ぐーたら八月蝿

暑さで目を覚ました。
視界には、いつも通りの真っ白な天井。
背中には、いつも通りの体温でぬるくなった布団の感触。
右半身から伝わる、いつも通りの自分以外の体温。
日差しが容赦なく部屋の中に侵入し、生暖かい空気が俺の顔をなめるように流れる。
天井を見つめたまま枕元を探り、目覚まし時計を探す。
それっぽい感触の物体を掴み、目の前に持って来る。
時計の針は、午前六時を示していた。
くそう、バイトがない日に限って早起きだな、俺……
「あっつぅー」
思わず口から小言が漏れてしまった。
その音で目を覚ましたのか、右隣の彼女がもぞもぞと動く感触がした。
「ああ、すまん、起こしちゃったな」
彼女の方に視線を移し、謝る。
可愛い可愛い、俺の彼女。寝起きで機嫌が悪いのか、彼女は俺を睨み付けるようにして見つめてきた。
ぶぅん。
彼女は背中の羽をせわしなくはためかせ、ふわりと宙に浮かんだかと思うと、素早く俺の腹の上に乗っかってきた。
「お腹すいた」
彼女は不機嫌そうにそうつぶやくと、俺のTシャツを首までめくり上げ、汗ばんだ腹や胸をちろちろとなめ始めた。
「うぅん……姫子ぉ……よけいにべたべたになるから勘弁してくれよ……先に風呂に入らせてくれぇ……」
俺は彼女の名を呼んで拒否の意を示すが、「いやだ」の一言で却下された。
「れろ……ちゅぱ……ぬろぉ……」
彼女は無言で俺のべたついた体をなめ回していく。
だが、彼女の羽は、ぶぅんと音を立てていまだに激しく羽ばたいている。彼女が嬉しい時の反応である。
今日も、俺の汗は彼女好みで臭いのであろう。喜んでいいのやら。

昔々、魔物娘が大好きな一人の天才プログラマーがいた。
彼は様々な魔物娘関係のサイトを巡回し、自らも魔物娘を主人公にしたゲームを趣味で開発していた。
魔物娘の小説やゲーム、絵に触れるたびに、彼の中の「魔物娘に会いたい、触れたい」という欲求が高まっていった。
そして、彼にはそれを実現させるほどの力を持っていた。彼は黒魔術にも造詣が深かったのである。
彼はある日突然行方不明になった。
彼の部屋に残された、電源がついたままのパソコンのモニターには。
ペイントソフトで作成した魔方陣と、ブラウザに表示されたクロビネガのトップページ。
その日以来、世界中、特に日本で魔物娘が現れるようになったのである。
このような経緯を、ベルゼブブの姫子に体中をなめられている彼、瀬田彰(せだ しょう)は知らない。

「腕、上げて」
いまだ不機嫌そうな姫子に言われ、渋々両腕を持ち上げると、彼女は俺の脇の下に舌を這わせた。
体中をなめられるのは余り好きではないが、特にここをなめられるのは嫌である。何より恥ずかしい。
だが、彼女はここの汗が一番好きなのである。
時々「ふふっ」と笑いながら、猫がミルクをなめとるようにちろちろと舌を動かす。
恥ずかしいが、彼女の機嫌が良くなるならそれでいい。
脇の下をなめ尽くすと、両手の指を一本ずつ丹念にしゃぶり尽くし、最後に俺の唇にむしゃぶりついた。
「んっ……ちゅっ……じゅるぅ……」
舌を口内にねじ込ませ、舌と唾液が蹂躙する。
俺の汗の塩辛さが混ざっていて、あまり気持ちのいいものではないが、彼女のディープキスはとても上手であった。
あまりの気持ちよさに、むくむくとペニスが持ち上がるのを感じる。
そのふくらみが彼女の太ももを圧迫し、それに気づいた彼女は唇を離した。
「まだお腹空いてるから、今日は最後までしたいな」
彼女はそう言って、微笑んだ。心臓が高鳴る。彼女の幼い笑顔は、凶悪なくらい可愛らしい。
正直言って、この笑顔に抵抗することは、並大抵の男ではとてもできない。
しかし、今はとにかくべたついた体を綺麗さっぱり洗い流しておきたかった。
「ごめん……先に風呂に入っておきたい。それとも、風呂の中でヤるか?」
俺がそう言うと、初めは彼女は唇を尖らせて抗議をしたそうな表情になったが、すぐに諦めたかのようにこくりとうなずいた。
彼女は風呂嫌いなのである。

「ふぅー。やっぱり夏の水風呂は気持ちいいなぁ」
浴槽に入ると、俺の体にまとわりついていた彼女の唾液やら汗やらが、一気に剥がれ落ちるのを感じた。
姫子は眉間に皺を寄せながら、嫌々水風呂に入っている。
二人とも、全裸である。すでに何度も肌を合わせた仲なので、そういった遠慮は必要ない。
といっても、彼女は元々胸を隠す程度の大きさの布と、股間部分しか隠れていない紐パンしか着用していないので、脱いでも露出度は余り変わらないのだが。
俺がまず浴槽内に座り、その膝の上に彼女が乗っかっているという何とも狭苦しい体勢で風呂に入っている。
腰から生えている虫っぽい部分は、邪魔にならないように魔法で隠されているようだ。ビバご都合主義。
ぺちぺちと彼女の羽が、俺の腹を叩く。
彼女は浴
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