の世話をしていた時、その二人の事を愛してしまったこと
その二人とも、三人で恋仲になったこと
そして、二人の幸せを教団によって壊されたこと
「あいつらは…あの二人が絶望したほうが扱いやすいからって、俺を殺そうとして…あの二人を助けられんやったら、俺はなにもいらん。命だってすてたる。やから!」
「それじゃあダメだろ、リートさん」
「あぁ、ダメだな」
カリムとリートは答える
「俺たちは『生きて』帰るつもりだ」
「貴公にその覚悟あるなら…ご同行願おう」
男は、泣きながら言う
「…あんさんら、おおきに」
その後も魔物、人問わず白勇者、黒勇者、二人を助けるために沢山の人間が集まった
後の歴史に語られることになる事を誰も知らない
この人魔混同の部隊、勇者たちを救う為に作られた部隊
これが、今でも続く由緒正しき、国境無き騎士団の始まりだと―――
ただ、この時から、変わらない事が一つだけあった
それは―――
「やろうども!!大将を『救出』するぞ!」
「全軍!リリス様の『助け』になるぞ!!」
救い、救出の為に動く
その理念だけは、代わらない
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