〜足元に気を付けましょう〜
嗚呼、今日も憂鬱な日だ。折角、朝一番にチャンスがあったのに何故何も言わずに去ってしまったんだ。本当に俺は馬鹿で臆病者だ。何気無く挨拶すりゃいいだけの事だったのに無言で出勤した俺って糞最低だ。いつもいつも今日こそは、と朝一発目から活き込んでる癖に、いざ目の前にしたら何も言えないチキン野郎。なっさけねぇ。
「ほんと・・・俺って情けねぇ」
この言葉、一体何度目だろう。たぶん50回以上は言ってるはず。思い出して数えるのも億劫になってきた。それもこれも俺がチキンだからしょうがない事なんだが。たった一言・・。
「なんで・・・好きだ、の一言が出ないんだろうなぁ」
・・・余計な事考えてたらもう定時超えてたのか。さっさと切り上げて帰ろう。お先に失礼しますよー。
「はぁ・・・、いつ思い出しても・・あの美乳はいいよなあ。短髪でボーイッシュだし、それにあの目・・切れ長で本当に・・」
別にアガリ症じゃないのに、あの目で見つめられるだけで一気に舞い上がっちまうよ。俺は思春期の高校生じゃないっての。でも、毎朝あの目で見つめられながら起こされたら最高だろうなあ。おはようのキスとかやってみたいし・・・、無理・・だよなあ。いつまで経っても告れない俺なんかじゃ釣り合わないだろうし。
「ただいまー・・、誰も居ないけどな」
これで『おかえりなさい』とかあの子に言われたら俺絶対に有頂天になってしまうな。ま、くだらない妄想してる暇あったら早く銭湯に行ってゆっくり浸かって体を休めよう。
「いらっしゃ〜い。あら?今日は浮かない顔してるわね?」
「いや、いつもこんなもんですよ」
顔に出てたのか、もうちょい気を引き締めるか。
「今更誤魔化しても遅いわよ」
「・・・さいですか」
ま、どうする事も出来んし風呂入って温まるか。ん・・、やっぱ寒いから脱ぐと鳥肌立っちまう。う〜〜・・さびぃさびぃ。
-カラララララ・・・・-
「はぁ〜、あったけぇ・・」
やっぱ銭湯は家の風呂と違って温まるな。さぁて、シャワー浴びて風呂に浸かるか、いや先にサウナに入って軽く汗を流そう。
「・・・ここのサウナってこんなに暑かったか・・?」
「それがよぉ〜、さっき誰かが我慢比べしてたみたいでな。全く傍迷惑な・・」
これぐらいなら我慢出来ないほどじゃないし、暫く入って汗を出しておこう。と、思ったけどこれやばいわ。10分も耐えれん。ムリムリ、出よう。
「・・・始めっから素直にシャワー浴びて風呂入れば良かった」
ま、いつも通りって訳か。本当に俺って変わらないよな、こんなんだからいつまで経っても挨拶すら出来ないんだ。俺はきっと一生チキンのままだろう。それでも毎朝顔を見れるだけでも幸せだからいいんだよ・・・。露天風呂入ってこよ・・・。
「・・・なんだかなぁ〜、最近の俺ってネガティブだ・・。せめて一言・・
音葉さん好きだ!!
と言えるだけの度胸があればなぁ・・・」
「ボクもキミの事が好きだよ♪」
「って、そうそう。こんな風に返事貰えたら最高なんだけどなー」
「もしもーし?聞いてるー?」
「はいはい、聞こえてますよー妄想の俺。・・・幻聴が聴こえるようじゃ重症だな・・、上がろう…」
「・・・・・もぅ!!鈍いんだから!」
あー、今の俺ってすっげーかっこわりぃ。誰も居なけりゃ堂々と言える癖に。はぁ・・・少しばかり暴走してるオツム冷してから帰るか。冷たいもんでも飲んでさっぱりしよう。
「はい、みかん水♪」
「お、サンキュー!ちょうど冷たいもんが欲しかった・・ん・・」
「ん?どうしたの?」
ま、待て・・・なんで此処に音葉さんが居るんだ。それに湯上がり感満載な僅かに濡れてる髪・・上気した頬。も・・もしかしてさっきのは幻聴じゃなくて・・。
「いやぁ〜、御風呂で告白されるなんて夢にも思わなかったよ♪まさか同じタイミングで露天風呂に入ってたなんて・・これもきっと運命なんだね
#9829;」
お・・落ち着け俺の心臓!バクバク言いたいのはわかるが今はKOOLになれ!チガウ、クールニナレ。
「それで〜・・・キミの返事はどうなのかなー?ボクはきっちり返事したのになー?」
返事・・返事なんてあったっけ・・。ぁ!?まさか・・、
-『ボクもキミの事が好きだよ♪』-
あれしか心当たり無い。や、やっべぇ・・、俺とんでもない事言っちまったよ。今更ながらに顔が真っ赤になってくる。ひょえっ!?つめたっ!!
「もぅ・・、顔真っ赤だよ。ほら・・冷してあげるからこっち向いて・・・・あっ!?」
「危ない!!」
濡れた床で足が滑ったのか。あれ?でもこれって役得じゃないのか?このままだと音葉さんの顔が俺の顔に近づいて・・近づいて・・。って、・・
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