初代魔王。
それ以前の魔王を全て存在しない事にしてしまった、歴代最強の魔王である。
彼は一度振るえば天を裂き、地を割り、万の軍を滅ぼす魔剣を自ら創り出したという。
四英雄との戦いでは最後の一人、名も無き五人目によってその魔剣を盗まれた事が、彼が敗北した最大の要因だったという事は想像に難くないだろう。
しかしその後、件の魔剣は歴史上から姿を消してしまう。それだけ強力な魔剣がいったい何処へ行ってしまったのか。所有していたであろう、五人目の英雄はいったい何処へ消えたのか。
――今となってはその謎を解こうという者すら絶えて久しい、古い古い時代の話である。
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アランは魔剣を持つ腕を静かに下ろした。
血肉と骨肉を固めたかのような異形の魔剣は面白そうに、愉快だとでも言いたげに巨大な瞳でフォリーを見ている。
――あの魔剣には、間違いなく悪意が有る。
怖い、おぞましい。あんなモノと戦ったら、自分は絶対に死んでしまう。
フォリーはそんな恐怖を、意思の力で抑え込んだ。自分がここで臆してしまえば、アランはきっと、容赦無くあのゴーレムを殺してしまう。それは、嫌だ。目の前で、誰かが死ぬのは嫌だ。いや、目の前でなくても、誰かが死んでしまうのが嫌だ。あのゴーレムは間違えたかもしれないけれど、悪い事をしてしまったけれど、それでも、改心して反省が出来るかもしれない。いや、改心させる。絶対に。死んで責任を取るだなんて、死んで責任から逃げるだなんて、絶対に許せない。彼女には是が非でも――幸せに、なって貰わなくては。
「――まあ、先ずは落ち着いて、話し合いでもしましょうか」
血気に逸る様を見て取ったのか、アランが落ち着いた声音を発した。
「多少前後してしまいましたが、私がこのゴーレム――そうですね、今はこの姿ですし、暫定的に彼女と呼びましょうか。彼女を何故破壊しようとするのか、それを聞きたかった、で宜しいのですよね?」
「……うん」
そうだ、落ち着け。
今の自分の力では、何をどうしたって、逆立ちしたってアランの力にはきっと勝てないだろう。
――なら、力以外の手段で勝つしかない。諦めるという選択肢は、最初から無いのだから。
「端的に言えば、危険だからです。彼女の存在は、争いの種に成る。いえ、争いを激化させる、と言った方が正しいでしょうか」
「それは、彼女がまた暴れるかもしれない、ということ?」
「いいえ。本質的な問題はそこではありません。確かにそこも懸念すべき点ではありますが、その場合ならば事が起こってしまってから対処しても充分でしょう」
平然と言ってくれる。その事が起こったからこそ、今回の騒動が有るというのに。
つまりは、最低でもこれ以上の事が起こるというのか。
「なら、いったいなにが危険だって言うの?」
アランはさらりと、なんという事も無さ気に答えた。
「彼女は初代魔王と呼ばれる存在が作成した、量産を前提とした次期主力兵器の試作品です。先程、停止命令を出す際に確認しました」
なんか色々、凄い事を言われた。
初代魔王、という事はあのゴーレムが作られたのは何千年か、あるいは何万年も前の事になる。
それだけでも十分に凄いが、あの悪名名高い初代魔王が作ったのなら、彼女の驚異的な性能にも納得が出来た。なにせ世界の半分を支配した魔王が次期主力兵器にしようとしていた代物である。今で例えるなら、うちの四女と愉快な仲間達みたいなモノなのだろう。――少し違う気もするが、まあ多分、それくらいの脅威度である。少なくとも人類側にとってみれば。
だけどきっと、アランが問題視しているのはこれらではなく。
「量産……」
「はい。状況が特殊だったとはいえ、貴女が苦戦したゴーレムを最低でも数百万、恐らくは数千万単位で生産するつもりだったと考えられます」
「……お、多過ぎない?」
ちょっと桁、間違ってない?
「最終的に、数十億での運用を計算していた痕跡も有りました」
「いったい何と戦うつもりだったんだ……」
何もかもが狂っている。実は正気を失っていたんじゃないか、初代魔王。
「まあ彼がどう考えていたのかはこの際どうでも良いのです。大事なのは、それが可能な設計になっている、その一点です」
「……えっと、つまり、アランが言いたい事っていうのは」
アランは、こくりと、頷いた。
「例えばこれが人間側、それも教団側の手に渡ったとして。量産されてしまったら、とんでもない事になるでしょう」
「とんでもないこと……」
「大戦争が、起こるでしょう」
「だいせんそう……」
いやまあ、うん。えらい事だ。
なんかもうスケールが大きすぎてイマイチ想像が出来ないけど、かなりこう、大
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