またこの人か。全く、何度注意したら直してくれるんだ。本当に懲りない人だな。
「ちょっと痛いですよー?我慢してくださいねー」
「ふぁがが、ほへはひっはふぇ・・・」
はいはい、何言ってるかわかりませんので一気にしますね。まずは此処と。
「ひはぁぁぁーー、ふはぅひょへわ・・!!」
次は此処と・・・。
「んはぁぁあーーーー!!」
はいはい、わかりましたから大声を上げないでください。はい、終わりましたよ。最後に洗浄して・・はい、これでうがいしてくださいね。
「あふぁぁ〜〜・・、ぺっ・・。んぁー・・・痛かったわぁ・・」
「痛いと解ってるのでしたら・・これに懲りてお酒と甘い物は控えてください。と、言っても聞きそうにないですね」
「・・・・ふんっ!」
ま、いいですけど。患者が居ての私ですから。はい、次の方ーどうぞー。
「しぇんせー・・・、犬歯がむずむずします・・」
また貴女ですか・・・。どれどれ?あー・・、何か硬い物を噛んでしまったようですね。犬歯に僅かですが傷が・・。
「全く貴女ときたら・・どうせいつものように骨ごと肉を齧ったのでしょう?あれほど歯は大事にしなさいと言ったのに・・」
「ひゅみまひぇん・・しぇんしぇー・・」
「しょうがない人ですねー・・。それじゃそこに座って」
「ふぁぃ・・・」
ふーむ、ワーウルフの牙っていつ見てもすごいですねー。これはこれで治療のし甲斐がある。ふむふむ、・・・こうなってるのか。ん?これは何かな?
「ヒャゥン!!」
「何かありますね??」
あー、これか。骨の欠片が歯肉と歯の間に刺さってたんですか・・。これならすぐに治療出来ますね。
「はい、あーんしてください」
「んぁー・・」
菌が入らないように洗浄してからちょっとだけ麻酔を・・、さて抜きますか。
「はい、抜きますよー。・・・・はい、終わりましたー」
「ぉ?ぉ?・・・・むずむずしてたのが無くなったよ!ありがとう先生!」
「はいはい・・、次から骨ごと齧らないようにしてください」
はい次の方ー。と、…もう診察時間終了ですか。それじゃ、器具の洗浄をしてから帰りますか。そうだ、今度ワーウルフの歯を調べてみよう。あの歯はなかなか興味深い。いや、スフィンクスの患者の歯型を調べてみようか。・・・猫や犬と同じ治療でいいのか?いや、人?である以上は私達とあまり変わりない歯の質かもしれないし。うーむ、魔物娘達が現れてから私の探究心が膨らみ過ぎて爆発寸前だ。
「先生・・・、お願いですから、その手の動き止めてくれませんか?」
「おっ?これは失礼しました・・」
最近になってから魔物娘の歯型を想像する度に手がワキワキと不自然に動き出す。隣でインプラント歯の手入れをしていた三隅君が冷めた目線で私を見ている。
「そんな目で見ないでくださいよ・・。どうしても気になるんですよ・・、魔物娘達の歯は種族問わず皆同じなのか・・。それともやはり種族によって多少の違いがあるのか・・。三隅君は興味無いかね?」
「ないです、例え違っていても私はそれに倣って造るだけが御仕事なのですから」
はぁ〜、ドライな子だなあ。そんな性格してるからいつまでも彼氏が出来ないのです。
「・・・何か言いましたか?」
「いいえ、何も言ってません」
女の勘って怖いな。ほんのちょっと思っただけで勘ぐってくるんだから。ま、それはそれ。さっさと洗浄済ませて終わりますか。…はい、お疲れ様。
「ぁ〜〜・・・同じ姿勢ばかり続けてると肩が酷く凝ってくるな」
「……歳じゃないですか?先生」
こう見えても一応は20代だぞ、本当にこの子は可愛げが無い。ああ言えばこう言う。そんな性格してると本当に一生貰い手が来ないよ?最近は魔物娘の子のほうがすごく人気あるんだから。・・・さっきのワーウルフの子も結構可愛い子だったな。性格がちょっとアレなんだけど。
「・・・先生、何考えてるんですか」
「何も考えてませんが?」
さて、明日は休日。のんびり過ごせるといいんだけど。
「さ、今日はもう締めますから貴女も作業終了してください」
「・・・・」
はぁ〜、なんでこんな子を雇ってしまったんだろ。もっと他に出来る人が居ないんだろうか。最近の子は資格さえあれば何とでもなると思ってるんだろうけど、必要最低限のコミュニケーションも取れないんじゃ居ても居なくてもどっちでもいい存在だよ。どこかに良い人材居ないかなあ。とは言え、まだまだ若い自分にはそんなスキルの高い人が来てくれるわけでもないし。
「それでは、お疲れ様」
む、無反応ですか。なんていうか、ただ仕事をする為だけに来てるのですか、貴女は。もう怒りを通り越して呆れしか出ませんよ。本音言ってしまえば、本当は貴女なんか雇いたくなかったのに。面接
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