……話がついたのは、稲荷だけらしい。
そういう訳で、姉さんが連れてきたのが稲荷だった。
「ごめんね、お姉ちゃんの独断と偏見で話を付けたの、稲荷だけなの」
「マジですか」
「うん、大マジ。『ヴァンパイア』は気が強すぎてユウ君疲れちゃうだろうし、『烏天狗』は追いつかないと思うよ」
「そんなので……。まあ、良いけど」
稲荷なら、人間に擬態しやすいだろうし、いいか……。
「それでね、この子私たちの『妹』にしようと思うの。どうかしら」
妹……だと……? おいおい、妹にするとは聞いてないぞ。
「そんな顔しなくても……。それなら、言い訳が聞くかなと思って」
「あぁ……。それなら良いよ」
それに俺はうなづいた。
「それじゃ、名前を決めておいた方が便利だな」
「それもそうね。……最後にもう一度聞くけど、良いのよね?」
「ええ。貴方の弟さん、悪い人に見えませんから」と稲荷は答えた。
……困ったなァ。悪い人に見えないって……。色んな意味で。
「……恵玲奈でどうだろう」
「えれな……?」
"えれな"って名前は、これは某アイドル集団の一人から取ってきたけどな。
「そうだ。今日からお前は恵玲奈な」
「よろしくね、恵玲奈ちゃん」
「あ、はい!」
……というわけで、人間に擬態出来る稲荷の恵玲奈が俺の仲魔と相成った。
◇
「……なるほど。管理局から転属になったわけか」
「ええ。そういう訳で、仲魔も連れてきました」
「式堂恵玲奈です、よろしくお願いします」
恵玲奈の姿を見て、管轄部部長の蒼井さんは首をかしげた。
「えっ、これが稲荷? ……どう見ても人間です。本当にありがとうございました」
「いやいや、違いますよ。本当に稲荷です」
「はぁ……マジで? ……本当にそうだとしたら、一見じゃ分からないな。凄い擬態能力だ……」
恵玲奈の格好は普通の少女である。……このまま、街中を歩いていても、あまり気にされない。
「多分、性的に興奮したりすると稲荷の姿になると思いますが……」
「狐耳と尻尾が出るってことですか」
「そうなるかと……。その現場に立ち会っていないので何とも言えないというのが現状ですが……」
「まあ、その内分かるだろう。……それに、微量だけどエーテルも出ているみたいだしな。
……ともかく。恵玲奈ちゃんは普通の女の子に見えるから問題ないだろう、エーテルは出ていても普通の人には分からんよ」
……魔力が出ている、ね。管轄部の自室でソルブレイドに聞いてみた。
「ソルブレイド。お前にも魔力の放出を感知出来るのか?」
『感知出来ます。………エレナ・シキドウから若干の魔力の放出が有ります』
「……それは、魅了の方か?」
『はい。多分、マスターの方へ流そうとしているのではないかと』
「ふぅむ……。じわじわと来るのかね」
『私にはなんとも回答しかねますが、そうなるかと思います。……ただ』
「ただ?」
『気をつけてください。
エレナ・シキドウはイナリですから、いつかはマスターに性的な意味で襲いかかると思います』
「ありがとうな、ソルブレイド。気を使ってくれて」
「Not at all.」
恵玲奈から、魅了の方向の魔力放出とは。しかも、俺の方向に。
まあ……。直属魔導師になるぐらいの魔力があるから、若干の抵抗は出来ると思うが。
俺の管轄部としての今日の仕事は、書類作成等であった。
魔物娘管轄部は、人間に悪さをする魔物は出来る限り生け捕りにして、魔界へ返すか管理局へ送るということをしている。稀だが生け捕りにならずに殺してしまうこともあるらしい……。
そして魔物娘不殺がこの部の方針で、単独保護ということも行っている。
それを聞いたとき、直属魔導師の時とはエライ違いだな、と思った。
直属魔導師は、「管理局の子飼の兵士」とも言われ、管理局の剣となり盾ともなる。
それだけ聞くと常に死が伴うような場所をイメージしてしまいがちだが、盾になることは早々ない。
大体は鋭く尖った剣になっていて、局長の命令一つで魔物娘の捕獲や魔界への返還、教団との衝突など様々である。最も、管理局の場合はやむなく魔物娘を殺してしまうこともあるが。
「……はぁ。こんなものか」
書類を仕上げ、蒼井さんに持っていく。
その書類は受理され、俺は家路へ戻ることを許可された。
◇
「ただいまー」
「お帰りー、ユウ君」
玄関では姉さんが出迎えた。
「……あれ、母さんは?」
「仕事だって。何処の仕事なのかしゃべらなかったけど」
俺の母さんは年齢不詳と言っても良いぐらいの美人だ。多分、40代後半は固い。
何故年齢を知らないのかっていうのは、聞いても話してくれないからだ。
「そっか。まあ、親父のいない俺たちにとっては、これで食っているようなものだから。
無駄な詮索はしなく
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