シャンプー

 
 〜理想は身近に〜

あー、やべ。最近風呂入ってないなー。涼しくなってきたからまだいいけど、これが夏だったら汗臭くて誰も寄ってこないぞ。っつーか、おい。なんで逃げるんだよ。ぁ?臭いって?しょうがないだろ、ずっと徹夜だったんだからよ。

「・・・いくら涼しいって言っても、やっぱ三日目突入はやばいか」

腋下とか股間とか蒸れてきたら最悪だし、今日は絶対に風呂に入るぞ。徹夜は御断りだ。とか何とか言ってもどうせ今日も徹夜なんだろうなあ。まじ臭くなるっつうの。

はい、嫌な予感大当たりっと。今日も目出度く徹夜作業でしたっと。ぅ、やべぇ。まじで臭ってきたよ。このままじゃ、あんまり出逢いたくない魔物娘に襲われそうだよ。・・・消臭剤で誤魔化すか。余計な事するんじゃなかったわ、余計に臭くなった。くっさ・・・・。

「こりゃ本格的にやばいな。仕事終わった後に仮眠取って、その後に銭湯でも行ってくるか」

ちゃっちゃと仕事終わらせちまおう。早く終わればそれだけ寝れるし。



「ふわぁぁあ〜〜〜〜、あー、ねみぃ・・」

早く終わったのはいいけど、寝過ぎたな。既に夕方4時じゃねえか。さぁて、銭湯行くか。すっげえ臭いし。

ほらな、道往く人のほとんどが俺を避けてる。4日分の体臭と消臭剤のコンボとか最悪だっつうの。誰得だよ、全く。おっと、やっと着いたか。

「い、いらっしゃぁ〜ぃ・・」

笑顔が引き攣ってるよ、番台さん。あ、そうか。妖狐だから鼻がすごく利くんだな。ちょい悪い事しちまった。200円置いてさっさと入ろう。

「そういや、この籠に服放り込んだら帰りには綺麗になるんだよな・・。コインランドリーか何かあるんだろうか?」

ま、そういうのはどうでもいいか。綺麗にしてくれるんなら別に何でもいいし。

「とりあえず先に体洗う・・・か?って、しまったああああああ!?シャンプーも石鹸もタオルも何も持ってきてねぇ!!」

仕事帰りにそのまんま来てしまった。いきなり詰み状態かよ。・・・あ、番台さんから買えばいいんだ。

「すんませーん、風呂セット一式くださーい」

「は〜〜ぃ・・・」

ごめん、番台さん。二度も酷い目に遭わせてしまって。よし、これで綺麗さっぱりするぞ。


-カララララララ・・・・-


さ、洗うか。まずは体だな。念入りに洗わないと女に嫌われちまう。真っ先に首筋!そして肩!腕!次いで胸!腋!っと、まずはこれで流して。やっぱ泡立ち悪いなあ。さて、もう一回洗うか。・・・ん?


「ねぇねぇ、やっぱどんなタイプの男が好きなの?」

「う〜〜ん、やっぱり清潔な人かな〜、それといい匂いする人!」

「・・・・・・・・」

一発アウトだな。さっきまで最悪な臭い出してたし。もう一度念入りに洗おう・・・。はい!首筋!肩!腕!腋!・・・俺、何熱くなってんだ。普通に洗えばいいじゃん。上半身はなんとかマシになったし、次は下半身を重点的に。


「そういえばさー、あんたってあんまり男探ししないのねー?」
「だって好みの匂いの人って全然居ないんだもん」

「ふーん、ま、早く見つかるといいんだけど」


「・・・匂い・・・ねぇ」

一体どんな匂いが好みなんだか。俺が普段使ってる薬用シャンプーとか絶対駄目だろうし、ボディソープなんて量販品のやつだしな。しかも詰め替えの御徳用サイズのやつ。こんなの使ってりゃ、そりゃ彼女出来ないわ。やっぱ匂いも大事かなあ。清潔も大事だけど。

「聞いてると虚しくなってきた・・・さっさと洗おう」

・・・・なんとかくっせえ体臭消えてくれたか。次は頭だ。んん?変なシャンプーだな?ま、使えりゃなんでもいいし。って、こんな考えだから女にもてないんだよな。身嗜みは大切ってわけか。はぁ・・・、俺には無縁だ。綺麗さっぱりしたら帰りに居酒屋でも寄って悲しみに暮れるか。

「お、これ結構いい匂いするな。これなら女に・・・もてるわけねぇよ」

自分で言ってりゃ世話無い。早く洗って風呂浸かったら帰ろ・・・

「スンスン・・、なんだかいい匂いする」

「はぁ?そんな急に匂いがわかる訳ないでしょ」

「これ絶対にアタシが好きな匂いだわ♪」

「はぃはぃ、乙女心満載ねー」

「むぅ〜〜〜〜、その顔は信じてないわね。いいもん!彼氏出来ても友人とか紹介してやんないんだから!」

「・・・・ごめんなさい、紹介して欲しいです。お願いします」

う〜ん、女も女で厳しいんだなあ。でも、その割りにはこちらに恩恵は巡って来ないし。これも運か。はぁ、まだ泡立ち悪いな・・もう一回ぐらい洗っておくか。やっぱ、このシャンプーの匂いすごくいいな。帰りに一本買って家でも使おう。

「・・・来たわ!アタシの王子様の匂いがプンプンしてくるわ♪待っててね、王子様♪会ったら、まずは・・子作りプロポーズして・
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