暑いですぅ・・・、まだ夏じゃないのにどうしてこんなに暑いのですかぁ〜。やっぱり向こうの世界でお留守番してたほうが良かったのかなぁ〜。うぅ〜〜っ・・・今頃バフォ様はクーラーの効いた書斎で好物のジャンボトルネードパフェ食べてるんだろうな〜・・・。私は暑い中、いつもの魔女服と魔女スタイルに欠かせないとんがり帽子を被ってお散歩・・・悔しくなんかないもん!でも・・・。
「お使いのお駄賃が100円って・・・あんまりですよぉ・・」
あぅぅ・・・、100円だとジュースも飲めないですう・・。こんなに暑いのにどうしろって言うんですか。
「ああーーーーーーっ!!もうっ!バフォ様のバカァーーーー!!・・・・あっ!?」
思いっきり手を振り上げちゃった弾みで100円玉が手からすっぽ抜けて道路を転がっていっちゃってる。
「やぁぁ〜〜〜〜ん!!私の100円が〜〜〜!!待ってぇ〜〜!!」
やぁぁぁん!いつも箒に乗ってばかりで運動してなかったから走るのすっごく辛いよぉ。はぁ・・はぁ・・、お、お願いだから・・・止まって・・。あっ・・。
「・・・ん?何か足に・・・、百円玉・・??」
「はぁ・・・はぁ・・・、や、やっと・・止まってくれましたぁ〜・・・」
なんだか古いお店の前でエプロンを着て立ってたお兄ちゃんの足に偶然当って止まってくれましたぁ・・。はぁ、ふぅ・・、ひゃ・・100円は・・大事・・・なのですぅ。
「ん、・・はい、御嬢ちゃん。もう落とさないようにね」
「はぁ・・・はぁ・・あ、・・ありがとうですぅ!!」
はふぅ〜、このお兄ちゃんからなんだかすっごく良い匂いがするですぅ。もしかして・・。
「あ、あのぅ〜、お兄ちゃんはもしかして独身ですか?」
あ、いけない。バフォ様から言われてたんだ。『相手が誰であろうと失礼のないようにな』って。ううっ・・、やっぱりお兄ちゃん・・変な目でこっち見てる。
「・・・・・・・」
「・・・・うう・・」
「・・・・・・・」
「・・・・あぅぅぅ・・」
「・・・・・・プッ!」
「!?」
帽子の鍔で顔を隠した私を見て一瞬だけ笑ったお兄ちゃん。なんで急に笑ったんだろう。
「君は魔女だよね。大丈夫、失礼な事だとは思ってないよ」
そういって私の帽子の鍔を指先でチョンと押してくる。はぅ、・・・すっごく恥ずかしいです・・。でもでも、安心したらすっごく喉が渇いてきちゃった。久しぶりに走ったからかな?・・・でも、100円しか持ってないから何も買えないし。
「はぅぅ〜〜・・・、走ったから喉渇いちゃったぁ〜・・」
お兄ちゃんの手前、ぐっと我慢したかったけどポロリと本音が出ちゃう。でもやっぱり現実は非情な訳で・・・。そしたらお兄ちゃんが外に置いてあった箱から何か取り出して持ってきてくれたの。
「ははっ、それじゃこれを飲みなよ・・・。はいっ」
そう言って手渡してきたのは水色のガラス瓶。すっごく冷たくて気持ちいいの。でも・・、これどうやって飲むのかな?
「・・・・?あ、もしかして開け方わからないのかな。ちょっと貸してみて」
私がお兄ちゃんに水色のガラス瓶を手渡すとなんだか小さな蓋を瓶の先端に乗せてポンと軽く叩いたのが見えたの。そしてちょっと遅れてシュワシュワと鳴り出すガラス瓶。
「はい、どうぞ。冷たくて美味しいよ」
「ありがとう、お兄ちゃん♪・・・んくっ・・・んく・・・ぷはっ♪何これ!すっごく美味しいの!」
「そっか、そりゃ良かった」
「・・・・あ、・・・・でも・・。私・・」
100円しか持ってなかったのを思いだしてどうしようかと悩んでたらお兄ちゃんが私の頭に手を置いてくしゃくしゃと雑に撫でてくれた。
「大方、お金の事を考えてたんだろ?別に気にするなよ」
優しい言葉を掛けてくれるけど・・だけどやっぱり私は。
「あああ、あのっ!・・・い、今・・これだけしか・・・持ってなくて・・」
持ってた100円玉をお兄ちゃんに差し出す。そしてお兄ちゃんはというと・・。
「う〜ん・・、まぁ・・別に良かったんだけど・・。はい、それじゃ御釣り50円ね」
手渡された50円を握り締めて呆然とする私。
「・・・・・・ぇ?」
こんなに冷たくて・・美味しくて・・それに、お兄ちゃんが優しくて・・。
「ぇ?ぇ?どうして50円なのですか!?」
「・・・?いや、だって・・ほら・・」
お兄ちゃんが指差す場所に張られた紙。
『ラムネ1本 50円』
す、すごく安いですぅ。こんなに甘くて冷たくて、・・・・それに、お兄ちゃんの優しさも美味しくて。
「あぅぅぅ・・・、お・・美味しいですぅ・・。このラムネも・・お兄ちゃんの優しさも・・・」
「そ、そっかぁ〜・・・ハハ・・。こりゃまいったな」
軽く頬を掻きながら照れるお兄ちゃん
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