―――それは、幼い頃の夢だった『じゃあ、行ってくるな』「うん、兄さん!」兄は俺の頭を撫でてくれた『必ず魔王を倒して、平和な世界にしてやるからな』やめてくれ「兄さんならできるよ、きっと!」嘘を言わないでくれ『ハハハ、そしたらまたお前に稽古つけてやるからな』人間を―――るくせに「うん、それまでにもっと強くなってるよ!」『がんばれよ!―――』人間を、裏切るくせに、そんな風に言うなよ!・・・「おきろ」目が覚めたら、目の前にはクソ野郎が立っていた「…おはようございます」俺は機械的に返すここで何言っても仕方ないからな「…任務だ、立て」「了解」忌々しいが、こいつの指示に従う従わなければ、後が面倒だからそれに―――拘束着じゃあ、何もできないからなと、何が気に食わないのか、いきなり殴ってきやがった「いいか、貴様は罪人なんだから、それをわきまえろよ」「…了解」…ホント、忌々しい・・・兄が魔王討伐の勇者のメンバーに選ばれたのは、今から10年前だった当時俺は7歳そんな兄が、誇らしかった、尊敬していた最初の1年は手紙を何通かくれていた最後に来たときには、魔界に入ると手紙がに載っていただけだったきっと兄は魔王を倒してくれる、人類を導く救世主になってくれるそう信じていただが、それから手紙は来なかったし、噂でも兄のことを聞かなくなっていた久しぶりに聞いた兄の噂は、俺には最初理解できなかった―――西の国家を、軍隊を率いて壊滅させた、と最初は意味がわからなかっただってそうだろう?兄は勇者なんだぜ?なんで、人間を襲うんだよ出発してから2年後、兄が人類を裏切って魔王軍に協力していたそれから、俺の人生は…・・・「スケァルゥ、今回の任務を言い渡す」いつものお偉いさんが偉そうに言ってきた「近国にある異教徒、サバトの壊滅だ。できるな」仮にできなくても、俺に拒否権なんざない「了解」それに、任務中なら、この拘束着も着なくて良い体を好きに動かせる「具体的な指示は追って連絡する。直ちに現地に向かうように」そういって拘束着を外すクソ野郎この場でこいつを殴れたら、どんなに気持ちいいだろうか「今回のお駄賃、だ。もって行け」お偉いさんが、袋を投げつけてきたどうせ、元は俺の家の金の癖に、偉そうに…!?「早く家の『汚名』を晴らせるといいな」卑しい顔で、こいつらは俺を見下してきやがるクソッ!こいつら調子に乗りやがって!「言っておくが、反逆しても良いんだぞ?お前の処刑はいつでもできるんだからなぁ」…クソ野郎どもを睨み付けて、俺は部屋から出て行ったとっとと任務に取り掛かろう精々、任務中は羽を伸ばさせてもらうさ・・・元々、俺の家は貴族の家柄だったらしいらしいってのは、実感がないからだそんな家の人間が、魔物に手を貸したとなれば、末路は決まっている父は処刑され、母は俺を教団に売った尊敬していた兄は、いつしか憎悪の対称にしかならなくなったし、女性が嫌いになったのも、これが原因だろう教団に売られてからは、当時9歳だった俺からすれば、毎日が絶望だった教団では秘密裏に人体実験を行っていた例えば、筋力強化例えば、魔力増強例えば、新兵器の威力調査上げれば恐らくキリがないだろう俺みたいな境遇の人間から、犯罪者まで―――要は世間様からいらない人間扱いされた奴が殆どだった一部魔物もいたが、性欲処理に使われ、挙句新兵器の生贄にされていたみたいだ…まぁ、俺にはしったこっちゃないがね当然俺もその実験を受けた被検体の一人だ被検体は、ある程度成果を上げないと『処分』されるだから、俺は必死にこなしてきたどんな理不尽も耐えてきたどんな苦痛も耐えてきたどんな障害も乗り越えてきた全ては、ここから這い上がるために自由になるために!生きる為に!だが―――俺は結局未だに、自由になれていない・・・「では、ごゆっくりお休みください」サバトがある国へ来て、宿を取ったこの宿はゴブリンが経営してるらしい忌々しいが、ここが一番安いし、見晴らしがいいあの後俺は任務内容について、文書で渡された物を読んだ内容は至ってシンプルサバトの首謀者、バフォメットを暗殺しろとの事だシンプルすぎて泣けてくるね期限は今日から1週間以内正直、ふざけてると普通なら思うんだろうなこんな上位の魔物、単身で倒せとか、アホじゃねーか、と俺はそう思う確かに、俺ならある程度はバフォメットでも対抗できるだろうだが、あくまである程度だ普通は…―――いや、恐らく対抗できるのが俺だけなのだろう先日聞いた話だと、教団から騎士が脱走して、今も追跡中らしいしな全く、人手不足過ぎるこんな事なら、実験で人間つぶさないで、少しでも実践投入しろよそう思いながら、俺は街に出ることにした・・・街に出てから、俺は後悔していた情報収集と、観光に来たが、見たくもない光景が目に入ってくる行き交う人々の笑顔、無邪気な子供、愛し合う
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