クローバーの間:チェシャ猫の餌食(後編)

 卓上に公開された5枚目の失点札、11失点。
 それに対して提出された、両者のカードが開かれる。

 クローバー7。
 ギャリーは……ギャリーも7!
 バッティングだ!


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【第5ゲーム終了時点の両者の失点状況】
クローバー:25失点
ギャリー:25失点

【第5ゲーム終了時点の両者の使用済手札】
クローバー
  4,5,7、10,A
ギャリー
  3,4,7、10,A

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(なっ!?)
 驚きの到来と共に、下半身、子宮とそこに至る腔道に宿る熱が明らかに大きくなる。
「ンぐぅっ!」
 背を駆け上った甘い痺れに一瞬肩を震わせる。ポーカー・フェイスの口元が緩む。
 一瞬高鳴った鼓動を押さえつけ、一つ細い息を吐く。下半身の熱や、そこから広がる甘い痺れは継続しているが、既に常態は取り戻していた。
(ここでバッティング? カマをかけてまで、極端な札に誘導したつもりでしたが……)
 これにより、両者は同点のまま折り返しに突入。
 失点の大きさ的にも、ギャリーはもっと偏った手札……KとかQとか、そうでなければ5辺りを出してくると予想していたクローバーにとって、これは殆ど想定外の事態といえた。

「どうしたクローバー。顔色が悪いぞ」
 ギャリーに指摘され、反射的に頬に手を当てる。が、すぐにカマをかけられたと気が付き、一つ咳ばらいと共に暗い瞳で睨み返す。
「いや、失礼。まさか二度も連続でバッティングするとは思わなくて。これで互いに25失点。絶頂の半分の快感を得ていることになりますね」
 わざとにこやかな笑みで応答しつつ、ギャリーの様子を探る。特に快感を感じているような様子……例えば内腿をこすり合わせて落ち着きがないとか、そういう動作は見られない。クローバーとしては、下半身から広がってくるもじもじとした切ない感覚が気になって仕方がないのだが……ギャリーにはそういう感覚は無いのだろうか。
 足にピンと力を込め、下半身の疼きを押さえ込む。クローバーは極めて冷静な様子を装いつつ、
「続けましょう。六枚目、オープンします」
次なる失点札を捲った。


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(6枚目の失点札は……9ですか)
 公開されたその札は、本来中失点帯のカード。しかし、11と12が公開済みである今、それなりに価値のあるカードである。
 あいもかわらずギャリーは即決。一方、クローバーはカードに手を掛け心に生まれた疑心と戦っていた。
(前回、前々回と二度連続でバッティング……。そして『大体分かった』。まさか、ギャリー様は本当に回答に辿り着いている?)
 存在感を増した快感が集中力を散らそうとアプローチをかけてくるが、かぶりをふってそれを振り払う。
(落ち着きなさいクローバー。もし回答に辿り着いてるならば、ギリギリで私に勝てる札……7ではなく8を出すはず。バッティングは偶然の一致と考えるのが最も自然で合理的……)
 両者、手札を提出。そしてオープン。

 クローバーはJ。
 そしてギャリーは……またもや、ギャリーもJ!
 バッティング、三連続!


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【第6ゲーム終了時点の両者の失点状況】
クローバー:34失点
ギャリー:34失点

【第6ゲーム終了時点の両者の使用済手札】
クローバー
  4,5,7、10,J,A
ギャリー
  3,4,7、10,J,A

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「んおぉお!」
 喉から驚きの声が飛び出すより早く、灼けつくような快感が神経を駆けのぼった。
 驚声は嬌声に変わり、視界が一瞬ホワイトアウトする。弾ける意識の中、疑念が確信に変わる音がした。
(違う、偶然ではない! この男、既に回答に辿り着いている! 理由は分からないが、狙ってバッティングを仕掛けてきている!)


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