衝動とは、何故にこうも抗い難いものなのだろうかと、彼女はいつも思う。
身の内より湧き起こる焔は、放っておいても消えてくれない。消えない焔は衝動から欲求へと変わり、体を熱く火照らせる。
その火照りを鎮めるのは、何時だって白い粘液だ。
満月の灯りで、目が覚めた。
「ん・・・・・・」
思いの外寝心地のいい草むらに横たえた体を起こし、生きていた頃の癖で伸びをする。
「ん〜っ」
随分昔に休暇を取り、この間ようやく復帰した脳に血液と酸素が行き渡る。体も軽くなった。
「よし、行くか」
暗く沈んだ夜を照らす満月の光。高台に作られた墓地を照らすスポットライトを浴びて、彼女は仄かな芳香に誘われて歩みを始める。
―――――喉が、渇いた。
先月十六になったばかりの少年は、高台の墓地に葬られた祖父に会いに来た。
重たい墓石と土の下に埋められた木製の棺。その中に納められた祖父を見たのは一年も前のことだった。
人間の記憶力とは随分と薄情なものらしく、こうして定期的に墓参りにでもこないと忘れてしまうようだ。現に彼の家族はもう祖父を忘れてしまったように思える。日々生きるということはそれだけの難行ということなのだろうが、なんともやり切れない。
せめて自分だけはと、こうして定期的に墓参りに訪れている。
「爺ちゃん、天国ってあるの?」
素朴な疑問だ。
死を悲しむには時が経ち過ぎた。寂しいと感じるには日々が忙しすぎた。風化した寂しさと悲しみが最後に見出したのがその疑問である。
無論、答えなど期待していない。
していないのに―――――。
「さあ? ここがそうじゃないならあたしには判らないなぁ」
何故か、答えが返ってきた。
「・・・・・・?」
顔を上げると、祖父の墓石に頬杖を突いて、やたら艶かしくこちらを見つめる女を見た。
「こ、こんばんは」
戸惑いが大きいが、ここは人として挨拶をせねばなるまい。
「礼儀正しくてとってもあたし好みなんだけど、ちょっと違ってるのよね」
頭にクエスチョンを浮かべて首を傾げる前に、女は少年の速度では対応出来ない速度で肉迫した。
「―――――!?」
「挨拶は『いただきます』が正解ね」
吐息さえ掛かる距離で見た、女の微笑。唇を舐める色っぽい仕草。自分を見つめる、欲情に濡れた捕食者の目。
―――――魔物だ!
「うわっ」
確信も動揺も、驚愕さえも遅い。
華奢な少年の体躯は、見た目にそぐわない怪力で組み敷かれた。後頭部を打ち付けないように、いつの間にか女の手が後ろに回っている。そのためか、妙に現実感がない。
ただ、薄い布越しに伝わる熱い体温が、強烈に生々しい。
「な、なに?」
「なにって、初心ねぇ。ひょっとして初めて?」
問いの意味が判らずに窮していると、女はそれで全てを察したようだ。
「うわぁ、なんてラッキーなの。あたしを死なせた時はぶっ殺してやろうかと思ったけど、こんな可愛い子をくれた神様には感謝くらいしてあげないとね」
嬉しそうに唇を舐める女。月の光に反射した、唾液に塗れた舌が淫靡だ。
「あ、じ、じいちゃ・・・・・・」
少年の頭はパニックを引き起こし、しかし捕食者というものは得てして、そういうものに構ってはくれない。
「大丈夫大丈夫。怖くもないし痛くもないから。君はじっとして、あたしに全部委ねてくれればいいからね」
口調はやんわりと穏やかで、どこか優しささえ覚える。
だが少年のズボンと下着を剥ぎ取る様はどこからどう見ても乱暴だ。
「ひっ」
不意に外気に曝された陰部が、この事態を現実のものだと訴える。
(ゆ、夢じゃ・・・・・・ないの)
急転する事態は現実感を見失わせ、夢心地にする。しかし夢のものでは決してありえない感触の群れが、それを簡単に否定する。
「割礼は済ませてるのね。可愛らしいピンク色の亀さん♪」
自分の陰部に注がれる熱烈な視線。それを敏感に察知した思春期の青い欲望が、肥大した恐怖をせき止め、新しい何かを生んだ。
「あら、おっきくなってきた」
期待である。
少年は知識でなく、女の風情や仕草から、これから行われるであろう淫靡な行為をおぼろげながら感じ取った。
「うわ、期待以上ね。随分立派なもの持ってるじゃない」
色の白い肌色が屹立し、桜色の亀頭が赤く染まる。
「こんなにいやらしい匂い撒き散らしちゃって・・・・・・もう無理、我慢できない!」
舌を出したまま大きく開いた口が、少年の屹立した肉棒を頬張る。
「くあっ!」
突如脳髄に響く強烈な快楽。
温かな口腔内の温度を感じるよりも先に、亀頭部の敏感な粘膜に触れた唾液に快感の声が洩れた。
「んむふぅーーーーッッ・・・・・・・んフーーーッ」
ぱっくりと少年の肉竿を根元まで咥えた彼女も、快楽と喜悦に塗れた吐息を漏らす。情欲に
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