family

これは、ある不死者の国のある家族のお話

〜〜〜

「フンフンフーン♪フンフンフーン♪フンフンフーンフーン♪」

少女がツリーに飾り付けをしている
もう直ぐくるクリスマスのための飾り付けだ

「もうすーぐ♪たのしー♪クリスーマスー♪」

少女は楽しそうに、そして、嬉しそうに飾り付けをする

「飾りつけはどうだ?」

「あ、お母さん!」

少女に声をかける一人の女性―――ヴァンパイアだ

少女は嬉しそうに駆け寄り、母親に抱きつく

「おっと…」

不意に、力が抜けたように見える母親
それもそのはずだ

少女はダンピール

ヴァンパイアと人間との間に生まれた、天性の天敵だ
しかし、女性はその少女を愛おしそうに見ながら抱きしめる

―――自分を救ってくれた愛しい彼との間に生まれたこの子が、どうして恐ろしかろう

そんな思いを込めながら、女性は我が子をより抱きしめる

「…んぅ〜」

少女はそれに喜びを感じ、より母に抱きつく
二人がひとしきり抱きしめあうのが終わると、母親は聞く

「で、飾りつけは終わったのか?」

「まだだけど…どうお母さん!綺麗でしょ!?」

「あぁ…きっとお父さんも褒めてくれるぞ」

「…うん!」

「お母さんも手伝おうか?」

「お料理は?」

「後は時間まで待つだけだから大丈夫」

そう言いながら、母親は少女の頭を撫でる
嬉しそうにはにかむ少女

「じゃあ…手伝って!」

「よし、いいぞ!」

仲良く飾り付けをする母娘

と、その時―――

「ただいまー」

玄関から声が聞こえてきた

「お父さんだ!」

大好きな父親の声が聞こえ、少女は母親と顔を見合わせる

「おっ、飾り付け綺麗だな…頑張ったな」

入ってきて、父親は言う
そして、母親と同じく頭を撫でる

「お帰り、今日は早かったんだな」

「ただいま…今日は教団の連中も空気を読んでくれたのか、こっちまでは来てないみたいだ」

その言葉と一緒に、父親は母親の頬に軽くキスをする

「!?こ、こら!子供の前だぞ!」

「この位なら挨拶だろうが。お前まだそんな初心な事言ってんのかよ」

そう言って、母親の頭を撫でる父親
魔物にしては珍しく、母親は初心な様だ

「だ、だって…」

「まぁお前はそもそも特殊だからな、しかたねぇけど」

恥ずかしそうに顔を赤らめる母親と、それを暖かい目で見る父親
―――少女が大好きないつもの両親だ

「あ、そうだ」

父親は少女に向き直り、少女に言う

「今日はな…なんとお爺ちゃんとお婆ちゃんがくるんだぞ!」

「ホント!?」

少女は嬉しそうに聞き返す

「お義父さんとお義母さん、今年は大丈夫だったんだな」

「土産に魔界豚かこの子がハンターになった時に使えそうなの持ってくるってさ」

「むぅ…私と同じように剣が良いじゃないか」

「いいや、銃のが安全かつ強力で生き延びやすいね」

そんな事を言っていると玄関から、トントン、とノックをする音が聞こえてくる

「と、噂をすれば親父とお袋だ」

「私がいく!」

そういって少女が勢いよく玄関まで向かう

「あ、飾り付け…」

「あの子と親父達にお願いしよう」

「ならあなたもお願いね」

そんな言葉を互いに言い合う両親


その頃少女は玄関まできていた
玄関には二人の男女が立っていた

一人は歴戦の戦士の風格を思わせる強面のコートの男性
もう一人は強気、勝気という言葉が似合いそうなグールだ

「おじいちゃん!おばあちゃん!」

「おぉ!おっきくなったなぁ!」

コートの男―――少女の祖父は抱き上げながら一回りする

「元気にしてたか?」

「うん!」

「ちょっと!アンタ、私もこの子を抱きしめたいんだけど!」

グールの女性―――祖母が祖父に言う
口調は少し厳し目だが、顔は笑顔だ

「良いじゃないか、お前去年沢山抱きしめたろ?」

「なら…こうよ!」

そう言いながら二人に抱きつく祖母

「きゃー♪」

「おうわっ!」

少女は嬉しそうな悲鳴をあげ、祖父は驚きの声をあげる

「全く…お前は」

口では避難するが、満更でもなさそうな祖父

「さぁおちびちゃん、ここは寒いから中に入りましょうか!」

そう言って、祖父母と少女は中に入っていく


「親父、お袋、お疲れ様」

中に入ると、父親が祖父母を歓迎する

「お義父さん、お義母さん…お久しぶりです」

「君は…相変わらず固いな」

母親が祖父母に声をかけ、祖父がそれに応対する

「これでも少しは軽くしたつもりなんですが…」

「根っからの貴族だったからねぇ、貴女」

祖母がそう言いながら母親を抱きしめる

「久しぶりね…元気にしてた?」

「えぇ…」

二人が抱き合うのは、母娘が抱き合ったときよりシンミリした雰囲気だった

「本当に…」

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