とある町のとある場所で、1人の少年が道端にしゃがみ込んでいた。
「これ、なんだろう……?」
その少年は地面に落ちていたカードのようなものを拾い上げる。そのカードの表面には、可愛らしい女の子が描かれていた。
「スペードの、A?もしかして、トランプが一枚だけ落ちちゃったのかな?」
可愛らしい女の子の大きな胸の辺りには、スペードのマークと「A」の文字があり、トランプの存在を知っている少年はトランプのセットから一枚だけ零れ落ちてしまったのではないかと考える。
「わぁ、凄くツルツルしてる。きっと、高いトランプなんだろうな。傷も無いし、ま、曲がらない?」
少年はそのカードの手触りを気に入り、高価なトランプなのだろうと予測した。また、非常に頑丈なことに気付き、軽く曲げようとしても曲がらないカードに奇妙な感覚を覚えた。
「届けた方が良いのかな?きっと、落とした人もスペードのAだけ無くなって困って……。
でも、絵柄の女の子、とっても可愛いし……」
しゃがみ込んだまま、少年はカードを大人に届けるか、自身のものにしてしまうか、迷ってしまった。そしていけないことだとわかっていながら、少年はカードを胸ポケットにしまってしまう。
少年は、トランプの絵柄の女の子を好きになってしまった。その後、少年はトランプのカードを肌身離さず持ち歩くようになり、辛いことがあった時や、悲しいことがあった時は、そのカードの女の子に語り掛けるようになっていった。
『そんなに辛いことが多いなら、僕のお城においでよ』
ある日、少年に強烈な立ち眩みが襲う。何処からか声が聞こえたような気がしたが、そのことを気にする余裕が少年には無かった。ふらっとよろけた少年は何とか踏みとどまるが、現状を認識した途端に、恐怖を感じる。
「ここ……どこ……?」
少年の全く知らない風景が、眼前に広がっていたからだ。
「もう、また迷い込んだ人が来ちゃったのね」
立ち尽くす少年の背後から、チェシャ猫が語り掛ける。その声にビクッとした少年は恐る恐る振り返ると、猫耳の生えた、猫のような女の人が近づいてくることを認識した。
「あら?なかなか可愛らしい男の子ね?
ねえ?お姉さんと良い事しない?」
チェシャ猫は、少年の視線が自身の双球に注がれていることに気付き、誘惑を始める。少年を怖がらせないように、語り掛けるように喋りながら、ゆっくりと近づく。
そしてチェシャ猫が固まる少年に触れようとしたその瞬間、少年は胸ポケットに入れたトランプのカードから、声を聞いた気がした。
『早く僕をあの発情した猫に見せるんだ!』
「え!?えっと、こう?」
「……あらら、お手付きだったのね」
少年は指示通り、スペードのエースをチェシャ猫に見せる。すると淫靡な表情だったチェシャ猫は頬を膨らませ、少年に一言だけ告げると、そそくさと去って行ってしまった。
「ここは不思議の国。ハートの女王が治める国よ。
本当は案内役をしたかったのだけど、お邪魔みたいだからお姉さんは別の人の所に行くわね」
さて、綺麗な女性に言い寄られて固まっていた少年は、不思議の国と聞いて困惑し、完全にフリーズした。不思議の国とはどこなのか、ハートの女王とは誰なのか。
そして、何故トランプの絵柄が動いているのか。つい先ほどまでただの絵だと思っていた女の子が、『大丈夫?』と声をかけながら、手を振っているのだ。非現実的な光景を目の当たりにし、微動だにしなくなった少年に対し、トランプの少女はさらに語り掛ける。
『本当は僕自身が迎えに行きたいのだけど、ハートの女王様にお城の留守番を任されちゃってね……。
案内するから、僕のお城で待っててくれる?』
「う、うん。
えっと、君が僕をここに連れて来たの?」
『そうだよ?まあ、僕を拾っちゃった君が悪いんだから、元の世界に帰るのは諦めてね?』
少年はトランパートのエースと名乗る女性から、この世界についての事を教えられる。魔物娘の中でも好色な存在が至る所にいること、襲われたらもう逃げられないこと、エースが招いたこと。
少年にとって、エースとの会話は夢でもあった。何せ少年が絵の状態でも一目惚れした女の子だ。少年はエースと楽し気に話しながら歩いていると、時折魔物娘が話しかけて来る。
「美味しそうな男の子だ〜!子作りしよっ!子作り……頑張って下さい」
「ショタっ子はっけぇん!ねぇねぇ、何処から来た…のですか?」
「……はは。ビリビリを食らわせなくて、良かったぜ」
エースとよく似た、ハートの7と描かれた服を着ている女性に対し、少年はエースを見せると、その女性は慌てながら丁寧な言葉遣いになり少年に敬礼する。またスライムのような、卵のような女の子に少年がエースを見ると、蕩け切っている顔が真
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