マッサージチェア

〜疲れた体に癒しを〜

やっと仕事が終わったし、そろそろ帰るとするか。そう思いながら肩を少し回してみた。関節から酷く鈍い音が鳴る。ポキンやコキンと軽い音が鳴らずゴキリ、ゴリュ・・ゴリンといった嫌な音が体の中から聞こえてきた。こんなになるまで体を酷使してたんだろうか。筋肉も多少だが悲鳴を上げている。どうやらそろそろいつものとこでアレの世話になる時期かな。家に帰ったらいつもの用意をしてあそこに行くとするか。

「・・っと。久しぶりだから中身確認しておかないとな」

石鹸ある、シャンプー・リンスある、タオルOK、俺のお気に入りヘチマ君もある。これでガシガシすると気持ちいいんだよ。前に知り合いにしてやったら痛みで泣かれてしまったが。替えの下着も用意したし行くとすっか。

「久しぶりに金玉の湯に行くなあ・・、あの番台の女将さんまだ居るんかな?・・・と」

おっと、財布を忘れていた。流石に無銭入浴はダメだ。でも、あの番台さんだと後払いでも許してくれそうな気がするけど。さて家の鍵を厳重にロックしておかないとな。前に鍵を掛け忘れて出掛けてしまって、帰ってきたら何故か家の中でケサランパサランが飛び回っていたし。んじゃ、行くか。

「徒歩5分以内の銭湯ってのは魅力的だなー。もし10分以上だったら絶対に行ってないかもな」

少しだけ苦笑いしながら銭湯の暖簾をくぐる。

「あら、いらっしゃーい♪久しぶりじゃないの、今日もゆっくりしていくんでしょ?」

「ん〜・・・ああ、最後にいつものやっていくわー」

久しぶりに番台に座ってる女将さん見たな。全く変わりないようで少し安心。でも、この人・・いつになったら。

「・・・今、何か変な事考えてなかったかしら?」

「・・・気のせいじゃないですか?いつも通りなんだなー、としか思ってませんでしたし」

「・・・何か含みのある言葉ね」

「ん、それじゃ代金ここに置いていくから」

番台の妖狐さんの前に二百円置いて脱衣所に入る。本当にこの銭湯は安いなあ。今時二百円で銭湯に入れるなんて嬉しい限りだ。と、いうか経営大丈夫なんだろうか、ちょっとだけ心配になってきたぞ。でも・・俺が悪ガキの頃から既にこの銭湯はあったから大丈夫なんだろうなあ。

「お、じっちゃん久しぶり」

「ぉ〜・・・久しぶりじゃの、坊主」

久しぶりに馴染みのじっちゃんを見かけた。相変わらず元気そうでなにより。

「坊主が来たっちゅう事は〜・・・あれするんかのー」

「ああ、あれだよ。あれじゃないと解せないからなー」

軽く腕を回しゴキリゴキリと嫌な音を鳴らすとじっちゃんは笑っていた。いつもの事だな、と言った感じで。

「こりゃまあ・・派手な音が鳴っとるのぉ」

「ま、そういう事なんで・・」

じっちゃんと一緒に風呂へ入る。じっちゃんはお気に入りの電気風呂へと入っていくが俺は真っ先に水風呂直行だ。冷水で先に汗を流したい。掛け湯ならぬ掛け冷水だ。暑い日はこれに限る。桶で掬い、頭から一気に冷水をぶっかける。

「うひぃっ!・・・くうぅ〜〜・・・、つめてぇ」

この冷たさが最高に気持ちいい。よし、気も引き締まったし体洗うか。ゆっくり椅子に座り、ぬるめのシャワーを浴びる。あんまり急いで座るなよ?ツルンと滑ってケツをおもいっきり強打してもしらないぞ。すっげー青痣が出来る時があるかなら。シャンプーを手に取り、適量を押し出しゆっくりと髪に馴染ませながら掻く。

「ん〜〜、・・・ふふふーん・・・ん?」


ジャリジャリ・・・ギヂヂ・・・ジャリ・・・


「・・・・は?何の音だ・・??」

隣で同じように髪を洗っていたおっちゃんに声を掛ける。

「おっちゃん、今何か変な音しなかったか?」

「ああ・・確かに聞こえたなあ・・・。なんちゅうか・・・何かが軋むような?」

周りを見渡すが、それらしき物が見当たらない。きっと外で何か小さな工事でもしてるんだろう。あまり気にせず、また髪を洗う。隣のおっちゃんも興味無くしたのか同じように髪を洗っている。さて、・・次はお気に入りのヘチマ君の登場だ。これで擦るとちょっとばかしヒリヒリするけど気持ちいいんだよ。んぉ〜、これこれ。このちょっとばかし痛む感じがいい。別に俺はMじゃないけど、この感触だけは好きなんだ。誰だって持ってるだろ?この痛みが後で気持ち良くなるってやつ。あー、さっぱりした。そんじゃま、湯船に浸かって、と。


ジャリ・・ギチ・・・・キュィィーン・・ンンン


「またあの音か・・、なんか急に滑らかな音になったな?」

上手く機械が噛み合ったんだろうか。ま、それはそれでいいや。これで静かに風呂に浸かってられるし。

はぁ〜〜、結構長湯したしそろそろ出るか。

「じっちゃん先に出るわー」

「ぉ〜、・・・またのぉ」


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