今日もサバトは通常運転。魔女達は忙しなく動き、サバト主であるバフォメットは自室である書斎で書類整理。そんな中、廊下からパタパタと誰かが走ってくる足音が聞こえてくる。
バタン!!
「バフォ様〜、お仕事終わったよ〜」
「・・・・・・ミホや、何度も言うがノックぐらいはするもんじゃ」
「はぁ〜〜ぃ・・・」
ミホと呼ばれた魔女は少しばかり項垂れたが気を取り直しバフォメットに近況を報告する。
「先月のサバトでの出資報告書作成、新しい信者の名簿作成、次回のサバト会場の予約、今月の魔女達の活動報告書の作成終わりました〜」
「・・・・・・ミホ、お主の仕事ぶりは凄まじいのぉ〜」
「だ、か、ら・・ミナと遊びに行ってもい〜い?」
「もちろんじゃ、お主ほどの魔女がうちのサバトに居るのは嬉しい限りじゃのぉ〜、・・・他の魔女達も見習ってくれんかの・・・」
「それじゃバフォ様、いってくるねー」
「おお、気をつけて行くのじゃぞ」
ミホは急いで書斎を飛び出し、ミナと呼ばれた魔女の元へと駆け出す。パタパタと音が遠ざかるのと反対に今度は控え目にドアがノックされる。
「うむ、入れ」
「リーズ様〜、デザートの御用意が出来ましたよ〜。こちらでお召し上がりになりますか〜」
入ってきたのはホルスタウロス。サバトには似合わない種族だが、ここで魔女達やリーズと呼ばれたバフォメットの健康管理を担っている。
「そうじゃな、ここで食べるとしよう」
そう言われたホルスタウロスは一度廊下へと出て再度書斎に入る。手に巨大なチョコパフェを持って・・・。
「おおお、今日は好物のチョコパフェなのか。はよう近くに・・ジュルリ・・」
ホルスタウロスはゆっくりとした歩みで書斎の机に近づきリーズの前に静かに置く。リーズの顔が隠れるほどの大きさだった。
「むふふふ・・、旨そうじゃな。それはそうと、今日はどうしたのじゃ?本来なら厨房に居る時間じゃろう?」
「いえ〜、リーズ様に感謝のお言葉を〜」
ゆっくり会話するホルスタウロスに首を傾げ何の事かわからない、とアピールする。
「リーズ様のおかげで〜あの子達が元気になったから嬉しくて〜」
「お主はそのような事をまだ考えておったのか。やはり姿は変わろうとも母なのじゃな」
「はぃ〜、私はいつまでもあの子達の母ですし〜、サバトの子達もうちの子同然と思ってます〜」
リーズはホルスタウロスの言葉に耳を傾けながらパフェを食していく。ホルスタウロスはチラリと書斎の窓から外を見ると二人の魔女が手を取り合って外へ駆け出していくのが見えた。
「あやつらはもう自由なのじゃ、気にする必要はあるまい」
「元気になって・・本当に良かった・・」
ホルスタウロスの頬に一筋の涙が流れた。その涙は、これからの未来を祝福するかのように輝く。
これから紹介されるお話はミホとミナの過去、そしてこれからの未来。
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深夜1時。街灯も無く、民家もまばらな裏道を歩く女性が居た。女性の名は柳川 美穂(やながわ みほ)。片手にはハンドバックをしっかり握りしめ人気の無い裏道を突き進んでいく。歩く事15分ほど、美穂は肩を落とし立ち止まる。
「・・・・今日も現れなかった。・・いつか、・・・いつか絶対に殺してやる・・」
そう言うとハンドバックの中に隠していた包丁を取り出し深く考えこんだ。
「あれから2年・・。どうして・・私達がこんな目に・・」
それだけを言うと美穂は回れ右をして自宅へと戻る。自宅へ戻った美穂は静かに二階に上がり一番奥の部屋へと移動する。美穂の部屋は二階に上がってすぐの部屋だったがそこを通過し、奥の部屋のドアをゆっくりと開けた。部屋には美穂に良く似た女性が寝ていた。妹の美奈だった。美奈は規則正しい寝息で静かに寝ている。美穂は美奈の頭に軽く手を置き呟く。
「ごめんね・・、今日も見つけられなかったよ。でも、・・待っててね。いつか絶対に・・・」
美穂は音を立てないよう静かにドアを閉め自室に戻った。ベットへ身を投げ深い眠りに就きたかった美穂だが、思い出したかのように急いでハンドバックの中の包丁を取り出した。包丁を見つめ、これから実行するであろう計画を頭の中に練っていく。それは、・・・一人の男を殺す事。美穂の頭の中にはそれしかなかった。こんな危険な思想を持ち始めたキッカケは美奈が帰宅途中に強姦され、体のあちらこちらをナイフか何かで刺された挙句に先ほど歩いていた薄暗い裏道に放置されていたのが原因だった。それ以来、美穂は妹が襲われた時間になるとハンドバックに包丁を隠し事件のあった裏道を歩き、いつの日か犯人を刺し殺してやろう、と。妹の美奈はという
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