港街より。

とある王国、その領土の海に存在する大きな港街。

物流の拠点として古くから栄え、様々な人種を抱え膨らみ肥大した港街。多くの商船が持ち込む品や人は、この港街に富と混沌、良きも悪きも、人から魔までも持ち込んでいるのだろう。

そんな港街の昼下がり、雑多な商品が並び様々な人種溢れる商業区を巡回していた男性騎士は呟く。

「どうすっかね。あれ」

目の前の人混みの中に、どうみても怪しいといった風貌の男を見つけた。怪しい男の周りは少し開けている、通行人が避けているからだ。

「取調べ位は、せんといかんよなぁ…」

面倒だな。と騎士は考えつつも職務をこなす為に男へと近づいていく。

「人よ。愛せよ! ク、クキ、キヒヒヒッ」

男がいきなり笑い出した。

その後、周りの通行人に何か言っているが。通行人が男を見る目は、不信な者を見るそれだ。

「おいおいおい」

薬物中毒者、気狂い、犯罪者、危険思想者。男性騎士はとりあえずの候補を思い浮かべると、利き手を剣の持ち手に添える。

「おい、おまえ!」

男の肩をもう片方の手で叩き、此方へ振り向かせる。

「はあい?」

男は振り向くと不思議そうな顔をしていた。

ニヤついた笑顔を貼り付けた、美しい顔つきの男。肌は白く瞳は緑、この港街においては珍しい黒髪を長く伸ばし三つ網で一本に括っている。片目には眼帯をしており、服装は砂漠の民が好む物。その眼帯と服装、更に嫌らしい笑顔と美貌の差が、記憶に残りそうだ。
 悪い意味で、だが。

そんな男に、男性騎士は告げる。

「怪しいって自分でもわかってるだろ? ついて来てもらうぞ」
「普通にしてるつもり、なんですがねえ」
「どこが、だ! 大人しくついてこいよ?」
「クヒヒ。わかりやした」

男性騎士は怪しい男の腕を掴み、引く。男は顔にニヤニヤとした笑顔をする以外、特に抵抗もないので早まったか? と考えつつ連行していく男性騎士。

そういや『時間』はもうそろそろだっけか、と思い出しながら。






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現在の場所は男性騎士が所属する、王国騎士団港街の本部たる建物。
そんな建物にある取調室の中でも比較的、明るい部屋である。

男はそこに連れられ、取調べを受けていた。

男性騎士はぼやく。

「そんなふざけた顔をしてないで、もっと真面目な顔しろよ」

ぼやきに、男がニヤニヤと笑いながら答える。

「そう申されましてもねえ。あっし、これが普通でさあ」
「それが普通て……。もったいねぇなぁ」

男性騎士は、またぼやく。

確かに真面目な顔をすれば、目の前の男は素晴らしく良い顔になるだろう。
あくまで真面目な顔つきをすれば、である。

「ヒヒヒ、ありがとうございます」
「褒めてねぇよ」
「ありゃー、そうでしたかぁ。そういう旦那は渋くて良い漢ですぜ?」
「はぁ…。そりゃ、どうも」

男性騎士は、溜め息をつきながら返答する。
 この男性騎士、ニヤつく笑顔を顔に貼る男が言うとおり中々の良い漢である。

渋みを持つ精悍な顔に付く瞳は淡褐色、短髪で揃えた灰色の髪。その顔には何度も修羅場を潜り抜けてきた事が伺る細かい傷が見られた。騎士として鍛えられた体は今は鎧で見えない、しかし体格から見てその逞しい体は想像に難しくない。

欠点があるなら、少し取りすぎた年齢と口の悪さだろうか。

「名前、職業、この街に居る目的、後はー……何だっけか?」
「あっしに訊かれても困りますねえ」

男性騎士の質問に男がニヤニヤ笑い、おどけて答える。

「おめーには訊いてねぇよ! ほら、名前、職業、目的を言いな」
「あっしの名前はセブロと申しやす。職業は商人、目的は勿論商売でさあ」

騎士が目を細め、男を睨む。威圧感が増すが、セブロと呼ばれた男は平然としていた。

「商売ねぇ。商品は?」
「今回は人の斡旋ですねえ。物は無えです」
「斡旋? 奴隷か?」

この国で奴隷は推奨はされていなくても、存在はする。教会ですら所有している。
 名を変え、奉公人などと言われているが。

「違いますねえ。必要な人材を、必要な場所へ。そんな仕事でさ」
「それ、儲かるか?」
「儲けは余り無えです。今回の報酬は、信用と信頼ですねえ」
「へぇ、信用と信頼ね。そりゃあ大事だな?」
「全くで」

嘘臭い上に胡散臭いが、こういうタイプは見た目で判断出来ない。男性騎士は何かある、と直感するも怪しいという理由で連れてきている為、強くは出れない。

取り調べが終わった後、仲間の商人や商会に話された時に騎士団や、自分の所属する隊の弱みのネタにされては困るのだ。

次の質問を騎士が訊こうとしたその時、取調室の扉が開いた。
 淡い金色の美しい髪を後ろで束ねた女性騎士が入って来
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