―――人生とは、驚きの連続である
そう誰かが言っていた
―――例えば、偶然自分の書いた作品が注目されたり
―――例えば、街中でスカウトされて芸能人の仲間入り
あげればキリが無いだろう
だが、恐らく自分以上に驚く体験をする人間は居ないと断言しよう
「…ここは、どこなんだ?」
―――目の前に、ケンタウロスの女性が居るなんて経験、普通はしないだろうから
・・・
「で、貴様は誰だ?」
目の前のケンタウロスの女性は、どこから出したのか、短刀で俺に脅しを掛けに来ている
「あ〜…申し訳ありませんが…」
「なんだ?」
「少し落ち着く時間がほしいのと、説明とか色々な関係で中に入ってもらっても良いですか?」
俺の住んでいるアパートの階は、俺以外住んでいないから人は来ないだろうが、郵便とか押し売りとか来たら絶対面倒になると思う
なので、彼女には狭いだろうが、俺の部屋に入ってもらうことを提案した
「断る」
即答だった
実際、お互いどんな人物かわからないのだから、仕方ないだろう
「…ここだと絶対に面倒になる上に、最悪貴女の…え〜っと…」
「…貴様が名乗れば、私も名乗るぞ」
「とりあえず、自己紹介も含めて、落ち着く時間がほしいんですよ。お願いします」
とりあえず俺は頭を下げながら頼むことにした
「…わかった。が、やはりお互い名前だけ先に言わないか?…その方が安心すると思うし」
「…俺は…」
ここで正直に自分の名前を言うかどうか悩んだ
―――いやだって、実際非日常だし
「俺は、ネームレス。…レスでいいです」
「私はレイ。レス、失礼するぞ」
そういって、彼女―――レイは部屋に入っていった
・・・
「…随分散らかってるな」
レイが俺の部屋を見ての感想は、これだった
―――まぁ、本や物が乱雑に置かれていたらそりゃそうか…
「…あー、片付けの最中だったから」
する気も無い片付けの最中、ではあるが
「とりあえず紅茶でいいですか?」
レイは頷くと、近くに座る
「で、ここはどこなんだ?」
「えーっと…多分、レイさんには異世界かと」
お湯を沸かしながら、当たり障りの無い返事をする
「異世界、だと?…貴様、ふざけてるのか?」
が、どうやらレイには非常にお気に召さない意見だったようだ
「なら質問ですけど…例えば今から言う物に聞き覚えありますか?」
とりあえず、携帯電話だとかTV、世の総理などの色々な名前を挙げてみて、反応を見てみた
「…貴様の作り話ではないのか?」
「疑うのはしかたないですけど、今嘘を言って殺されたくないですから」
ティーパックを入れたカップに、お湯を注いでそのまま渡す
「熱いでしょうから、気をつけて」
レイは、そのまま受け取り、黙って飲む
「今度はこっちから質問。なんであそこに居たの?」
「…話せば長くなりそうだけど…」
そう言って、彼女は話し出した
・・・
「魔王の部屋の掃除してたらここにいたって…」
「し、仕方ないだろ!事実なんだから…」
レイから聞いた話をまとめたらこうだ
レイがいた世界には魔王様がいるらしく、その部屋の掃除をしていたら、なにかの道具を起動させてしまい、気がついたらここ―――正確にはアパートの部屋の前だが―――に居たらしい
「しっかし、どっかで聞いたことあるような魔王様だな…」
その魔王様とやらは、実験とかが得意らしいが…
と、紅茶を飲みながらふと思い出す
ケンタウロスのレイ…研究者みたいな魔王…
「その魔王様の名前って、ヴァンとか言わない?」
「!?貴様、なんで知ってる?」
「…君の友達には、リザードマンのリザって人が居て、君の旦那様の名前はアレス。間違いないよね?」
レイは驚愕した表情と、敵を見る目でこちらを見てくる
「貴様…何者だ」
「…全部、当たり…ですよね〜…」
とりあえず色々追いつかない俺の脳みそは―――仕事を放棄して、意識を失うことを選択した
・・・
「…ぃ…か…ろ!」
少しずつ意識を取り戻す俺に聞こえてきたのは
「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
レイの、心配してくれているだろう、呼びかけだった
「あ〜…。夢、じゃない、よね」
「いきなり倒れて、起きてそれはないだろ!?」
突っ込みを入れてくれているが、そこには心配してくれているだろう、かなり不安げなレイの表情があった
「…ごめん。色々常識だった物がぶっ飛んでしまっていたから」
「そ、そうか…無事ならいいんだ」
そこには、強気にしてるけど、不安に押しつぶされそうな一人の女性がいた
…こんな時、気の利いた台詞の一つでも言えたら言いのだろうが…
俺にはそんなものはない
「さっき、どこまで話したっけ?」
「…私の身の上
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