今日も説教から始まる一日だ。相変わらず両親は『早く婚約者を決めろ』だの『誰か良い人が居るんだな!?』と、飽きもせず口に出すもんだ。せいぜい頑張って叫んでくださいな。第一、両親が決めようとする相手のほとんどが政略的な相手ばかりじゃないか。そんな女と一緒になっても不幸な結末しか見えないし、例え結婚したとしても不仲になって離婚するか、どちらかが色欲に走って勝手に消えるだろう。そんな未来がわかってて誰が結婚すると思うんだ。
「壮一!お前は一体何が気に食わないんだ!」
「そうよ?貴方はもうすぐ田河グループを受け継ぐ身。それなのにどうして御見合い話を全部断わってしまうの?」
「それが嫌っだってんだよ!あいつらの顔見てるだけで気分悪いんだ!欲望まみれの顔した女と結婚なんてする気ねぇ!!」
俺こと田河壮一は田河グループ創始者である田河雅信の跡継ぎ。その身分ゆえに何度も御見合い話を持ち込まれては一悶着が起きる。そして後に続く御断りの返事。
「相手が欲望まみれだろうが何だろうが構わん!とりあえずは付き合え。話はそれからだ!」
親父とお袋が部屋を出て行く。俺は軽く溜息を吐き出し鬱陶しい御見合い用のスーツを脱ぎベッドへ投げ捨てる。他人に値段を付けるような女なんかと一緒に居たという事実だけで不愉快だ。確かに生きる為には金が必要なのはわかるし、それが生活の全てである事も当然理解している。だけど、俺は金の匂いに釣られただけの女なんかとは居たくねえ。奇麗事ばかり言ってるのはガキの証拠だとわかっている。それでも俺は待ち続けたい。俺の身分を気にせず心から愛してくれる女に出会える事を。
「・・・・わかってるよ・・、そんな都合のいい女なんて居ない事ぐらいは・・」
昔と違い、今は魔物娘が街中にいくらでも居るが、俺は何故か良縁に恵まれなかった。伴侶を見つけた魔物娘は俺の理想そのままに男に尽くすみたいだ。たまに暴走して街中で事に及ぶのはちょっとあれなんだが。時々、魔物娘と付き合ってる男を見かけるが、羨ましいぐらいの笑顔で腕を組んで歩いているのを見ていると俺もそんな相手が欲しいと切に願いたくなる。
「どうして俺には居ないんだろうなあ・・」
魔物娘は男を見つけたら即飛びつき一生尽くす、という噂だったはずなのに、俺には誰も飛びかかって来なかった。見かけても優しく挨拶をされる事はあったがただそれだけ。俺には魅力が無いんだろうかと思うとかなりショックだ。
「いい女ってのは・・探しても探しても見つからないもんだな」
たまに親父の目を盗んで街に繰り出してるが見事に全て空振り。このままだと親父の思惑通りになっちまう。
「クソッ!このままじゃ見合い相手と無理矢理結婚させられてしまう・・、どうすりゃいいんだ!」
自室の壁を思いっきりぶん殴る。殴る。殴る。殴る。ガヅンガヅンと大きな音が鳴ってしまったが誰も文句を言いに来ないところを考えると親父とお袋は出掛けたようだ。五月蝿くしてまた説教受けるのかと思ってたが誰も居なくて良かった。誰も居ないのなら、俺も着替えて出掛けよう。
「・・・誰も、居ないな・・?」
俺はこっそり自宅を抜けようとしたが、まさか玄関脇に親父の秘書である一乃瀬 正さんが立っているとは想像出来なかった。
「壮一様、どちらへお出掛けでしょうか?」
「・・・なんでここに正兄さんが居るんですか・・」
「社長より仰せ付かっておりませので・・・」
あのクソ親父め、俺が逃げる事わかってて正兄さん置いていきやがったな。
「どちらまでお出掛けでしょうか?」
「・・・適当だよ」
最悪だよチクショウ。俺が唯一頭が上がらない相手を見張りに付けやがって。正兄さんにはガキの頃からしょっちゅう世話になってたから逆らえないし。かと言って黙って行くと後がやばいしな。おっ、そうだ。
「正兄さんさ、そろそろ結婚とか考えた事無い?」
正兄さんは確か、まだ独身だったはずだ。巧い事言い包めればなんとかなるかも。
「いいえ、壮一様が良き伴侶を御見つけになるまでは・・」
この手は駄目か。それならいっその事巻き込んでやるしか。
「それならあれだよ、俺にぴったりな女を一緒に探して欲しいんだ!それなら正兄さんも納得出来て結婚出来るだろ?なっ?なっ?」
「・・・・」
駄目か。こうなったら正面突破するしかないのか。
「そぅ・・ですね。一理ありますね・・。確かに名も知らないような女性をいきなり連れてきて、結婚します、と言ったところで社長は許さないでしょうし・・」
こ、これは脈ありか。
「わかりました。私も壮一様の為に一肌脱ぎましょう。それで・・どちらにお出掛けで?」
「それはこれから適当に決めるとこだった」
「・・・適当なのですか」
「そりゃそうだろ?知ってる顔ばかり
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