「牧師様……私は罪を犯しました」
教会の聖堂に隔離されるように存在する懺悔室。
中は光が入らないように暗幕に囲まれており、懺悔をする者と聞き手の間に木の格子がはめ込まれ、徹底的にプライバシーが確保されている。
太陽が顔を覗かせたばかりの時刻。鶏と雀の合唱があちこちで響いている。
懺悔者は続ける。
「私は以前、愛の告白を断りました。幼馴染でした。小さな頃からいつも一緒に遊び、両親よりも一緒にいる時間が長いほどでした」
すぅと息を吸う。
「彼のことが好きでした。好きといっても、異性として好きというわけではなく、友人としてというか……仲間として、というか……」
「だから、彼の告白を受けたとき、頭が真っ白になってしまいました。ですから、とっさに断ってしまったのです」
「しかし、最近私は気付きました。実は、本当は、私は彼のことを異性として好いているということを……」
ため息をついた。
「気付いたきっかけは、彼の家に住み着くようになった女性の存在です」
「彼女が言うには、行き倒れていたところを、彼が助けてくれたということらしいのですが……」
「私は彼女に、嫉妬心を抱いてしまったのです。彼の家に住み、共に生活し……」
「私は、嫉妬という罪を犯してしまいました。それをここに懺悔します」
一息でしゃべりきり、ふぅと大きく息を吐いた。
「たしかに、その懺悔、お受けしました」
決まりの文句。しかし、懺悔者・サアラは驚いて顔を上げた。
この教会では、懺悔を聞くのは牧師であるという慣例がある。
しかし、今聞こえたのは、確かに女性の声。しかも、今まで教会で聞いたことのない声である。
懺悔するものされるもの、双方のプライバシーを守るために、わざわざ声色を変える人もいるにはいる。
しかし、それにしても教会に勤めている誰とも結びつかない声。
「神は言っています」
向こう側の声で、サアラの思考が途切れた。
「『迷わず進め、行けば分かるさ』……一度、その女性と幼馴染、そしてあなたの三人で話し合いをしてみてはいかがでしょうか」
「は、はあ……」
サアラは生返事を返した。
「一度の告白でダメならば、二度三度と押していけばいいのです。何だったら、色仕掛けでもかまいません。相手をその気にさせれば勝ちなのです」
「い、色っ!?」
思わず叫んでしまうサアラ。
教団の教義は「姦淫するべからず」である。それなのに、神の使いであるはずのシスターがそんなことを言うなんて。
しかし……と彼女は考えた。
――そうでもしないと、彼とは結ばれないのでは……
それほど彼女は切羽詰っていた。
日を追うごとにあの二人の仲はよくなっていると彼女は感じていた。
もしかしたら、すでに肉体関係にすらなっているかもしれない。
彼は教団の信者ではないので、彼女から誘われたら拒むことはできないであろう。
だから、一刻も早く行動に移さなければいけないという、強迫観念にかられたのだ。
「ありがとうございました」
懺悔室から出る彼女の瞳には、覚悟の炎が燃えていた。
「うふふ……」
懺悔室からサアラが出たのを確認すると、聞き手側から笑い声が漏れた。
「あー、あー、もう大丈夫かな?……がんばってね、サアラちゃん……」
格子に取り付けられた肘掛に両肘をつき、その上に顎を乗せ、くすくすと笑う彼女。
しばらくは先ほどまで聞こえていた声と同じであったが、何度か発声練習のような声を上げると、それよりも高い声へと変化していった。
室内が明るければ、彼女の腰の翼ははためき、尻尾が重力に逆らってゆらゆらと揺れていることが分かったであろう。
先ほどまでサアラの懺悔を聞き、アドバイスを与えていた彼女の正体。
元エンジェル、現在は堕落神の使い。サアラが嫉妬していた相手、メルである。
懺悔室でサアラが聞いていたのは、変声の魔法を用いたメルのものだったのである。聞き覚えがないのも無理はない。
「牧師さぁん、ちゃんと最後まで声を我慢できましたね。えらいえらい……そんな牧師さんにはご褒美っ」
そう言うと、メルは自らの下腹部の筋肉に力を入れ、腰を上下させた。
にゅこにゅこと、ねちっこい音が鳴る。
「あうっ、うぅっ……」
それと同時に、牧師はうめき声を上げ、ぶるぶると全身を震わせた。
懺悔室に響く、どぷっどぷっという何かが発射される音。
立ち後背位でつながっていたペニスから、精液が漏れる音である。
「うふ、ふ……なかなか美味しいですよ、牧師さんのざーめん……」
彼女が腰をくいっと持ち上げると、ぬぽっと間の抜けた音を立て、彼女の肉壷から力を失ったペニスが抜け出した。
「これで、牧師さんは立派なインキュバスでぇす……」
そう言って彼女は振り返り、牧師に抱きついた。
「頑張ってください
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