「あれ?道に迷ったかなぁ?」
友人の家からの帰り道
なれない道を通ってきたせいか、自分がどこに居るのかわからなくなっていた
「方角はこっちであってるみたいなんだけど…」
なんとなく近道だと思って通った道は、完全に遠回りであったらしく、見た事もない場所に出てきてしまった
「あっちゃあ…どうすっかな」
そんな事を言いながら、看板とかを見ながら自転車をなんとか漕いでいる、そんな時だった
「…ん?」
ふと、階段が見えた
「…神社の階段?」
横には狐の石像見たいなものもあり、ずっと上に続いていっている
「…折角のご縁だ、行って見ますか」
そう言いながら、俺は自転車を止めた
・・・
階段は果てしなく続いている
結構歩いたと思うが、まだ先が見えない
「しっかし、古びた神社っぽいなぁ…」
登っていく度、そう感じる
夜で暗いからもあるだろうが、所々がボロくなっている印象があった
「だれも来ない神社、か…」
なんとなくそういった場所に対して、なにかあるのではないかと思い、つい興奮してきてしまう
「大体はホラーなんだろうけどさ…」
一人で言葉を呟きながら、上を目指す
「いっそお狐様とかいて、キャッキャウフフな展開だったら良いんだけどなぁ…」
まぁ、現実は非情だろう
人がいないか、もしくはいてもお婆さん位のものだろう
実際妖怪だとか幽霊なんてものはいないし、いても友好的かどうかはわからない
むしろ幽霊だったらこちらに害がある可能性のほうが高い
ましてや狐は良い意味でも悪い意味でもオカルト的な話では有名な気がする
「ま、本当にヤバいなら逃げれないだろうし…頑張って登ってみますか」
そう言いながら、頂上まで登っていった
・・・
「…ホントにボロい神社だけだった」
―――期待とは裏切られる為にある
以前そんな話を聞いた気がした
登りきった所には、古く、もうボロボロな社があるだけだった
おそらく何年も前に捨てられたのだろう
そんな神社を見渡しながら、ふと、何か声が聞こえた気がした
「…?こっちか?」
まるで歌を歌っているような、祝詞を読んでいるような、不思議な音色に釣られて、俺はその方に向かっていく
そこはお堂のような物がある場所で、その中から声が聞こえてきている
「だれか隠れて歌の練習?」
そんな事を思いながら、中を覗いた
「―――え?」
中はとても神秘的な風景だった
―――ふるいお堂が月明かりに照らされ
―――中で巫女服で狐耳の女性が美しい声を奏で
―――それに合わせて、青白い火の玉のような、狐のような炎が舞っていた
「いや、え?…は?」
俺が混乱して見入っていたその時だった
「そこで何をしていますか?」
歌が中断され、炎たちも消え、彼女は俺を視線で射抜いていた
・・・
「…粗茶ですが」
「どうも…」
彼女に見つかった俺は、彼女と対峙し、気が付いたら、お茶を振舞われていた
暖かいお茶を飲みながら、彼女を見る
―――素直に綺麗だと思う
狐耳もそうだが、雰囲気から清楚さを醸し出し、ゆっくりゆれる尻尾、整った顔立ち―――美人とも可愛いとも取れる―――、さらに全身から溢れんばかりの母性というかお姉ちゃん的な雰囲気というか…
とにかく、素敵過ぎる女性なのだと思う
「こちらには、どうしてこられたのですか?」
そっと、彼女が聞く
「実は道に迷いまして…階段が見えて気になって登ってきました」
素直に答えるべきだと、俺は思った
そもそも、偽る理由はなにもない
なんとなく来たかったから来た、それ以上もそれ以下もないのだ
「そう…でしたか」
心なしか残念そうにする彼女
恐らく、参拝客や信仰者だと思ったのだろう
「まぁ…道に迷ったついでに、今後の事を神頼みしようかと思いましてね…仕事とか色々な事を」
「お仕事…ですか?」
彼女が不思議そうに聞いてきた
「えぇ、生憎現在無職でして…新しい仕事を見つけないといけない状態な上に、今後の生活も安定してほしいなと思いましてね」
情けない話ですが、と言いながら彼女に説明した
「そうでしたか…折角階段を登ってきたのにこんな…」
「い、いえ!貴女に出会えましたし!」
シュン、と耳も垂れ下がってしまって悲しそうにする彼女に、咄嗟に言う
「え?」
「貴女のような素敵な女性に出会えたのですから、きっとこれからの運気もよくなりますよ!」
―――どちらかというと、こんな素敵な体験をしたのだ、運気はなくなっているだろうが、それは言わないでおいた
「だから…また来てもいいですか?」
そう彼女に伝えた所―――
「―――ダメです」
顔を俯かせながら、そう答えられた
まぁ、俺みたいな奴が来ても迷惑―――
「ずっと一緒に
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