「あらあらあら、随分派手にやったわねぇ」
ベッドから下り、床に放られていた下着を履いた時、僕の背後から声が掛かった。
艶のある、女性にしては少し低めの声質。振り向くまでもない、カレルに助力して僕を堕落させた女教師だ。名前は確かフォーリオ。先ほど出会った時はもう少し硬質な雰囲気があったが、こちらが彼女の素なのだろう。
いや、先ほどと言っても、もうかなりの時間が経過していた。窓から差す光は陽光から月明かりに変わっている。こんな時間まで学園にいるのは初めてのことだ。
そういえば、と若干鈍くなった頭を巡らせる。カレルの家の迎えはどうしたのだったか。女性のみで構成された、騎士レベルの近衛兵たち。それに、僕の住む学生寮も門限が危ない。今、何時だろう……とぼんやり思ったところで、焦りはまるで湧いてこなかった。
もう、ここから発つのだから。
「ねえ、いったいどれくらいヤッたの?」
くすくすとした含み笑いで、フォーリオが尋ねる。
僕は返事をするのも億劫で、気だるい動きで服を纏っていく。問いへの答えは持ってないのだから仕方ないだろう。正確には、8回目あたりでカレルが気絶したあたりから、記憶が飛び飛びなのだ。彼女が気をやってすぐに僕も意識を失いかけたのだが、何故かすぐさま復活した彼女に無理やり覚醒させられた。そうして互いに意識を失わせたり、呼び戻したりしているうちに、ベッドが使い物にならなくなって、そのまま保健室内を動き回った。
机に彼女を押し付けた時は、完全に僕のペースだった。ガツガツと奥の奥を抉るたび、彼女は悲鳴のような嬌声をあげていたし、そのまま果てた時には茫然自失。けれど椅子に腰かけた僕に跨ってきたときは、完全に彼女のペースだった。暴れ馬を乗りこなすような身のこなしで、ろくな抵抗も出来ずに絞り出されたように思う。
そう言えば、何気なくロッカーを開けた時は驚いた。中にはみっちりとゲル状の何かが蠢いていて、そこにマリベル養護教諭の姿があったのだ。首から下をすっぽりと覆われた彼女は興奮に頬を赤らめながら退場していった。あの様子からして、僕らが保健室に行く前から仕込まれていたのだろう。
数十回もの行為に及んだにも関わらず身体は普段通り、むしろ好調ですらあったが、精神的に疲れていた。いくら魔に染まったとはいえ、刺激の連続は脳に負担を掛ける。
「雄の匂いがすっごい……くらくらしちゃうわ」
カツカツと足音を鳴らし、陶然とした声でつぶやくフォーリオ。もはや教師としての態度は微塵もなかった。
「あら、シーツびちゃびちゃじゃないの。床も所々水浸しだし……。彼女がおしっこ漏らすほどヤリ尽くしたのね、流石だわ」
ギシリとベッドに腰掛ける音がした。
フォーリオの言う通り、汗やら液やら何やらを吸い尽くしたシーツは水たまりを作るほどにタプタプだ。その、マトモな頭なら近づくのも躊躇われる場所に、濡れるのも厭わず腰かけるとは。
少し驚いて、思わず目を向ける。
フォーリオの格好は先ほどと同じだった。教員が纏うローブをすっぽりと被り、頭に学士帽をのせている。だが、先ほどまで性行為に耽溺していた僕には分かってしまう。
隠しようもない女の匂いが、彼女の全身から漂っていた。そしてその強大な魔力も、魔に通じた僕にはしっかりと感じられる。
なるほど。これほどの力なら学園に潜り込むのもわけないだろう。国で有数の魔法学園とはいえ、フォーリオほどの魔物が扱う隠ぺい術を見破れる使い手はいない。それこそ、同族でなければ。
「目的はなんだ」
思わず疑問を口に出してしまった。関わるには厄介な奴だと分かりきっているのに。
フォーリオは、仰向けに寝ているカレルの顔を優しく撫でながら流し目を送ってきた。その蠱惑的な瞳に思わず股間が反応する。まて、流石に自重しなさい。
「カレルから聞いてない? 私たちは、人間の幸福を願っているのよ」
からかうように目を細めた。
はぐらかされたような気もするが、いや、それが彼女たちの根源なのだろう。魔物そのものになった今、身体に巡るサキュバスの魔力がどういうものか、聞かされるまでもなく理解できた。
だが、僕が聞きたかったのはそっちの話ではない。
「カレルを焚き付けたのは何故だ。それだけの力があるなら、こんな回りくどい手を使わなくたって、」
僕が言い切る前に、フォーリオはすっと指を突きつけて遮った。分かってないわねと言わんばかりだが、そこに嘲りはない。
「頭でっかちに考え過ぎよ。まあ、らしいけどね。嫌いじゃないわ」
くふっと八重歯を見せて笑ったフォーリオに悪寒を感じ、思わず目を逸らした。
「私はシチュエーションを大事にしたいの」
意識の間隙を縫って、彼女は断言する。
「女が男を堕とすのか、男が女を堕とすのか。受けと攻めの噛み合わせ
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