「やったぁ……」
ふかふかの藁山の上に崩れ落ちるエミール少年。
何か、肩の荷が下りたような感覚と共に、乾いた笑いが口を出る。
「やったよ、ミーファぁ……」
安心を共有しようと、母の使い魔に声を掛けるが、返事がない。
「姉御? どうしたんです!? 姉御!!」
サラの鬼気迫る声に驚き、少年が飛び起きる。
見れば、ミーファはぐったりとした様子で、サラの腕に抱かれている。
その顔色は蒼白で、息は不規則で荒く、大量の汗をかいている。
そしてなによりも、肘から先を切断されていたはずの右手の切断個所が、二の腕辺りまでせり上がってきているではないか!
いや、切断個所がせり上がっているのではない。右腕が消滅を始めているのだ!
「え、えぇ……申し訳、ございません。少し、魔力を、消耗しすぎました……」
考えてみれば、当然のことである。
ミーファの右腕は未だ切断されたまま。最低限に抑えたとはいえ魔力を垂れ流した状態で死闘を繰り広げ、その後脱出劇まで披露したのだ。
今までは気力でどうにかしていたのだろう。だがここにきて気が緩み、全てのツケが回ってきたという訳だ。
ひゅーひゅーという乾いた呼吸音に合わせて、彼女の身体から薄紫色の霧が立つ。微かに、その輪郭がぼやけ始めた気がした。
「どうしよう! ミーファが消えちゃう!」
少年が、涙目でサラに訴える。が、サラだってどうしようもない。
「そんなこと言われても……。姉御! なんか方法はないんすか!?」
ミーファがゆっくりと口を開き、乾いた唇から殆どうめき声に近い声を漏らす。
「何かで、魔力を……補充できれば……」
「魔力の補充……! なら、アタイが噛み付けば!」
「おやめなさい……! この状態で……あんな、乱暴な方法。注入された魔力を、制御する自身は、なくってよ……?」
「じゃあ、どうすればいいの……」
少年の声に、微かに絶望の色が混じる。
「ボス! 昨晩みたいに姉御を抱いてくださいよ!」
「ちょ!? なんで貴女、そんなこと、知ってますの……!?」
サラの言葉に、真っ先に反応したのはミーファであった。
「え? だって人んちであんなにでかい声あげて騒いでればそりゃ気づきますよ」
「盗み聞きとは……。なんていやらしい鼠なんでしょ……!」
今まさに命の危機に瀕しているというのに、一向に口の減らないミーファであったが、溜息と共に、その表情が曇る。
「……無理ですわ。精液自体が魔力の源という訳ではありません。坊ちゃまは昨晩、大量の射精と共に体内の魔力を殆ど出し切っていますから、今また精液を頂いたところで……」
声が、徐々に細くなっていく。その目にはあきらめの色が浮かんでいた。
「なら!」
がっ、とサラがエミール少年の肩に掴みかかり、彼を藁山の上に押し倒す。
「アタイがボスに魔力を供給します!」
☆
突然の展開に、エミール少年の目が泳ぐ。目の前のサラの顔と、その後ろで地に伏しているミーファの顔を交互に見比べる。
「な、何言ってますの……!」
「大丈夫です。噛みはしませんよ。アタイみたいに魔物化、もといインキュバス化したら大変ですからね」
そういうとサラは、エミール少年の首筋にキスをした。
「そういうことではなくて……、お止めなさい……! あぁ、身体が動かない……!」
ミーファはまぐわいを始めようとするサラに向けて手を伸ばすも、身体にまったく力が入らず、伸ばした手をぽとりと地に落とす。
「サ、サラ?」
不安そうな声を上げるエミール少年に、サラがにっこりとほほ笑んで答える。
「安心してください、ボス。怖いことなんてありません。二人で、姉御を助けましょう?」
出会ったとき、花売りに扮して少年に近づいてきたときとは異なる、自然で優しげな笑顔。それにつられて、少年はこくりと頷いた。
☆
サラが自分の背に手を回し、もぞもぞと肩を動かす。
すると、彼女の上半身に巻かれていた布がスルリと解け、小振りだが形のいい乳房が露見する。
少年の視線が彼の意志に関わらず、その柔らかそうな膨らみ釘付けにされる。それに気が付いたのか、サラが片腕でトップを隠す。
「ちょっとボス、あんまりジロジロ見ないで下さいよ」
頬を朱に染めはにかみながら、少し困ったように笑うサラ。
「ご、ごめん」
エミール少年は慌ててそっぽを向き、視線を伏せる。
初々しい反応が面白かったのか、サラが小さく笑いを零し、少年を優しく抱き寄せた。
「こういうときは、謝らなくてもいいんです」
少年の耳元で、小さく囁く。少年の身体が、びくんと跳ねた。
「ふふー。ボス、可愛い
#128155;」
サラは身を離すと同時に、少年の外套をスルリと解く。
少年の、まだ殆ど筋肉もついてない生白い肌の上半身が露出した。
そ
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