魔王が代変わりして一世紀、人々と魔物はお互いを害する事無く愛し合う世の中となった。
しかし未だに主神を祀る教会とは争いが耐えず、魔物に対しての偏見が抜け切っていない。それでも共に生きようとする者達がいる…そんなこの世界の一都市、レオドル。
ジパングとの貿易港を持ち、様々な親魔物都市との貿易路を持つ交易都市でレオドル領を治める首都である。
出来て60年程の若い都市であるが移住した魔物達のもたらす技術や術式、労働力によりすぐさま中規模ながら裕福な都市へと成長し、現在は数ある親魔物領の中でも割と生活しやすい都市へとなっている。
その都市の離れにある山に立つ屋敷。
レオドルを一望でき、目立つ位置に立つ領主の館である。
美しい白い壁で出来た屋敷の一角。領主の執務室では一人の女性が報告書や議定書と格闘していた。
美しい金色のショートボブ、少女と女性の中間にあたる身体をもつ美女…レオドル領主のヴァンパイア、フランシスカ・レオドルは頭を抱えて溜息を漏らす。
「レオドル領最北端に住まう蒼炎のティアマトにより付近の集落の被害甚大、対策を検討して頂きたい…か、全くあの時代遅れの恐竜は何をやってるの。もう…」
地方守備隊の報告書に書かれた文字に呆れたように溜息を漏らす。
蒼炎のティアマト…かつての旧世代に魔王軍で暴れていたドラゴンだ。
街を焼き、人を喰らい、破壊の限りを尽くした竜。
単純な力や魔力なら上位陣に入るだろう。
そのティアマトが最近レオドルの最北端にある古城に住み着いたのだ。
魔王が変わり、魔物娘化した事で力は多少は落ちたのだが…激しい気性は相変わらず。
これ程旧世代の気性を残した魔物は珍しい、だが平和にいきたいと願う者達にとっては厄介極まりない存在だ。
同じ魔物としてティアマトの存在が魔物の評価を下げる事にもなるため頭が痛くなる…
こればかりは好ましくない、私は人と共に生きると決めたのだから。
「仕方ない、私達魔物の信用を失うわけにはいかないもの…近々守備隊の先鋭の魔物達を送りましょう。私自ら狩りに行きたいけど流石に領主不在はまずいものね…」
自分が行けば封印や無害化は可能性だろうが、立場上そうはいかない。
教会や反魔物領の奴らもこの都市を奪おうと目を光らせてるのだ、私が不在となると忽ち勇者や大軍を送り込むに違いないだろう。
書類に兵を用意するとサインを入れ、ソレを封筒へと仕舞った。
「ふぅ…それにしても此処も随分大きくなったわね、私や他の仲間たちと作った時はまだ小さな街だったのに」
窓の外から見える人々の営みの灯りを眺めながら感慨深く呟きを漏らす。
魔王が変わり、人と争う事も無く生きれる様になったと解った私は同志を集い、此処を作った。
人と魔物が共に暮らす都市、お互いに平等で幸せになれる場所を…
まぁ同族からは一斉に非難や下劣な言葉を送られたけど…
私は人が居なければ今の我々は存在できない事を早々に受け入れた。
私は変わり者だったから素直にそれを受けいれる事が出来たが…他のヴァンパイアが皆そうではないのが現状。
それでも人と魔物が共に手を取り合い生きて行く為の場所を作ろうと思った。
この都市が模範となれば、他の反魔物領や偏見をもつ人間も考えを改めるきっかけになる。
そう信じているのだ。
まぁ…その道のりは簡単にではなかったが。
絶え間ない勇者の襲撃…
魔物を恐れる人々への説明だの、好色や気性の荒い魔物達への説得だの色々あったりしたものだ。
法整備の際に多数の魔物からも反発があったのも良い思い出ね…そりゃ魅了や襲う事を禁じたら非難が集中するのはわかってたけど。
色々と昔を思い出しながらメガネを外し、机の上に置いてある血の入ったグラスを手に取れば一口飲む。
体にしみ込む血の味、この世のどんな物より甘美な味に思わず溜息が漏れた。
「ふぅ…生き返る…血は美味い、しかも人と共に生きれば飲み放題なのよねぇ」
「…其れがお主の本音ではなかろうな?」
どこからともなく聞こえる幼い声、それに動じる事なくまた一口飲む。
「んっ…いきなり現れないで頂戴、私じゃなければ貴女に魔術ぶつけてるわよ…それにそんな訳ないわ。人々が居なければ私達は増える事も生きる事も出来ないのだから…所でどうしたの?エリニア」
休憩しようとゆっくりくつろいでいたフランシスカへの突然の横槍。
突然の来訪に溜息をつき、視線を部屋の隅へ向ける。
その先にはヤギの角を持ち、露出度の高い衣装に身を包んだ幼女…
バフォメットと呼ばれる魔物のエリニアが立っていた。
ただ他のバフォメットとは違い髪をポニーテールにしており、山羊の頭骨を仮面の様に付けている…本人曰く個性だそうだ。
彼女はこのレオドルにあるサバトの支部の長、レオドルを作ったメンバーの一人でス
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