「ここが魔界の街か」
俺は黄昏時のような暗い空の下、魔物娘たちの街を目の前にして、顔がだらしなく緩んだ。
一か月前までの俺には、まさかこんなところに来るとは想像もしていなかっただろう。生まれ育った村で、貧しいながらも清らかに慎ましく生活して、あと数年もすれば村の誰かと結婚して、子供を作り、年老いて、孫たちに囲まれて穏やかに死んでいくとばかり思っていた。
そう。あのことがなければ。
一か月ほど前のこと、俺は森に山菜を採りに行った。山菜は乾燥させておけば、保存がきいて、非常食になるから、いつも春には、村人が総出で山菜採りに行くことになっていた。
ただ、今年の春、そろそろ山菜採りの時期となったころ、行商人がやってきて、ここから十日ほど行ったところにある大きな街の、その近くにある森に魔物が現れたという情報を教えてもらった。
話によると、森に狩りをしに行っていた貴族のお方が二人と、その護衛の戦士たち全員が魔物の餌食になったという。その話を聞いて、村の中で話し合い、今年の山菜採りは中止にしようということになった。
村のみんなは非常食を作れないことに不安がったが、しょうがないと納得した。
それもそうだ。その街に魔物が出たのなら、この村のあたりは魔物が行き来していることになる。人通りのある街道ならまだしも、魔物たちの領域に近い山に入るのは、山を熟知している狩人でも危ないことだった。山菜採り程度しか山に入らない村人が対応できることじゃなかった。
だが、俺はどうしても、ビビシツルの若芽が食べたかった。
というのも、それを食べないと、その年は俺は病気をする。もちろん、村にそういう風習もないし、根拠があるわけではない。ビビシツルの若芽は保存もきかない、どちらかというと、山菜採りのおまけ、ご褒美の類なのだ。
だが、一度、それを食べなかった年に流行り病にかかり、死にかけたことがあった。それからというもの、どうしても食べないと不安で落ち着かないのだ。
山のどこにビビシツルの生えているかはわかっている。そこへ行って帰ってくるだけならと、俺は軽く考えていた。
そして、俺は魔物に襲われた。正確に言うと、魔物娘に犯された。
魔物娘から解放され、村に帰って、長老に襲われたことを話すと、随分と怒られたが、特徴から俺を襲った魔物娘はワーウルフだろうと教えてくれた。
ワーウルフが俺を襲い掛かるときの動きは獣以上だった。気配を消して、俺が間合いに入ったら、茂みから飛び出し、一瞬にしてズボンを下げられ、俺の息子をくわえられていた。俺は驚くと同時に襲いくる快感に混乱した。
それから、ワーウルフの口や膣に何度も射精をした。最後の方は俺の方が積極的に腰を振っていた。
自分では交わりは淡白な方だと思っていたが、本当の快感を知らないだけだったことを思い知らされた。村の女を祭の時に何人か抱いたことがあったが、誰よりも、というか、比較するのがおかしいレベルで気持ちよかった。
だが、魔物娘は俺を犯しつくし、全てを搾り取られて転がっている俺を見て、少し考えてから、「ま、いっか」と明るく笑って、「ばいばい」と手を振って森の中に帰っていった。その時は、何が「いい」のかわからなかったし、命拾いしたと思ったが、長老にその意味を教えてもらった。
魔物娘は、気に入った相手はそのままさらって、自分の夫にするのだという。主神教の神父様たちは、魔物は人間をさらって殺すのだと言っていたが、それは間違いらしい。ただ、長老たちも神父様に逆らうのは賢くないので、反論せずに信じているふりをしているのだという。
つまり、俺を襲ったワーウルフは、俺は夫にするまでもないと思って、解放されたのだということだった。その話を教えてもらったときは、少し悔しくもあったが、魔物の夫にされなくてよかったと思った。その時は。
だが、日を追うごとに、あのワーウルフとの濃厚な交わりが頭の中を占領していくのだった。そればかり考えてしまって、仕事はもちろん、食事すらもままならない状態になってしまった。そうして、俺はあのワーウルフを求めて、森をさまようようになるのに一週間もかからなかった。
見かねた長老が、俺に魔界の場所を教えてくれた。そこへ行けば、魔物娘が大勢いると言ってくれた。俺は長老に涙を流して感謝した。
そして、俺はすぐに旅支度を整えた。村を出るときの決まりは、畑と家財道具を村に寄付して、長老たちからそれに応じた餞別を受け取る。ただ、俺は魔界へと行くので、人間世界のお金がどれほど通用するかわからなかったので、魔界に入るまでの路銀だけを受け取って、残りは村の貯蓄にしてもらった。
村は若い男の働き手を一人失うのだ。労働力が減って、大変なのだ。それだけじゃなくて、村にやってくる代官様にも俺が行方不明にな
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