ある一つの戦い

古今東西、争いや戦いは絶えない例えば、領土を拡大したいが為の国家間の戦争例えば、愛するものを奪われた復讐の決闘例えば、己が部族の誇りの為の抗争そして―――「へい!、チャーハンおまち!?」―――美味しい物を食べてもらう為の、時間との戦いだ・・・早朝、この時間に起きられるかでそもそもの戦いの勝敗が変わる昨日のうちに簡単な仕込みは出来たが、まだこれからやらなきゃならない仕込みもあるし、食材を買ってこないといけないだからこそ、俺はまだ日が昇らない今の時間には起きないといけないのだ「…ねみぃ」例え、眠くても「おはよーっす」「おう、ボウズ!今日は生きのいい魚や海老も入ったぞ!」朝、俺は仕入れの為に市場に行く新鮮な素材の料理を食べてもらいたいからね「たまごや玉ねぎはどうです?」「そっちもいいのが入ってるぞ!」俺は幾つかの食材を見せてもらいつつ、今日買うものを決めた「海老とたまごと玉ねぎ、後いつものください」「まいど!」さて、これから仕込み頑張りますか・・・この街では、色々な人種、魔物が住んでいる当然、色々な人種がいれば、色々な食文化がある中でも異色なのは、ジパングの米を使ううちの店だろうこの街唯一のジパング料理も食べれる定食屋、が売りだったそう、『だった』のだ「へいっ!チャーハンお待ち!」親父から受け継いだこの店は、いつの間にか、チャーハンが一番売れる店になっていた数あるメニューの中、俺が一番美味く作れるようになったのは、このチャーハンというジパングより少しこっち側にある地方料理だそして、それを一番頼んでくれてるのが「ありがとう〜」―――目の前にいる幼馴染の、オリヴェラだった「ヴェラ、今日のは出来、どうだ?」「ばっちりだよ、カー君〜」「だからカムイって呼べよ、恥ずかしい」えー、と彼女は言いながらチャーハンを食べてくれている―――そう、俺は彼女が『美味しい』と言ってくれた、このチャーハンを極めようと思っている・・・―――単刀直入に言うと、一目ぼれ、と言う奴なのだろう俺がこの街に来た時に、初めて俺の料理を食べてくれたのが、オリヴェラだったその時の笑顔が、今でも一番美しい絵だと、俺は思っているそもそも、この街に来たのは、今から10年前、―――12歳の時だった親父と旅をしながら、この街に流れ着いて、料理屋を始めた元々、俺と親父は旅人だった―――いや、寧ろ赤の他人同士だった親父は当時、ジパングのテンプラなる料理と、ソバなる料理を広めようと、旅をしていたらしいそんな時、道に転がっていたのが、俺だった―――俺は、食扶ち減らしのために、捨てられていたらしいらしい、ってのは、俺がよく覚えてないからだそんな男二人旅の中、俺は親父に料理を教わった親父は、ソバやテンプラ以外にも、様々な料理を教えてくれた中でも、俺が一番好きだったのが、チャーハンだった街で料理屋を始めるにあたって、親父は、街の人に試食をしてもらった自分の腕を確かめるため、そして、俺の料理の腕も、確かめるため親父の料理は、みんなこぞって食べていたそりゃそうだ、親父の料理は天下一品、正に芸術だと俺は思っているが、俺の料理は、誰も食べようとしてくれなかったまぁ、子供の料理だし、俺が未熟だったからだし、味も確かにいまいちだっただが、俺は正直、すごく悔しかったせめて食べてもらって、感想を言ってもらえたら、と、ずっと思っていた―――やっぱ、親父の本当の子じゃないおれには、出来ないんだそう思っていた時だった「これ、美味しい〜」目の前で、角が生えている俺と同じくらいの歳の女の子が、俺のチャーハンを食べてくれていたのだ―――俺は嬉しさがあまり、泣いてしまっていたこれが、オリヴェラとの初めての出会いで、俺の、初恋の瞬間だった・・・「美味しかった〜」オリヴェラは満足そうにお茶を飲んでいる「お粗末様でした」このひと時は、何にも変えられない、俺にとっての、至福のひと時だったオリヴェラはゆっくり食べるのが好きなので、店の混んでる時間には来ないてか、
オリヴェラの勘が良いのか、オリヴェラがいる時間に、客がいたことは殆ど無いつまり二人っきりな訳だ男として、好きな女性と一緒にいるのは、嬉しいことだ「って、そろそろ時間じゃないのか?」ふぇっ?と可愛い声を出しながら、俺をみる「商談、今日じゃなかったか?」「え?そうだったかな〜?」と、手帳で、今日の予定を確認していると―――「姉御!見つけましたぜ!」と、角が生えた活発な女の子が入ってきた―――そう、彼女はゴブリンである「あ、旦那!また姉御を甘やかしてたんですか!?気持ちは分かりますが、今日はゴブリン商会の商談があるんですよ!」と、かなりまくし立てるように言ってきてる「でも、フェイちゃん?時間まだまだ余裕が「姉御!旦那のとこでゆっくりしすぎて時間見てないでしょ!?もう15分前なんですよ!」
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