再交戦、救えなかった命、救済の誓い

リザードマンから話を聞いた私は、全力で移動する

教団の連中が、魔物の子供をさらってやることなんて、予想はついている

―――恐らく、生体実験だろう

先程の白勇者や新しい兵器の開発の実験に使われたり、最悪…

その不快な考えを振り払い、私は再び羽を羽ばたかせる

―――一刻の猶予も、存在し得なかった

・・・

一人先行した私を待ち構えていたのは、二人の白勇者だった

「また、貴女ですか」

一人は先程対峙した少年―――まだ幼さも残るその顔に、似合わない憎悪の仮面をつけ、無理やり戦おうとする、傷ついた魂が見え隠れする

「キュー…。こいつは大物じゃんかよ」

もう一人は彼より年上なのが解る以外、ある意味奇妙な見かけだった

二人とも、白勇者と名乗るだけあってか、白いマントを肩にかけ、白い隊服に、軽装鎧をしているが…

先程対峙した少年―――93と名乗っていたか―――は、板やギロチンを髣髴とさせる大剣を

もう一人は、腰に何か筒のような物を四つ付けていた
―――いや、あれは水筒か?

「こいつ、リリムじゃねーかよ…」

もう一人が、私の種族を言い当てる

「…なるほど。道理で強い個体な訳ですね」

彼も、剣を構える

「…俺がせめっから、フォロー頼んだぜ」

「解りました、No.17」

17といわれた青年は、一歩前に出て、私に言う

「魔王の娘が、一体何のようだよ!?」

彼は無理やり粗暴な言い方をしている様な、少し滑稽な言い方で私に聞いてきた

「貴方達が誘拐した魔物の子供を、親の元に連れ戻しに来たわ」

「…あ?」

瞬間―――彼から冷たい冷気が漂い始める

「…自分らは誘拐しまくるくせに…人間様に楯突こうってのかよ」

そこに居るのは、悪鬼

そうとしか言いようの無い位、憎しみが溢れ出していた

「No.17…WaterCreator(ウォータークリエイター)」

―――絶望しながら、俺を恨んで死ね

新しい戦闘の、始まりの合図だった

・・・

「オラァ!!」

彼が水筒から水をぶちまけると、中から無数の剣が出てきた

すかさず転移魔法で逃げるが

「逃がしませんよ」

逃げた先には、93と名乗った少年が

「クッ!?」

彼の剣に掠りそうになりながら、私はまた避ける

「あめぇんだよ!!」

と、先程の青年の水が変化し―――

「いくらなんでも…反則過ぎるでしょ」

一匹の生き物を作り出していた

「WaterCreat…Creatofsummon!(クリエイトオブサモン)」

彼が言い終わると、蛇のような、ドラゴンのような―――
なんと言っていいのか、解らない生物を作り出していた

「食らい尽くせ!リヴァイアサン!!」

彼が作り出したそれは、まるで意思を持つかのように私に食い付こうとする

無言で攻めてくるそれは、恐怖の根源の様でもあった

それの攻撃を辛うじてよけるが…

「そいやっ!」
「セイッ!!」

水で作られただろう剣と、ギロチンを髣髴とさせる剣の二重奏が待ち構えている

私は何とか避けるが、何時まで持つかわからない

なにより辛いのが―――
この二人の、コンビネーションだ

片方が攻め、片方が守り―――

先程私が上手くいったのは、正に17と言う人物が居なかったお陰なのだろう

…実際、あのまま続けていたら、恐らく私も危なかったのだから

93には攻め手がない分、他が攻めてしまえば欠点は無くなる
正に、最強のコンビネーションだろう


―――最も、この程度の困難を超えられないのなら、他のお姉さまや、これから生まれてくる妹達に面目が立たない

私はリリム

魔王の娘、リリス=ファストサルドなのだ

「…これ位で、根をあげられないわ!」

私は魔力を纏っただけの魔力弾を撃ち、なんとか応戦する

前は4発だったが、今回必要なのは物量だ
とにかく、小さくても大量の弾を撃ち放つ

「だから…無駄ですって」

が、それを全て打ち返されてしまう

「…知ってるわ。寧ろ、それが狙いだもの」

―――そう言いながら、17と名乗った青年の首筋に、剣を当てた

・・・

まるで、時間が止まったかのような静寂だった

「…なるほど。キューを翻弄して、魔物を逃がしたのもその転移魔術だな」

その静寂を破ったのは、剣を突きつけられている本人

「動かないで。…死にたくなければ、そのままよ」

93と名乗った少年―――キューと呼ばれているが―――も、彼を人質に取られ、動けずに居た

「…てめぇ、勘違いしてないか?」

「え?」

剣を首筋に当てられているのに、彼は強気に言う

「確かに、キューは俺の命を大事にしてくれているが―――俺まで、そうだなんて…」

誰が決めた?

―――彼が言い終わる瞬間、水で出来た怪物は動き始める

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