「魔物を逃がしただと!?」
任務経緯を大司教に伝えていると、その言葉を遮り、大司教は怒鳴り散らし始めた
「この役立たず!!なぜ殲滅できなかったのだ!?」
「…申し訳ありません。強力な個体がいt「言い訳をするな!!」
大司教はまたもや遮り、僕に言う。
「貴様が魔物を逃がせば逃がすほど、貴様は自分と同じ存在を生み出すのだぞ!!」
―――聞いた瞬間、僕は息が詰まりそうになった
「魔物をもっと殺せ!もっと教団のために尽くせ!!」
「…はい」
「…まぁいい」
大司教が僕に対しての発言をやめると、彼は言った
「半分は、目的を達成したのだからな」
「…なんの事ですか?」
大司教は、続けて言う
「まずは貴様の実戦投入によるデータ入手、次に―――」
まさに、神をも冒涜する言葉を、彼は続けた
「実験用の、魔物の子供だ」
「な…」
「これは有用な使い方だろう?」
大司教は得意げに続ける
「何を驚いている?…より効率よく魔物を殺せるようにするには、実験が必要だろ?」
その発言に、僕は―――
何も、言えなかった
・・・
大司教から与えられた新しい任務は、魔物の輸送だった
僕は…迷いながらも、任務に向かう
(何を躊躇うんだ?)
―――頭の中から、声が聞こえる
(魔物は悪だろ?)
―――違う
(僕達の故郷を、家族を壊したのは奴らだろ?)
―――だからって
(偽善者ヅラするなよ?僕だって本当は―――)
「黙れ!!!」
近くの木をぶん殴り、僕は我に帰る
幸い、誰も通路には居なかった
―――また、か
僕は項垂れながら思う
…人造勇者になってから、僕は憎しみが増しているのを感じていた
魔物への、憎悪の増加
おそらく人為的に、僕の精神がそういった方向へ向かっているのだと感じている
それは、No.17や、他の白勇者も一緒で…
「あんたが白勇者かい?」
不意に、後ろから声がした
振り向くと、そこには教団騎士が居た
「俺はカリム。…カリム=フェン=フォーエンバッハだ」
よろしくな、と、彼は手を伸ばしてくれた
・・・
「しっかし、両方ともまだ俺より年下じゃねーk…じゃなくて…」
「私に敬語は必要ないですよ」
騎士のフォーエンバッハさんに、僕は告げる
「実際、私のほうが年下ですし…」
「…へぇ。礼儀正しいな」
彼は苦笑しながら僕に言う
「なら、これからよろしくな」
「え?」
「俺達、第七自由騎士団があんたの部下になる騎士団だよ」
そう言うと、彼は先に歩き始める
「こっちにもう一人居るから、ついて来てくれ」
その言葉を聞き、僕は彼の後をついていく
「魔物の輸送は、本来騎士団3つ以上が居ないとできない」
フォーエンバッハさんが、説明をしてくれる
「が、騎士団一つ分に相当するらしいあんたら白勇者が二人居れば、騎士団は一つでいい」
彼が言い終るとき、目の前には懐かしい人物が立っていた
「よっ、キュー」
「…No.17」
そこには、アクアスが居てくれた
・・・
「しっかし、お前が魔物を逃がすなんてな…」
No.17―――いや、アクアスと僕は、魔物が捕らえられている馬車に向かう
「あの淫魔はかなり強力です。…正直、かなり苦戦しました」
「マジかよ…。キューが苦戦ってどんだけだよ…」
「…そのキューって、なんですか?」
「お前の呼び方」
彼はなんでそんな事を聞くんだと言わんばかりに、僕に言う
「お前、名前ないじゃん。…番号から取るのやだけど、他に言い様無いし」
そう彼と雑談をしていると、金属で出来た様な馬車が見えてきた
「魔物輸送用だって、さ。…魔物の分際で、いいもん乗れるよな」
吐き捨てるようにアクアスは言う
…中からは、少しだが声が聞こえてくる
…聞き違いであってほしい、僕の嫌いな声質だった
「中の魔物ども見とくか」
アクアスに続いて、僕は中に入る
―――扉を開けた瞬間、僕の予想は当たってしまっていた
「おかあさぁん!!」
「おうちにかえしてよぉーっ!」
「こわいよぉ!」
―――それは、魔物の子供たちの、悲鳴、泣き声だった
「おーおー、泣いてる。…いい気味だな」
「アクアス?」
横から聞こえた声に、僕は耳を疑った
彼が、そんな事を言う筈―――
「ざまぁないなぁ、魔物共がよぉ…」
そこには、ニタニタと笑いながら泣いている子供を見る、アクアスがいた
「おまえ!」
中に居る子供が、声を掛けてくる
―――見た目からして、恐らくリザードマンの子供だろう
「なんでこんな酷い事するんだ!戦士なら、もっと堂々としろ!」
「あぁ?」
その言葉に、アクアスは不快感を露にし、彼女に告げる
「魔物如きがよぉ…俺に口きいてんじゃ
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