(! キング!)
スペードは、ギャリーの額に掲げられたその札に内心舌打ちをした。
(ま、一方的でもつまんないしね。許容範囲だ、許容範囲。僕の有利は、まだ健在)
「10分」
代り映えのない、ギャリーの宣言。
(さっきから同じのばっかりだな。やる気がないってことも無さそうだし、何かの作戦のつもりか……)
実際、こう変わり映えしないと時間宣言から自分の札を予想することができない。それが狙いならば、彼の企みは十分成功したと言ってよいだろう。……それがどの程度意味のある行為かは別にしてだが。
(案外、本気で僕のモノになりたがってたりして!?)
男の見栄でフォールドはせずとも、されるがままで誘っている……なんてこともあるかもしれない。だとしたら、そう悪い気分ではない。
(ま、あの鉄仮面ぶりじゃ、真意を読み取るなんて無理だけどね。とにかくここは、僕が不利! 被弾は抑えさせてもらうよ!)「プレイ内容はキスにしようかな」
「それはディープキスってことか?」
間髪入れずに突っ込んでくるギャリー。
(さすがに、こんな曖昧な指定じゃ確認してくるか)「当然、そうなるね。一般的に性感を伴わない行為をプレイとして認めると、何が何だか分からなくなるし」
「ならばコールだ」
「それじゃ……オープン!」
公開される手札。
ギャリーK。スペード2。
(全然ダメじゃん!)「いやー、こりゃ派手に負けたね。さっきの二連勝の分かな?」
「さあな」
歩み寄ってきたギャリーが、ぐっと肩を引き寄せてくる。鼻と鼻がぶつかりそうな距離で、視線が交差する。意外と男らしい、積極的な態度にどきりと心臓が跳ねる。
「お、意外とやる気満々。もしかして、結構期待してた? ギャリーのむっつり〜」
「静かにしてろ」
茶化して会話の主導権を握ろうとするも、ギャリーは一方的に会話を終わらせ、無理やりに近い形で唇を奪ってきた。
粘膜の入り口をこじ開け、舌が口内に侵入してくる。
(ちょ、いきなり!? イメージと違って積極的……)
てっきりギャンブル一辺倒なのかと思っていたのだが、彼の才能は男女の駆け引きにも有効らしい。スペードは、そのことをすぐに身をもって理解することになった。
(やば……意外と上手い……かも)
ギャリーの唾液が口腔に流れ込んでくる。舌のぬるりとした感触は、敏感な粘膜と接触するだけで、そこに確かな快感を生み出す。
「ん……はっ……ちゅる……ぁっ」
息継ぎの度、口から漏れるいやらしい声。自分が予想外に責め立てられていることに、少し驚く。
(負けないんだから)
歯の表面をねぶってくる舌を押し返そうと、薄い三角の舌を突き出す。
しかし、ギャリーはその動きを見切っていたかのようにスペードの舌を捕え、絡め捕るようにしてその動きを封じてくる。
「ん!」
舌と舌が熱をもって交わる、官能的な粘膜接触。互いの舌の上を伝い、直接行われる唾液交換。口の中がとろとろになっていき、舌も粘膜も溶かされるような錯覚に襲われる。
思考が曇り、その奥からピンク色のもやが湧いてくる。甘い甘い、快楽の霧だ。
(す、すごっ……)
身体の力が抜け、痺れにも似た甘い陶酔がやってくる。
スペードは必死になって抵抗しようとしたが、端から見れば貪り付くように口付けを交わしているようにしか見えない。細く白い手は彼の背中に回り、抱きしめる様にぎゅっと力が込められている。
(気持ちいい……。これ、後何分続くの……)
ゴ〜ン。
「おっと、10分経ったな」
すっと、ギャリーが身を離す。
快感の靄が晴れ、正気の心が返ってくる。
(あ、危なかった……! まさか、これほどのテクニシャンとは! 今後のベットはもっと慎重にしないと……)
「どうしたスペード。呆けた顔になってるぞ」
見ればギャリーは既に席に着き、その顔に不敵な笑みを浮かべている。
「……冗談。僕は体力と精神力を買われて四枚札に抜擢されたんだ。この程度で勝った気にならないでよね」
そういって、不敵な笑みを返すスペード。
(……楽しくなってきた!)
不敵さの裏側に本物の笑みを隠しつつ、勝負の席に着いた。
#9824;
#9824;
#9824;
#9824;
#9824;
#9824;
「それじゃ第四ゲーム……今度は僕が子、ギャリーが親か。ギャリー、準備ができたら掛け声を」
「ああ……。インディアンポーカー」
カードを掲げる二人。
(ギャリーは5か)
当然顔には出さないが、スペードは心に追い風が吹くのを感じた。
(よし、これなら勝てる。5より弱いカードは4、3、2。うち2と3は既に1枚づつ出てるから、残りは3×4−2=10枚。ここは強気に)「僕も君に倣おうかな。10分だ」
「ペッティング(股間)だ」
「こ!? いきなり!?」
ギャリ
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