まっすぐファントムちゃん!

「う...うーん...?」

瞼を開けたら、僕こと「志野淵 辰雄」の眼前に、一面真っ白な景色が飛び込んできた。
周りを見渡せども、白、白、ただ全面の白。部屋全体が発光しているような奇妙な部屋だった。僅かな部屋の角の陰りが見えなければ白い空間に浮かんでいると錯覚するほどだった。

夢か?夜遅くまで起きていたしうつつを抜かして寝ぼけ三昧なのか?
目に映る全てのものを疑いつつ頬をつねれども目が覚める様子はなく、どうやら疑いようもない現実のようだった。
しかし、無機質な白に囲まれたこの現実離れし過ぎている異常事態に、戸惑うばかりで声すら発する事も出来ず、唯々ぼーぜんとする他に無かった。

待て、落ち着け。
確か昨日も、朝少し寝坊気味に目が覚め、急ぎ足で大学に行き、彼女と一緒に授業を受け、帰宅し母の温かいご飯を食べ、夜遅くまで彼女と通話しながらベッドに横たわり眠りについた。いつもの日常を謳歌していたはずだ。
そうなれば目が覚めたら真っ先に見えてくるべきなのは自分の部屋の天井か、同じく横たわる僕の携帯なのであって、こんな素っ頓狂な部屋である訳がない。
なんで、どうして、とずっと答えの出ない疑念に耽っていると、



「ううーん...」

すぐ脇からかすかな声が聞こえてきた。聞き間違うはずがない、学校で一緒に授業を受けた僕の先輩であり彼女である「幽岸 麗美」さんの声だ!
彼女もここに?何故?まずなんだここ?なにがあってこうなった?とにかく彼女に声をかけて状況を整理しないと!

「先輩!?先輩もこんなとこに!?」
「ふぁぁ〜...あ、タッくんがいる。...ん〜?う、うわぁぁぁ、な、なんだここ〜〜〜?」

そう言うと芝居がかったような動きで口元を手で覆い、驚いている様子を見せた。
どこか間の抜けたような先輩の様子は普段とそう変わらない調子であった為、こんな状況ながらにほんの少し安心感が芽生えてきた。
スラリとしたモデル体型で、まるで雪のようにか細く白い腕。あどけない少女のようでありながらどこか艶やかさを含む顔立ちと絹糸のようなショートボブの髪が、フードの中からちらついて見える。
白き肢体を覆い隠すように黒いシックなロングスカートとフード付きのおしゃれな黒いパーカー、つまるところ普段の出掛での服を着こなしている。これまた妙だ。


「と、とにかく落ち着いて状況を整理してみましょう、先輩、ここに来るまでに何かありました?」
「そうだねぇ、私は寝てたらいつの間にかここに...といった感じだな」
「そうですか...僕も完全に同じで、寝ていたらふとここにという感じなんです」

先輩も全く同じ状況なのか...と思いたいが、どうもこんな状況下なのに先輩は腕を組み不敵な笑みを浮かべている。

「...先輩、先ほどからやけに落ち着いてません?」
「え、そ、そ、そんなことないだろう!?うわー大変だなー、どうなるんだろうなー」
「それに、僕は寝た後そのままのパジャマだというのに、先輩はバッチリ余所行きの格好でここにいますね」
「え、あ、い、いやぁ私の家アメリカーンだから、こう、外行きのままとか、そんな感じの寝間着でも、お、おかしくないのさー!」
「うーん...何か受け答えもふわふわしてやしませんか?」
「え!?ふ、ふわふわ!?ままままさかばれた!?地に頑張って足つけてるように見せかけてるのに!」
「...何よくわからないこと言ってるんですか」
「あ、この反応!多分ばれてないようだな!よっしゃ!」


パニックになりながらも言葉のキャッチボール、いや、ドッヂボールを交わしてると、不意に部屋の端にあった無機質なスピーカーからノイズが混じったブーミーな声が聞こえてきた。


『‐‐‐ザザッあーあー、諸君、そこの幸せカップルお二人さん。愛を育む白の部屋へようこそ。私が、この部屋の支配者であーる』

 何やら女性が無理して低い声を出しているような、そんな印象に捉えられる声色で語りかけてきた。
というよりか...どこかで聞いたことあるような?

「...この声色、どこか先輩の声に近いような?」
「ギクゥ!?  や、やだなぁタッくんそんなわけないじゃなーい、おほほほほ」


何故か唐突に冷や汗を大量に流している先輩をよそに、淡々とスピーカーからは言葉が流れてくる。

『この部屋から脱出したいかね?それならば、壁に浮き出てくる3つのお題をこなしていくことが出来たならば、この部屋から解放してあげようじゃないか』
「お題?いったい僕達に何をやらせよ
『そうはいっても不安だろう。何しろ愛しい彼女...フフフ
#10084;と共にこのような部屋で訳の分からない状況下に置かれているのだからな。混乱するのも無理はない。
しかし安心したまえ、君達に危害を加えるつもりはない』

質問に対し全く
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