サクセスストーリー

今日も俺の主夫生活が始まる。今まで碌に料理もしなかった俺がいつのまにかシェフ並の料理を作れるようになっている。料理だけじゃない。家事スキル全般が当たり前のようにこなせる。それもこれも全てアイツのおかげだ。もし俺があのまま生活していたら確実にこの世から居なかっただろう。本当にアイツには感謝している。これからもアイツの為だけに俺は生きていこう。、と・・・姫君が御目覚めだ。

「おはよぅ〜・・・、今日の朝ご飯は何〜〜〜?」

「アルラウネの蜜入りシークヮーサードリンクと黒コッペパン、パンには昨日グレープフルーツで作ったジャムがあるからそれを塗ってくれ。デザートは抹茶アイスにホルミルク印の練乳を掛けておくよ」

「いゃ〜〜〜ん♪うちの好み良くわかってるわ〜〜」

「その腹を見れば誰でもわかるよ。それに先日、うちの姫君は夜中にこっそり酸っぱい物を食べてたしなー」

「いややわ〜、こっそり覗き見するなんて。でも、うちとしては酸っぱいもんよりアンタの濃厚な精液さえあればいいんやけど?」

「朝からバカ言ってないで早く食べなさい。もうすぐ出勤時間だろう」

「ぶぅ〜〜・・・うちの旦那が朝からいけずやわ〜・・」

一人愚痴を零しながらもきゅもきゅとパンを頬張っていく姫君。それでも時々、嬉しそうに味わっているのを見てると作った甲斐があったもんだ。姫君は朝食を済ますと急ぎ顔を洗いスーツに着替え、チラリとこちらを振り返る。いってらっしゃいのキスは?と催促顔だ。もちろん俺は当然のように応える。

「あんまり無理するんじゃないぞ?」

「大丈夫や、うちは頑丈やから心配せんでもええよ。それより、うちが居らん間に他所の女連れ込んだら…どうなるかわかってるやろな?」

「・・・くっ、・・・はははははは!それは無いな。俺は姫君の丸い耳、ふさふさ尻尾、童顔、ちょっと嫉妬深い所、金にシビアなとこ全てを愛しているからな」

「うぅっ〜〜〜、そんなん出掛ける前に言われたら発情してまうやんか〜・・」

「ほらほら・・むくれてないで・・チュッ・・」

「んんっ・・。しゃーないなー。帰ったらおもいっきり可愛がってもらうから覚悟しときやー」

そしてうちのちょっと我侭な姫君は出勤する。妊娠六ヶ月だというのにパワフルだ。さて、姫君も出掛けましたし、いつもの日課を済ませてしまうか。俺は鼻歌混じりに朝食の食器を下げのんびり皿洗いをする。うん、今日も良い洗濯日和だ。





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俺は柏木 亮一郎。若いながらも一流とは言えないがそこそこの企業の社長だ。今日はクズな社員を見回る日、心の中で何度も『つまらん人間見ても金にならん』と愚痴を考えながら視察に回る。営業課、会計、外回りするフリして昼寝してるクズ共、名前ばかりの役職連中。右を見ても左を見てもクズクズクズ。こんなクズに俺は給料を支払う気なんて一切無い。だが社員として居る以上は最低限の保証は必要だ。くだらない、本当にくだらない。無能ばかり集まっても意味が無い。そんな愚痴を心の中で呟きながら社長室に戻る。

「大学在籍の頃にベンチャー企業として名を馳せたが・・・、いざ立ち上げたら無能ばかり集まりやがって・・。あんなクズ共はとっととクビにして新しい人材でも探すのがいいか」

亮一郎は一人呟いていたが、社長を快く思わない連中が盗聴器を仕掛け一言一句逃さず聞き耳を立てていた。

「あのクソ社長が・・!誰のおかげで椅子に座ってられると思ってやがんだ!この会社は大学サークル仲間で立ち上げた俺達の夢だったはずなのに・・いつのまにかアイツがのさばりやがって・・」

「全くだ。それにアイツにはあまり良くない噂が出てるし、おかげで営業が総スカンの日も出てきている」

「…悪い噂ってのは何だ?」

「ああ、俺達初めは10人居ただろ。それがいつのまにかアイツを含めて四人しか残っていない。噂だが、アイツが裏で辞めさせたみたいだ。きっといつかは俺達も何かしら理由を付けられ捨てられるだろう」

「それって・・まさか、アイツ!全ての権利を我が物にする為に社長になったのか!」

「そういうことだな・・。俺達が気付くのが遅すぎたんだ」

「くそったれ!!」

口汚い言葉を出した瞬間、デスクに拳を叩き付ける社員。我関せずに就職マガジンを見る社員。ほとんどの社員が既に社長を見限っていた。大学サークル時代の四人以外の社員はここに就職したものの社長の傲慢さ、素行の悪さなどに呆れまともに働こうとしない。一企業として成り立っているかすら怪しい。それでもかろうじて残れるのは残ったメンバー三人が必死に盛り立てているからだった。そしてまた社員一同
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