その夜、サラは約束通り二人に場所を提供した。決して広くはない隠れ家であるが、三人とも小柄であったことが幸いした。サラは積み上げられたガラクタ(本人曰くベッド)の上で、ミーファとエミール少年は床に敷いた毛布の上で、眠りについた。
深夜、エミール少年はふと目を覚ました。後の二人は既に眠ってしまっているようだ。遠くで下水の流れる水音だけが、狭い水路内で反響を繰り返して微かに響く。
彼は思い出したように懐から鏡を取り出した。鏡の中の母は、変わらず眠り続けている。
瞳の閉じられた顔をじっと眺めていると、ふと涙が溢れそうになった。誰かが少年の栗色の髪を撫でた。
「眠れませんか?」
ミーファである。いつの間にやら、少年の毛布の中に潜り込んでいたようだ。ふかふかの手が、頬を撫でる感触が心地よい。
「ご安心ください。今は、ミーファがここにおります」
そういうと彼女は、もちゃもちゃとからだを動かし、少年の腕の中にすっぽりと収まった。
「坊ちゃま……。アリーシャの件、申し訳ございませんでした」
ミーファがふと、そんなことを呟いた。アリーシャとは、シェルドン家とサバトの関係を外部に漏らした、若いメイドの名前である。まだ雇って半年程度であったが、献身的に働き、仕事の覚えも良かったので、すぐに屋敷の人々から信用を得た。そして、飼い猫であったミーファの世話も、彼女の仕事であった。
ミーファはだいぶ彼女になついていた。それ故に、彼女の密告がそうとうショックだったのだろう。ファミリアになったばかりのミーファにも、同じことを言われたのを覚えている。
「大丈夫だよ、ミーファ」
エミール少年はそういうと、彼女の背をポンポンと叩いた。
不安そうに視線を伏せるミーファに、優しげな声で続ける。
「アリーシャの件は、仕方なかったんだ。きっと彼女も、突然屋敷にバフォメットさんが訪ねてきたから、びっくりしちゃったんだよ。せめて一年は、サバトのことは内緒にしとくべきだったんだ。アリーシャ、本当に仕事を頑張ってたから、みんな信用しすぎちゃったんだよね。屋敷の人間、全員の失敗だよ」
そこまで言うと、少年はおどけた声で言った。
「それに、あの頃のミーファはただの猫じゃないか!」
エミール少年につられて、ミーファがフフっと笑いを漏らす。彼女は毛布に顔を埋め、少年の薄い胸板にぐりぐりと額を押し当てた。
「……こうしてますと、ただの猫だったころを思い出します」
ミーファは、よくエミール少年のベッドに潜り込んできた。猫は体温が高いので、冬はまさに大歓迎なのだが、夏に同じことをされると寝苦しくてかなわない。
と、ここで少年の脳裏にある疑問が浮かんだ。そして、それはそのまま口に出る。
「あれ? ところでミーファ、なんで僕の毛布の中にいるの?」
☆
「坊ちゃま、明日は決戦でございます」
ミーファの声音が変わった。
「波風立たずに計画が完遂されることはないでしょう。必ずどこかで、手荒な真似が必要となります」
エミール少年が少し引き気味に驚く。彼とてそのような未来が予想できない訳ではない。だが心で思っているのと、誰かに声に出して言われるのでは、その重みが違うのだ。
毛布の中で、ミーファの背に回した手にぎゅっと力が入る。
「ですから」
少年の胸に当てられていた彼女の手が、するりと腰のあたりまで滑る。
「魔力の補給をさせて頂きます」
ミーファの頭が毛布の中に引っ込み、彼女は少年の下半身へと向かった。
☆
「ミ、ミーファ!? 何を!?」
「あら坊ちゃま、もしかしてご存じないのですか? 魔物はその殆どが、男性の精から直接魔力を摂取することができるのです」
慌てるエミール少年に対し、ミーファは冷静そのものだ。
「まあ、ファミリアとしては主人の魔女から魔力を頂くのが本来の姿ではありますが、今は奥様があのようなお姿になられていますし、緊急事態にございます」
そういって少年の下半身を服の上からまさぐる。ズボンを結ぶ紐を解こうと、彼の腰に手を回す。
「精って! だめっ、駄目だよ!」
少年は思い通りにさせまいと、真っ赤になってミーファの手を払おうともがく。
「あら、駄目なことありますか。知ってるんですよ。坊ちゃま、一ヶ月前くらいから夜になると、布団の中でこっそり自分で自分のおちんちんを弄られてますよね?」
少年の肩が、びくんと跳ねた。その隙を見逃さず、ミーファがズボンを引きずり下す。
少年の、皮を被った小さなペニスが顔を出す。まだ縮こまっているせいか、先端で少し皮が余ってしまっている。
「あら可愛い」とミーファが感想を漏らす。エミール少年はなんとか彼女を引き離そうとするも、突如四方から細い影の蔦が伸びてきて、少年の四肢を絡め捕った。
「可愛いのはいいですが、
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