下に組み伏した裸体は、窓から差し込む月の光に照らされて艶めかしくザックを誘っていた。白い肌は興奮と羞恥でほんのりと赤く染まって、美しさに初々しさが加わり、男の心をくすぐった。
「ユードラニナ……」
程よい大きさの胸に顔をうずめた。
「……そんなに大きくないから恥ずかしい」
顔をうずめられて隠すこともできないため、軽く身をよじったが、その程度で逃げられるわけがない。
「十分大きいよ。俺はこれぐらいが好きだ」
顔は見えないが赤く染まっていることはザックにも分かった。肌がさっきよりも赤みを差していた。
「綺麗だよ」
柔らかなふくらみに舌を這わし、指先でふくらみの頂にある硬くなった突起を指先でいじくった。
ザックの舌や指の動きに敏感にユードラニナの身体が反応し、甘い声を漏らしていた。
「ザック……もぉ……してぇ……」
我慢できなくなった竜が切なく甘い声でねだってきた。濡れそぼった秘所を見せるように、はしたなく股を開いて自分を満たして欲しいと誘った。
「胸だけでこんなにするなんてエッチだな、ユードラニナは」
「いわないでぇ」
顔を手で覆っていやいやするように身体を軽く左右にねじった。普段は美しく精悍な彼女が自分の前だけは甘えん坊になるのをみると、得も言われぬ優越感が湧き上がった。
地上の王者ドラゴンを自分の腕の中に抱き、そして、甘えさせる。男としての支配欲、征服欲が満たされてくる快感に頭の芯が白熱した。
「どうして欲しいか、詳しく言ってほしいな。何をどこにどうして欲しい?」
「そんなぁ……はずかしぃ」
泣きそうな顔にザックは背筋に電流が走り、それだけで果てそうになった。サディストに目覚めたかもしれない。
「言わないと、してあげないよ。ほら。いってごらん」
優しく諭すように、しかし、要求は一歩も引かず、彼女に期待をさせるように自分のいきり立ったものを大洪水のところへと密着させた。
「ふざけんじゃないわよ!」
怒声と罵声にザックはハッとなって身を起こした。そして、軽く混乱したが、周囲を見渡して、そこが自分の住処であることを知ると全てを理解した。
「夢……か……」
藁の上にシーツをかぶせただけの寝床には美しい青い竜はおらず、期待と興奮に満ちて痛いほど膨らんだ股間だけが夢の名残として虚しさを加速させていた。
「金も無いのに女を抱こうなんて、泥棒と一緒だよ! とっとと消えやがれ、クソ野郎!」
ザックを夢から現実に強制送還した罵声が薄い壁越しに聞こえた。自分のことではないとはわかっていても、胸に刺さる台詞であった。
ザックの住んでいる家は、一つの大きな長細い平屋の建物に何人もの人間が入居している集合住宅であった。しかも、家賃に見合った安普請のために、大きな声を出せば隣に丸聞こえであった。
「また、隣のリズさんか」
ザックは苦笑を浮かべた。声の主は隣に住んでいる娼婦で、よく客と悶着を起こしていた。月に一回はこういう騒ぎがあった。
「ただで女抱きたきゃ、魔界にでも行って、その粗末なもんを出しっぱなしで歩いてろ!」
物が投げられる音がして、どたばたと床がきしみ、勢いよく扉が開く音がした。
「てめぇみたいなブサイク抱くぐらいなら、魔物娘の方が百倍マシだ! へっ! せっかくお情けかけてやろうってのにな!」
走って逃げていく音に男の捨て台詞が重なった。その滑稽さにザックは興奮した股間が萎えていくのを感じて、ありがたい反面、同じ男として情けなくもあった。
ザックはとりあえず顔でも洗おうとしたが、汲み置きの桶に水が入っていないのを思い出した。仕方ないと、桶を持って共用の廊下に出た。
廊下に出ると、さっきまで怒鳴っていた隣に住む女性が声を殺して泣いていた。正直なところ、開けた扉を閉めて部屋に戻りたかったが、そうするほど非常識ではなかった。
「あ、ごめんよ。みっともないところ、みせちまって」
彼女はザックに気付いて、気丈に涙を拭いて笑って見せた。
「いえ、俺は別に何も見てませんし」
「やさしいねぇ、ザックは」
隣の部屋の女性、リズはそこそこ美人だが、気の強いところがあり、最初に娼婦と聞いた時は向いていないのではとザックは思った。だが、きつく叱られたいという変わった性癖の男たちから需要があるようで、一定のお客はいるようであった。
「まったく、やになるね」
親魔物国家となり一番迷惑しているのは娼婦たちだった。なにしろ、種族によって差があるが、魔物たちは性に対してオープンな傾向が強い。しかも、誰もが美人ぞろいである。そんな彼女たちが娼婦という職業を選択肢から外すはずがなかった。
「はぁ……ここらがシオドキなのかねー」
リズはしみじみとザック
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